「Torque」の開発背景とは MWCで聞いた京セラの海外ビジネス(前編)Mobile World Congress 2013(2/2 ページ)

» 2013年03月14日 22時05分 公開
[房野麻子,ITmedia]
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―― mamorinoや簡単ケータイシリーズのお話がありましたが、日本では子供や高齢者にもケータイが普及しました。こうした新領域向け製品の海外展開もお考えでしょうか。

能原氏 あると思います。実際、mamorinoや年配向けの「MI-Look(ミルック)」は海外からの問い合わせも結構あります。今、展示してあるものは検討中のものですが、健康機器で集めたデータをMI-Look経由でサーバに送って、何かに活かせないかということも検討しています。

 米国を始めどの国でも社会保障費、医療費の負担増が大きな問題になっていますから、通信・モバイル分野で貢献できないかと思います。また、通信モジュールも今回展示してますが、この分野も今後世界中でチャンスがあると思っています。

 メディアのみなさんは、「スマートフォンのグローバル化で日本メーカーはどうするんだ」「ハイエンド市場で勝てるのか」といった方向で話をされますが、私たちは法人向けのDURAシリーズや車載モジュール、高齢者向け端末などに目を向けています。成長が見込めるマーケットでチャンスを狙っているからです。だからといって、メインストリームをやらないわけではありません。いつでもチャレンジしたいです。

―― 市場ごとに個々のニーズへ対応していくのは大変な気がしますが、そういうことが得意ということですか。

能原氏 そうですね。ニーズをがっちり捕まえて、きちんとマーケティングをして商品化する、という基本的な戦術でやっていきたいと思っています。国内でもそうですから、このやり方で1人でも多くの方のご要望に応えられる製品を作っていきたいと思っています。地味ですけど。

―― でもHONEY BEEのように爆発することもありますね。

能原氏 そうですね。ブランドが立った派手なビジネスに憧れがないことはないんですが、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」というのが京セラの経営理念ですので、まず我々が事業を継続していくこと、事業として成り立つためにどうしたらいいかということを第一に考えます。かつ、ユーザーにより満足していただく、というのが京セラのものづくりの考え方です。

プリペイド向けの普及価格モデルにも期待

―― 北米市場での取り組みをもう少し詳しく教えて下さい。

能原氏 京セラの特徴は「諦めないこと」で、米国のビジネスに関してはもう10年以上、しつこく地道にやっています。スマートフォンに関しては2010年からSANYOブランドの「Zio(ザイオ)」というモデルで米国のマーケットに参入しました。

photophoto 京セラが端末を供給している北米の事業者(写真=左)と主なラインアップ(写真=右)

 その後、粛々とやってきたわけですが、当時はまだスマートフォンは一部のハイエンドユーザのための商品でした。それこそiPhoneやGALAXY Sシリーズで占められる状態でしたが、昨年くらいからアメリカのマーケットで、いわゆるプリペイド事業者のスマートフォンのマーケットが非常に伸びてきました。

 米国の携帯電話事業者でよく耳にするのがポストペイの事業者です。AT&T、Verizon、Sprint Nextel、T-Mobile……これはポストペイの事業者です。それ以外に、例えばSprintさんですと、Boost MobileやVirgin Mobileなどのプリペイド用のブランドでも事業を展開されています。

―― プリペイドというとコストを重視するユーザー向けですね。

能原氏 そうですね。以前はコスト重視でフィーチャーフォンが中心でしたが、今はスマートフォンの波が来ています。事業者によっても違いますが、例えば月50ドルを支払えば、音声もデータも全部使える。

 ただしプリペイド方式では販売インセンティブが付きませんので、端末代が高くなる。通信料金を下げたいからプリペイド契約を選ぶユーザーに高価なハイエンドのスマートフォンを提案してもマッチしません。また本来のプリペイド向けビジネスは台数を売るスタイル。今はプリペイドブランドでもスマホの出荷が見込めますので、コストパフォーマンスが高い「Hydro」と「Rise」という2機種がピタッと収まったという形です。

 2011年に我々が2画面のEchoを出したときは、プリペイドのスマートフォンのマーケットはまだ萌芽していない状態で、(ポストペイ向けに)付加価値で差別化する必要がありました。これは他社も同じです。

―― Hydroは防水が評価されているとか。

能原氏 HydroはBoost Mobileという事業者向けに出していて、ある調査データによるとトップセールスになるなど非常に高い評価をいただきました。

photophotophoto 防水仕様の普及価格帯モデル「Hydro」
photophotophoto QWERTYキーを搭載した「Rise」
photophoto スライド式の割にスリムでコンパクトなボディ

 Riseは、QWERTYキー搭載モデルです。日本でQWERTYキー付きモデルは絶滅状態ですけれど(笑)、米国では一定のニーズがあります。キーボードを搭載すると厚みが出ますが、このモデルは非常に薄くそこも評価していただいています。Virgin Mobile向けに供給していまして、こちらもある調査ではトップセールスです。

―― プリペイド端末が中心だと、「Kyocera」は低価格なブランドというイメージが付いてしまいませんか?

能原氏 米国のマーケットはセグメントが明確になっています。ポストペイにiPhoneのようなブランドが立った存在がある一方、コストセーブしたい層はプリペイドを選ぶ。自分がこれがいいんだと思っていれば、そのブランド、そのモノに対していいとか悪いとかは少ないですね。その点は心配していません。


 京セラの海外向け携帯電話事業については、さらに踏み込んだ話を聞くことができた。後編では、MWC出展の狙いや日本の個性派端末を海外展開する可能性などについて紹介したい。

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