「コンプガチャ騒動」とは何だったのか(2)小寺信良「ケータイの力学」

» 2013年06月24日 19時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 前回に引き続き、2012年5月に起きた、いわゆる“コンプガチャ騒動”の顛末と業界の動きを整理している。

 コンプガチャ騒動に始まった自主規制の動きとしては、プラットフォーム事業者6社による、通称「6社協議会」にて、2012年5月に「コンプリートガチャガイドライン」が策定されたところまでは前回述べた。さらにその1カ月後の2012年6月22日には、「ゲーム内表示に関するガイドライン」、「リアルマネートレード対策ガイドライン」が策定された。

 ゲーム内表示に関するガイドラインとは、有料ガチャのアイテム一覧や、アイテムの出現割合を表示するというもので、アイテムを得るのにだいたいいくらぐらいかかるのかという疑問に応えるものだ。

 リアルマネートレード(RMT)対策ガイドラインは、トレードが成立しにくいような仕掛け、例えばアイテムをトレードする相手が毎回ランダムに変わるといった仕組みの導入や、RMTではないかと思われるユーザーのアイテム交換状況の監視体制構築などを取り決めたものだ。

 これらのガイドラインは、プラットフォーム事業者が内製するゲームはもちろんのこと、ソーシャルゲームの提供会社(SAP)にも守ってもらい、守られていない場合はプラットフォーム側で公開しないという体勢になっている。

 さらにプラットフォーム6社だけでなく、より多くの事業関係者を巻き込んだ組織作りが2012年7月からスタートした。そして11月に、ソーシャルゲーム協会(Japan Social Game Association:JASGA)が発足した。

 組織の構成としては、6社協議会のプラットフォーム事業者を中心に、ソーシャルゲーム提供会社やコンピュータエンターテインメント協会(SESA)、日本オンラインゲーム協会(JOGA)、通信キャリアも参加している。例えばJOGAの参加企業は、JASGAから発信される情報もJOGA経由で受け取るという仕組みになっている。

JASGAの役割

 これまでソーシャルゲームで何らかの問題が生じた場合、ユーザーはプラットフォーム事業者か、ソーシャルゲーム提供会社に連絡する必要があった。プラットフォーム事業社はそこそこ大手なので、電話やフォームによる相談窓口も用意しているが、個別のゲーム提供会社はそういった窓口が用意されていないところも多く、結果的に消費者センターに苦情という形で持ち込まれる状況となっていた。

 しかし消費者センター側でもソーシャルゲームの専門部署が用意されているわけではなく、相談員の能力や権限にも限界があり、解決まで時間がかかったり、結局解決しなかったりといった事もあった。

 しかし現在はJASGAが相談窓口となり、傘下の事業者に対してダイレクトに問題解決を働きかけることができるようになっている。ただ現状の問題は、JASGAなどという組織ができたことやその役割が、ほとんどの利用者に知られていないという事である。こういう組織は、利用者からの積極的な情報提供がなければ存在意義がないので、ソーシャルゲームや業界に対する意見や苦情などがあったら、公式サイトの情報提供フォームからどんどん送付して欲しい。

 その一方で、JASGAの範囲外のソーシャルゲームも人気を集めるようになってきている。例えば最近ではパズドラこと「パズル&ドラゴンズ」が人気だが、このゲームはグリーやモバゲーのようなプラットフォーム事業者とは関係なく、直接iPhoneやAndroidにダウンロードして遊ぶ、オンラインゲームである。しかしプレイ中にはほかのユーザーのモンスターが助けてくれるソーシャルな要素もあり、区別が難しいところだ。

 これらのオンラインゲームは、各OSごとのアプリストアが審査したのち提供されるので、ある意味OS提供会社がプラットフォームであるとも言えるが、AppleやGoogleはJASGAに加入していない。そうなると、ユーザーの目から見れば同じソーシャルゲームでも、プラットフォームがあるのかないのかで、相談の持っていき場所が変わるという事になる。

 パズドラを提供するガンホー・オンライン・エンターテイメントは大手なので、自社のコールセンターもあり、JOGAの会員企業でもあるので連絡の取りようもあるが、スマートフォン向けアプリ制作者にはベンチャーや個人も多く、すべてのゲーム提供事業者が相談窓口を持っているわけではない。かといってAppleやGoogleに話を持ち込んだあげく、アプリが削除されるようなことになっては問題の解決にもならない。

 ソーシャルゲームは、元々多くのユーザーを抱えるSNS事業者が自社プラットフォーム内でゲームを提供したことで大きな広がりをみせたが、スマートフォンの普及によってオンラインゲームも多くのユーザーを集めることになった。だが単にゲームがしたいだけの子どもからすれば、プラットフォームのありなしは問題ではない。さらにその保護者ともなると、こういった関係はわけが分からないだろう。

 ユーザー保護の観点からすれば、各協会が相互に連携して、どこに話を持っていっても関係者に話が伝わるような体勢にしてくれることを期待したい。

小寺信良

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia Mobileでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。


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