トレンドマイクロは、Androidデバイス向けの「ウイルスバスター モバイル」や、PC、タブレット、スマートフォンとマルチデバイスユーザーを想定した「ウイルスバスター クラウド」といった、モバイルユーザー向けにもセキュリティアプリを提供している。
もともとは、PCユーザーを想定したセキュリティー対策からスタートしたトレンドマクロだが、この当時のPCユーザーと、最近増加している携帯電話やスマートフォンユーザーとでは、セキュリティーに対する知識や意識が大きく異なる。
いまから20年ほど前のPCユーザーは、ネットワークに接続する場合に、ローカルデータの保護や情報流出、リモートによる不正アクセスなどの危険が存在し、その対策の重要性を自ら調べて知っていた。
しかし、携帯電話やスマートフォンユーザーの多くは、ネットワークに接続するときのリスクを認識していないか、認識していても、手間のかかるセキュリティ関連の設定や複数使い分けなければならないパスワードの管理を大きな負担を考えて、十分に利用していない。「このようなユーザーが使うパスワードは、同じ文字や数字の繰り返しか、単純な順番になっているケースがほとんどだ」(Trendmicro CEO and Co-founder エヴァ・チェン氏)
さらに、個人が使うネットワーク接続機器が複数になっていることに加えて、自宅で使うデジタル機器でネットワーク(インターネット)に接続できる機器も今後急速に増加する可能性がある。このとき、接続機器の1台1台でネットワークにログインするパスワードを適切に設定して利用することは、経験の長いスキルの高いユーザーでも困難になるだろうとトレンドマイクロでは考えている。
現在、トレンドマイクロではこのような状況でもネットワークログインで個人認証を安全に行うパスワードの管理と利用が初心者でも確実にできるような方法とシステムを開発中だ。このシステムにおける個人認証は、指紋とバックアップパスワードの組み合わせで管理する。通常は指紋認証を利用し、バックアップパスワードは認証で使う指紋の登録管理と指紋認証が使えない場合のパスワードとして利用することになる。
デバイスで利用する認証情報は指紋とバックアップパスワードだけだが、ネットワークログインパスワードや、数多く利用するネットワークサービス、アプリごとに用意することなるパスワードは、トレンドマイクロがこのシステムのために用意するクラウドサーバで発行して入力する。ユーザーは、どんなネットワークサービスやアプリを利用するときにパスワード入力を求められても、指紋(もしくは、バックアップパスワード)の入力だけで、あとは、クラウド側でユーザーと利用するネットワークサービスで関連付けて管理しているパスワードをクラウド側で入力してくれる。
現在開発中のシステムで、実際にiPhone 5sから指紋認証だけで、Yahoo! JapanやDropboxへのログインができることを示してくれたほか、同じシステムに用意した、ユーザーによってアクセスできるWebページを制限するフィルタリング機能も示してくれた。クラウドベースで動作するので、クライアントデバイス側のOSに対する制限は少なく、AndroidでもiOSでもフルWindowsでも利用可能だ。
この、クラウドサーバを利用するパスワード管理機能の開発が完成した暁には、個人が自宅で使うすべてのネットワークデバイスを対象にセキュリティーを監理する統合パッケージの中で利用できるようにする計画だ。出荷時期は未定だが、それほど遠い先のことではないとチェン氏は語っている。
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