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大日本印刷・北島社長が語る「DXを経営の柱に据えた理由」 データを活用して出版界全体の改革に取り組むデジタルを駆使(1/6 ページ)

» 2021年07月14日 09時32分 公開
[中西享, 今野大一ITmedia]

 「P&I」(Printing&Information、印刷と情報)の強みを掛け合わせることによって、新しい価値を提供してきた印刷業界大手の大日本印刷(DNP)。同社が、コロナ禍でDX(デジタルトランスフォーメーション)を経営の重要な柱に位置付け、社会課題の解決に取り組もうとしている。

 デジタル時代に入り書店が大幅に減り続ける中、書店や出版社と組んでデジタルとリアルを融合。新たな読書需要の掘り起こしにも注力して成果も出してきている。経済産業省と東京証券取引所が「DX銘柄2020」に選定したDNPの北島義斉社長に、今後の課題を聞いた。

北島義斉(きたじま・よしなり) 1987年に富士銀行(現みずほ銀行)に入行、95年にDNPに入社。2001年に取締役、05年に専務、18年から社長。東京都出身。56歳(撮影:山崎裕一)

EVの普及でバッテリーパウチが有望

――「DX銘柄2020」に選定された理由は何だと思いますか。

 P(印刷)とI(情報)というわが社の強みを生かし、モノづくりとITを組み合わせた事業展開によって新しい価値を提供することに注力してきた経緯があります。その際、得意先だけでなく社会の課題を解決するためのDXにも取り組んできたので、その方向性が評価されたのではないでしょうか。

――DXを経営面でどう位置付けられていますか。

 DNPはDXを、“未来のあたりまえ”となるような新たな価値を付加した製品・サービスを届けるための手段と位置付けています。そのために、社内の生産性の向上や基盤の革新とともに、新規ビジネスの創出と既存ビジネスの変革という両面で、DXを進めています。

 新規ビジネスとしては、ヘルスケア、教育などの分野でDXを応用し、当社のビジネスも拡大していけると見込んでいます。既存ビジネスでも、業務プロセスを代行するBPOなどの分野で、AIを使って省力化することや、紙の印刷においてもAIを使った校正、校閲によって効率的な価値を得意先に提供することができました。

――2024年度までの中期経営計画を発表しています。DNPの事業は、情報コミュニケーション、生活・産業、エレクトロニクスを3本柱にしていますが、今後はどの部門を伸ばそうと考えていますか。

 3部門については、いまは、売り上げは情報コミュニケーション部門に、そして利益はエレクトロニクス部門に多少偏っていますが、今後は3分の1ずつくらいの利益を出せる構成にしていきたいと思っています。情報コミュニケーション部門では、従来型の大量印刷は縮小しており、今後もこの傾向が続いていくと思います。

 生活・産業部門では、車やモバイル端末向けのリチウムイオン電池の外装材であるバッテリーパウチを提供していますが、脱炭素の流れの中で、その需要が拡大してきています。また環境に配慮したパッケージも伸びてきているので、生活・産業の構成比率が上がっていくと思います。エレクトロニクス部門では、コロナ禍による巣ごもり需要もあり、ディスプレイ部材や半導体関連製品が安定して需要があります。

――中でもEV(電気自動車)の普及により、バッテリーパウチは有望なようですが。

 EV向けバッテリーパウチの需要が伸びています。フィルムタイプのもので、金属缶製に比べて軽量で、かつ形状の自由度が高いという利点があります。このバッテリーパウチで当社は世界トップシェアです。中国や欧州のバッテリーメーカーに出していまして、3年後には年商1000億円を見込んでいます。これに備えて増産するため、出版用グラビア印刷の工場をバッテリーパウチ工場に転換しました。

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