KDDIとジブリに聞く、auスマートパスで「ジブリの森」が提供された背景さまざまな“縁”で実現(2/2 ページ)

» 2013年05月17日 10時08分 公開
[佐野正弘,ITmedia]
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HTML5を活用、表現にも高いこだわり

 ジブリの森はスタジオジブリが提供する豊富なコンテンツを閲覧できるのが魅力だが、それだけにコンテンツ提供に向けたこだわりは、相当なものがあるようだ。川上氏も「ここまでのコンテンツを出すのは、ジブリにとってかなり大きな一歩。文字の一字一句やボタンの位置など、こんな所を?というものまで、それがジブリらしいかどうかをすごく議論した」と話しており、スタジオジブリにふさわしいコンテンツのあり方を徹底して追求して作られたようだ。

 実際、ジブリの森はiOS・Android双方の端末に対応しているだけでなく、画像などのコンテンツや表示のレイアウトも、スマートフォンとタブレット、それぞれの環境に合わせて整えられている。もちろん縦・横画面それぞれにレイアウトが用意されているので、画面の向きを変えても見やすさが維持される。

 また、ジブリの森はアプリではなくHTML5で提供されているが、それにも独自のこだわりがある。auスマートパスはiOSとAndroidの双方で提供されていることから、複数のプラットフォームに対応するためにHTML5を採用したように思えるが、理由はそれだけではないようだ。

 実際、川上氏は「(ジブリの森は)アプリで提供するのは難しかった」と話している。その理由の1つに、アプリではApp Storeの審査を通るタイミングが不明瞭であり、スケジュールのコントロールが難しいことを挙げている。その点HTML5のコンテンツであれば、制約を受けることなく速報的なコンテンツを作りやすいというメリットがある。

 もう1つの理由は、HTML5が技術的に進化しており、アプリとそん色ない表現力の高さを実現できることだ。実際、川上氏によると、ジブリの森で提供されているミニゲームはHTML5で作成されているとのことで、「多分アプリで作ったものと間違えてしまうのでは。起動のオーバーヘッドがない分、HTML5の方が快適に使える」と自信をのぞかせた。

ジブリ鈴木氏の“縁”によって実現したコンテンツ

photo KDDIの雨宮氏

 「アニメーションとコンピューターソフトの開発は似ているところがあり、(スタジオジブリに入って)すごく勉強になった」と川上氏は話す。そもそも、ドワンゴの代表取締役会長としてIT業界で仕事をしている川上氏がスタジオジブリに入社したのは、同社のプロデューサーである鈴木氏との“縁”によるものだったという。

 それと同様に、KDDIとの関係構築に至ったのも、KDDIが展覧会へ協賛をした際、鈴木氏と挨拶を交わした、KDDIの代表取締役執行役員専務である高橋誠氏との“縁”があったからこそだという。鈴木氏が結ぶ縁によって、今回のコンテンツ提供は実現したともいえる。

 そうした背景があるだけに、スタジオジブリがこれを機に、インターネットコンテンツを大々的に展開するわけではないとのこと。川上氏も「ジブリという会社は、あまりいろいろな会社と付き合うタイプの会社ではない。ネットやモバイルに関しては、KDDIに近しい関係があるからこそ始めた」と話しており、ジブリの森がインターネットコンテンツとして貴重な存在となるようだ。

 それだけにKDDI側も、ジブリの森にかける期待は非常に大きいようだ。雨宮氏も「ここまでのコンテンツがスタジオジブリから出たのは、本当にすごいこと。こだわりも含めて見てもらいたい」と、コンテンツを高く評価。「auスマートパスのキラーコンテンツの1つと考えており、ユーザーに紹介するための工夫をしていきたい」と語った。KDDI×ジブリの今後の展開に、ますます注目したい。

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