富士通のAndroidスマートフォン、「ARROWSシリーズ」といえば、まず思い浮かぶのはそのハードウェアスペックの高さだろう。いち早く高速通信サービス「Xi」に対応した端末を投入し、積極的にクアッドコアプロセッサーを採用するなど、その技術力の高さには定評がある。また指紋センサーなど携帯電話時代から受け継ぐ独自の機能を採用することで、個性を打ち出しているのも魅力だ。
しかし、いくらすごいハードウェアを盛り込んでも、それだけで使い勝手がよくなるわけではない。ソフトウェアのチューニングやブラッシュアップを通して初めて、すごいハードウェアが快適に使いこなせるようになる。富士通はこの“快適に使いこなせる”環境を実現するため、同社の技術の粋を集め、端末開発に生かしている。今回はその快適さを生み出す源を「ARROWS V F-04E」から探ってみたい。
カタログやWebサイトなどを見ると簡単に分かると思うが、ARROWSシリーズのスマートフォンは、いずれも「ヒューマンセントリックエンジン」という名の独自の機能を搭載している。これは、富士通がこれまでの製品開発で培ってきた、“使いやすさ”を実現するための機能と、端末に搭載された各種センサーの情報を有効利用し、独自のセンシング技術でユーザーの置かれている状況を判断して使い勝手をよくする技術などを総称したもの。2012年夏以降に発売されたARROWSの各モデルでは、この機能をLSI(チップ)化し、高機能かつ省電力なキーデバイスとして採用している。
ではヒューマンセントリックエンジンは具体的に何をやっているかというと、「聞きやすさ」「話しやすさ」「見やすさ」「操作のしやすさ」に関わる各種機能と、健康や生活を支援するための機能を提供しているのだ。
聞きやすさ、話しやすさという点では、雑踏の中で相手の声が明瞭に聞こえる「スーパーはっきりボイス3」や、歩行中であることなどを検知して、通話音量を自動的に調整してくれる「ぴったりボイス」、相手の声をゆっくり聞こえるようにする「ゆっくりボイス」といった機能を用意している。ARROWS V F-04Eで実際に使ってみると、特に通話時に不自由を感じていない人にも便利な機能だということが分かる。人混みの中で電話をすると、声が聞こえにくかったりすることはよくあるが、F-04Eで実際に通話をしてみて聞こえにくいと感じるシーンは少なかった。
またあらかじめ利用者の年齢を設定し、サンプル音を選択すると、耳年齢に応じた聞きやすい音質に自動補正してくれる「あわせるボイス2」というユニークな機能も持つ。
見やすさの面では、利用者の年齢に合わせた自動配色補正機能「あわせるビュー」が面白い。人間の目は加齢とともに色覚特性が変化するため、色の彩度(鮮やかさ)に対する感度が年齢によって異なるという。その差を補正し、識別しやすい配色を自動的に選んでくれる。例えばMapアプリで地図を表示している際に、国道の標識の色などを見やすい色に変えてくれる。試しに年齢を20歳と70歳に設定して地図を見てみたときの写真が以下の2つ。年齢が高い設定の方が、若干青みの強い画面になっている。
蛍光灯や太陽光など、場所によって変わる光の状態を検知することで、画面の色味を調整する「インテリカラー」も、ユーザーが普段意識することなく画面を見やすくする仕組みとして用意している。また、手に持って歩きながらスマートフォンでWebサイトなどを見る機会も多いが、その際に文字の大きさを読みやすいサイズに自動で変換する「あわせるズーム」といった機能も搭載する。この機能は、しばらく続く振動を検知するとすーっと画面をズームして文字を大きくしてくれ、確かに見やすい。
操作のしやすさへの取り組みとして、センサーを活用し意図しない動作を抑制する各種機能も充実させている。その1つが「持ってる間ON」。端末の傾きや揺れから、“今ユーザーが端末を手に持っているかどうか”を検知し、手に持っている場合はディスプレイを消灯させない。Webサイトなどを見ている際に、一定時間操作をしないと、一般的なスマートフォンなら所定の時間で画面が消えてしまうが、持ってる間ONを設定しておけば、手に持っている間は画面が消えない。じっくり記事を読んでいるときや地図を見ながら歩くときなどに便利だ。一方、机などの平らな場所にARROWS V F-04Eを置いたときは、スリープ指定した時間にならなくても約5秒で画面を消灯し、スリープ状態になる「水平時すぐにスリープ」がある。こちらはバッテリーの節約になるのがうれしい。
寝転んだり、端末を手に持ったまま歩いたりすると、ふとしたタイミングで画面の向きが自動的に横向きに切り替わってしまうことがよくあるが、なかなか元に戻らずイライラすることもある。そんなときは「戻ってシェイク」で対応できる。端末を2回以上振ると、すぐに元に戻せるのだ。このほかディスプレイの狭額縁化が進むにつれ顕在化してきた、“握る手”による誤操作にも対応。「うっかりタッチサポート」により、ARROWS V F-04Eを握る手の指が画面の端にかかっていても、タッチパネルが正しく動作する。
このほか、ヒューマンセントリックエンジンの重要な機能に、健康や生活のサポートがある。ARROWS V F-04Eでは加速度センサーとマイクを使って睡眠状態を検知し、就寝時間、起床時間、睡眠時間、寝返りの回数、いびきの音などが確認できる「健康生活日記 〜からだライフ〜」を用意した。この機能を使えば睡眠情報が一目で確認でき、毎日の睡眠状態からアドバイスをもらえたりする。歩数計や、各種センサーを活用したウォーキングをサポートする機能、脈拍が取れるパルスチェッカーなどを備えるほか、血圧計連携機能、体組成計連携機能なども用意している。
同じく加速度センサーとマイクを使って、眠りの状態を検知し、眠りが浅いタイミングでアラームを鳴らして快適に目覚めさせることができる「スッキリ目覚まし」なども便利だ。端末に内蔵した温度・湿度センサーを活用し、周囲の温度や湿度から、快適指数や熱中症予防のアドバイス、インフルエンザへの注意喚起などもしてくれる。
こうした細かい配慮と機能が組み合わせられ、ARROWS V F-04Eは、Androidスマートフォンの中でも非常に快適で使いやすくなっている。もともと富士通は、らくらくホンや携帯電話向けに、さまざまな“使いやすさ”“分かりやすさ”に配慮した技術や見守り機能を開発してきた実績がある。こうした技術をベースにAndroidスマートフォン上に実現された数々の機能は、富士通ならではの魅力と言えるだろう。
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