11月8日には、ヤフーとグリーが包括的な業務提携を結び、緊急会見を行った。提携の狙いは、ヤフー 代表取締役社長 宮坂学氏の「Yahoo!で見つけてGREEで遊ぶ」という言葉に集約される。“スマホファースト”や“爆速”を掲げるヤフーは、さっそくスマートフォン版Yahoo! JapanのトップページにGREEへのリンクを掲載。Yahoo! Japan IDやYahoo!ウォレット、Yahoo!ポイントなども、グリーに提供される。また、2社でジョイントベンチャーを設立し、お互いの強みを生かしたソーシャルゲームを開発していく。
提携に関しては、「元々さまざまな交流がある中で、我々の方がからご提案させていただいた」(グリー 代表取締役社長 田中良和氏)。国内で3000万ユーザーを超えるグリーにも、Yahoo! Japanのユーザー層や認知度は魅力的に映ったようだ。ヤフーにとっては「これまでエンターテインメントの可能性をやり尽くせているのか、大きな疑問符があった」(宮坂氏)。同社は「自前にこだわることなく、日本で一番優れたサービス、ビジネスを提供しているところと一緒にやっていこう」(同氏)という方針を掲げ、「食べログ」や「クックパッド」など、他社のコンテンツも取り入れている。GREEとの提携もこの延長線上にあり、「よりゲームを作るのが得意な方とやっていくように、戦略を切り替えている」(同氏)。お互いのコンテンツを生かし、映像やキャラクタービジネスにも発展させていく構えだ。
ヤフーは、Mobageを持つDeNAとも提携して「Yahoo!モバゲー」をPC上で展開している。会見では、DeNAではなくグリーを選んだことに疑問の声も挙がった。こうした声に対して、宮坂氏は「エクスクルーシブ(排他的)ではない」ことを強調し、グリーはあくまで提携先の1つとした。宮坂氏のコメントを裏付けるように、会見翌日にはヤフーとDeNAが同様の提携を発表。一社独占状態だった提携関係も、わずか1日で終わってしまった。なお、ヤフーはソフトバンクグループだが、グリーはライバルであるKDDIとも提携関係にある。ここについては「今までと変化はない」(グリー幹部)とのことだ。
大手同士の提携とあって華々しく見えるが、課題も残る。現時点ではあくまでリンクをYahoo! Japanに設置しているだけで、具体的な成果がまだ見えない。提携によって、どのようなゲームが生まれるのかは未知数だ。これに加えて、「Yahoo!オークションについては一線を画す」という宮坂氏のコメントにも不安を感じた。ソーシャルゲームでは、ゲーム内の仮想通貨を実際の通貨で売買するリアルマネートレード(RMT)が問題視されているが、Yahoo!オークションもその舞台の1つになっている。両社が密接に連携していけば、今までより効果的な対策を講じられるのではないか。安心、安全についても“爆速”で検討してほしかった。
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