通信だけでなく、サービス面でもさまざまな技術の研究がなされている。その1つが「大規模画像認識システム」だ。これは、撮影した写真に当てはまる画像を探し出す、画像検索などを実現するためのシステム。KDDI研究所では、画像の中にある物体に似たものを探す“類似検索”ではなく、そのものを検索する“一致画像検索”の研究を進めている。だがこれを何十万といった単位の大きな規模で実現するには、データベースが増えすぎてしまう、元となるデータが増えることで類似する部分が多く出てきてしまい、検索結果の誤認識が増えてしまうなどの問題を抱えている。
そこで同社では、データベースを圧縮した状態でも約1秒で検索できる仕組みを開発したのに加え、検索する画像とデータベースの画像で、マッチする部分がデータベースに多く存在するものか、まれにしか存在しないものかに応じて信頼度の高低を付けることで誤認識を減らしたという。
こうした取り組みによって実現しているのが、「SATCH」によるARの取り組みだ。KDDIは現在、約40社の企業とSATCHを用いた実証実験を実施しており、お菓子のパッケージや旅館のパンフレットなどを認識させるのに、大規模画像認識システムと連携している。例えばカタログ通販大手のニッセンの事例では、13誌のカタログ、年間13000ページ分の画像に対応。専用のアプリを使ってカメラを欲しい商品のページにかざすことで、その商品のより詳しい情報が得られたり、購入できたりする仕組みを実現している。
サービス面でもう1つ紹介されたのが「ブラウザ同期技術」だ。これは、離れた人とWebブラウザの表示画面を共有し、相手のWebブラウザを操作する技術。特定のアプリケーションなどをインストールする必要なく、Webブラウザだけで利用できることから、OSやWebブラウザの種類を問わず利用できるのが大きな特徴だ。
これはWebサーバーに加え、専用の同期サーバを設けることで実現している。音声通話とWebブラウザの同期が同時にできるのに加え、ページやボタン単位での同期も可能だ。また、個人情報の画面だけを同期しないようにもでき、プライバシーを保護することもできる。すでに北海道旭川市などで、高齢者を対象とした買い物支援などの実証実験が行われているという。
その他にも、会場では音声合成ソフト「N2」のiOS版TTSライブラリを使用した「ぺらたま」や、ネット上のつぶやきをリアルタイムに解析する「Social Media Visualizer」、スマートフォンやタブレットのBluetooth機能を用いるなどして低コストで効率的な教育教育環境を実現できる「スマート教室」など、研究が進められている取り組みや成果の紹介などがなされていた。
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