ドコモは、16日から1.5GHz帯および800MHz帯でのLTEサービスを開始する。16日時点で対応する地域は、新潟県新潟市、石川県金沢市、愛媛県松山市、同松前町、香川県高松市、同綾川町、高知県高知市、徳島県徳島市、同藍住町、沖縄県那覇市の一部。年度末の2013年3月までには、岩手県盛岡市、宮城県仙台市、福島県郡山市、富山県富山市、石川県小松市、福井県福井市でもサービスが開始される予定だ。端末は、同日発売となるGALAXY Note II SC-02Eが1.5GHz帯に、Xperia AX SO-01Eが1.5GHz帯と800MHz帯の両方に対応する。
いわゆる東名阪や九州などの大都市圏が除かれているのは、1.5GHz帯の15MHz幅を利用するための許認可が2014年まで受けられないため。ただし、1.5GHz帯の基地局を設置する計画はあり、上記地域以外でも5MHz幅、下り最大37.5Mbpsで運用していく。
この100Mbpsエリアを、11月14日に体験することができた。訪れたのは新潟県新潟市。16日に発売されるGALAXY Note IIとXperia AXの2機種を実際に使って、スループットや遅延などの数値を記録した。また、同じエリア内で2GHz帯のLTEにのみ対応しているGALAXY S III SC-06Dでも速度を測定している。こちらの結果も、あわせてお届けしたい。
最初に訪れたのは、新潟市郊外の基地局の近く。やや高い場所にあり電波を出しやすいためか、ドコモに加え、KDDIやソフトバンクも基地局を設置している。対応するLTEの周波数は2GHz、1.5GHz、800MHz。ここでは、端末単体と、USBテザリング、Wi-Fiテザリングで、それぞれ速度を3回ずつ計測した。スマートフォンで利用したアプリは「SPEEDTEST.NET」。結果は以下のとおりだ。
GALAXY Note II SC-02E | Xperia AX SO-01E | GALAXY S III SC-06D | |||||||
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下り | 上り | 遅延 | 下り | 上り | 遅延 | 下り | 上り | 遅延 | |
1回目 | 86.8Mbps | 20.4Mbps | 93ms | 78.1Mbps | 11.0Mbps | 100ms | 12.0Mbps | 3.6Mbps | 101ms |
2回目 | 101.2Mbps | 22.3Mbps | 83ms | 75.8Mbps | 11.0Mbps | 108ms | 17.7Mbps | 4.0Mbps | 133ms |
3回目 | 88.2Mbps | 23.1Mbps | 95ms | 84.6Mbps | 10.4Mbps | 93ms | 13.9Mbps | 4.7Mbps | 94ms |
平均 | 92.1Mbps | 21.9Mbps | 90.3ms | 79.5Mbps | 10.8Mbps | 100.3ms | 14.5Mbps | 4.1Mbps | 109ms |
スループットが低下してきた東京都内などの大都市圏に比べ、2GHz帯のみ対応のGALAXY S IIIでも十分なスループットを得られたが、やはり1.5GHz帯対応の2機種には及ばない。サービス開始前のため、基地局にぶら下がっている端末が1台のみで、基地局との距離も近いため理論値に近い結果となった。実際にサービスが始まっている2GHz帯を利用するGALAXY S IIIのスループットは下り最大37.5Mbpsの3分の1前後。16日以降に端末が増えてくると、GALAXY Note IIやXperia AXも速度が徐々に落ちる可能性はある。それでもモバイル環境で利用するなら十分。このエリア周辺で生活している人は、常に固定網につながっているような快適さを感じられるはずだ。
GALAXY Note IIの数値がXperia AXを上回っているのは、測定時の誤差に加え、端末の性能の違いもあるだろう。CPUなどの処理能力が高い方が速度も出やすく、クアッドコアで1.6GHzのGALAXY Note IIがやや有利な結果になった。なお、2回目の測定では下りが理論値を超えてしまったが、測定アプリの誤差の可能性がある。100Mbpsに限りなく近いスループットが出ていたと考えるのが自然だ。
USBテザリングでも、ほぼ同様のスループットが出ていた。PCで100Mバイトのファイルをダウンロードするのにかかった時間は約10秒。一方でWi-Fiテザリングの場合、Wi-Fiの通信速度がボトルネックになり、速度は40Mbps前後にとどまった。速度測定中に何度か速度がガクっと落ちることがあったが、これは1.5GHz帯から2GHz帯にハンドオーバーしたため。「帯域がより空いている方を優先的につかむような設定になっている」(ドコモの移動機開発部 第二無線技術開発担当 飯塚洋介氏)という。通信が途中で途切れることはなく、速度を測定していなければ気づかなかったかもしれないが、100Mbpsのエリアでも常に1.5GHzをつかむわけではない点には注意したい。
2カ所目は、より建物の多い住宅地だ。低層ビルの上に基地局が設置されているスポットで、「建物が多く、電波の反射もあって1カ所目より実利用環境に近い」(同氏)。こちらでの結果は、以下のようになった。
GALAXY Note II SC-02E | Xperia AX SO-01E | GALAXY S III SC-06D | |||||||
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下り | 上り | 遅延 | 下り | 上り | 遅延 | 下り | 上り | 遅延 | |
1回目 | 39.8Mbps | 10.9Mbps | 92ms | 44.3Mbps | 10.8Mbps | 91ms | 14.1Mbps | 3.5Mbps | 121ms |
2回目 | 44.9Mbps | 13.7Mbps | 90ms | 48.6Mbps | 9.6Mbps | 100ms | 10.7Mbps | 2.8Mbps | 123ms |
3回目 | 42.2Mbps | 13.0Mbps | 90ms | 54.2Mbps | 6.8Mbps | 102ms | 7.5Mbps | 2.8Mbps | 111ms |
平均 | 42.3Mpbs | 12.5Mbps | 90.7ms | 49.0Mbps | 9.1Mbps | 97ms | 10.8Mbps | 2.7Mbps | 118.3ms |
やはり基地局には近いが、電波の反射などがある分、数値は全体的に1カ所目より落ちている。とは言え、どちらのスループットもGALAXY S IIIの3倍前後。2GHz帯のみの端末でこれだけ出ていれば、1.5GHz帯もサービス開始後、大幅に速度が低下することはないだろう。
ドコモの基地局を基準に取材したためあくまで参考値として見てほしいが(しかも、2社はサービスイン後の状況で、ドコモよりも不利な環境と言える)、今回の取材では、同じ場所でKDDIやソフトバンクの速度も測定している。KDDIは「Optimus G LGL21」、ソフトバンクは「iPhone 5」を使った。理由はそれぞれの端末が、それぞれのキャリアの“メインバンド”に対応しているためだ。
Optimus G LGL21 | iPhone 5(ソフトバンク版) | |||||
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下り | 上り | 遅延 | 下り | 上り | 遅延 | |
1回目 | 11.1Mbps | 18.9Mbps | 92ms | 2.4Mbps | 2.6Mbps | 118ms |
2回目 | 11.5Mbps | 19.8Mbps | 99ms | 1.7Mbps | 3.0Mbps | 118ms |
3回目 | 10.5Mbps | 20.4Mbps | 89ms | 2.9Mbps | 2.2Mbps | 118ms |
平均 | 11.0Mbps | 19.7Mbps | 93.3ms | 2.3Mbps | 2.6Mbps | 118ms |
Optimus G LGL21 | iPhone 5(ソフトバンク版) | |||||
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下り | 上り | 遅延 | 下り | 上り | 遅延 | |
1回目 | 24.8Mbps | 18.3Mbps | 85ms | 10.4Mbps | 5.5Mbps | 117ms |
2回目 | 17.6Mbps | 19.6Mbps | 100ms | 9.5Mbps | 7.3Mbps | 117ms |
3回目 | 21.0Mbps | 19.3Mbps | 87ms | 10.7Mbps | 7.9Mbps | 115ms |
平均 | 21.1Mbps | 19.1Mbps | 90.7ms | 10.2Mbps | 6.9Mbps | 116.3ms |
表を見れば分かるように、Optimus Gは安定して速度が出ている。特に2カ所目の上りはサービスインする前のドコモの1.5GHz帯・15MHz幅よりスループットが高い。また、数値には現れない部分だが、これらの場所を移動する際にもっとも途切れずLTEの電波をつかんでいたのもKDDIだった。ソフトバンクのiPhone 5は基地局までの距離が近かったはずの1カ所目で、なぜか速度があまり出なかった。2カ所目では、ドコモの2GHz端末に近い結果が出ているものの、移動中は頻繁に3Gに切り替わった。別途検証を行った新潟駅ではHSDPAすらつかまず、100Kbps前後のスループットになってしまうなど、エリアによる差が激しい印象だ。もちろん、これは新潟駅から車で20〜40分の範囲というごく限られたスポットにおける、11月14日の結果にすぎない。エリアやスループットは環境や測定した日によっても変わるため、その点には十分ご留意いただきたい。
十分なスループットを得られるドコモの1.5GHz・15MHz幅のエリアだが、冒頭で述べたように、東名阪などの大都市圏ではサービスインが2014年以降になる。最近はLTEでもこうした人口密集地での速度低下が目立つが、本当に必要な場所でサービスインできないのはドコモにとってのジレンマと言えるだろう。一方で、上記の結果からも分かるように、帯域に余裕を持たせ全国で800MHz・10MHz幅のサービスを一気に始めたKDDIのLTEは、エリアも広くスループットも高い。人気の集中しているiPhone 5では800MHz帯を利用できないものの、ドコモにとっての大きな脅威になりそうだ。
ドコモがここに対抗するためには、周波数を上手くやりくりしながらエリアを展開していく必要がある。1.5GHz帯は「容量対策およびスループット向上を目的とし、トラフィックの高い都市部から展開していく」(ドコモ広報部)。実際、東名阪でも2012年度から5MHz幅の運用を開始する。また、3Gのトラフィックが減るのに従い、都市部の基地局も75Mbps化しやすくなる。ルーラルエリアでは、800MHz帯のLTEをどれだけ拡充できるかがポイントになりそうだ。こうした改善策が年度末にかけ、どの程度効果を発揮できるのかにも注目したい。
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