そしてもう1つは、NTTコミュニケーションズの「050 plus」だ。テキストメッセージを送受信するトーク機能やゲームサービスなどは用意されておらず、純粋にIP電話を利用するためのアプリと言えるだろう。固定ブロードバンド回線向けに提供されているIP電話サービスを、そのままスマートフォン向けに展開したものといえば分かりやすいだろうか。
それゆえサービスも、実用性を重視した内容になっている。サービス契約者同士の無料通話ができるのはもちろん、固定電話や携帯電話などへ安価に発信ができ、さらにサービス契約中は050から始まる電話番号が付与され、IP電話への着信も可能となっている。
ちなみに通話料は、固定電話向けが3分間8.4円、携帯電話向けが1分16.8円となっており、最近の携帯電話で一般的な料金プランの通話料(30秒で分21円)と比べるとかなりリーズナブルだ。また国際電話も、米国向け発信が1分9円、中国向けが1分29円と、こちらも通常の携帯電話でかけた場合と比べ大幅に安い。
先にも触れた通り、050plusはIP電話に特化したアプリであるため、テキストによるメッセージを送信できる機能は備えていない。だが050plusユーザー同士の通話中であれば、画像を送受信しあうことができる「フォトトーク」機能が利用でき、コミュニケーションや道案内などにも役立てられる。
なお050plusは、他のサービスと異なり利用するのに月額315円支払う必要があるため、純粋に“無料”の通話アプリ・サービスというものではない。だが積極的なCM展開による知名度の高さもあり、現時点で主要な通話アプリの1つとなっているのは間違いないだろう。
無料の通話・メッセージアプリのジャンルでは、当初はPCで実績のあるSkypeが本命と見られていた。だが後発のLINEがスマホならではの手軽さなどを武器として急速に支持層を拡大し、市場を席巻しているというのが現在の状況といえる。
今回取り上げた5本以外にも、スマートフォン向けのIP電話サービスでは「Vider」や「FUSION IP-Phone SMART」が知られている。またTwitterの相互フォロワー同士で音声通話が行える「OnSay」や、Facebookのユーザー間で通話できる「Reengo」など、SNSと連携する新サービスも増えてきた。SNS自体も通話サービスを提供し始めており、Facebookは米国向けのスマホ用アプリに音声通話機能を搭載している。
このように、この分野のアプリを巡っては国内外で多くの企業が火花を散らし競争を繰り広げる“戦国時代”の様相を呈している。真の勝者が現れて決着がつくのは、まだこれからという状況なのだ。後編は、無料をベースとする通話・メッセージアプリの普及でユーザーと業界の動向がどう変化したのか、その影響とこれからについて検証したい。
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