欧州で盛り上がる「Android&独自サービス」事情Googleのサービスはいらぬ!(1/2 ページ)

» 2014年04月30日 17時38分 公開
[末岡洋子ITmedia]

「Nokia X」で重要なのは「Androidのオープンソース版」ということ

 2月末にスペインのバルセロナで開催された「Mobile World Congress 2014」でNokiaが発表した「Nokia X」は、「Windows Phone」に注力するNokiaが投入した“Androidモデル”として、主に低価格帯のラインアップをカバーするラインアップとして投入した。

 MWCで展示していた3機種のNokia Xは、同社の“Windows Phone”Lumiaシリーズに似たマンマシンインタフェースを採用している。これがAndroidをベースとしたスマートフォンということを説明なしには気がつかないだろう。

 Galaxy S5など最新Androidスマートフォンのスペック表では、OSの項目に「Android 4.4」とあるのに対し、Nokia Xのスペック表では、「Operating system: Nokia X software platform」とある。Nokia X software platformはAndroidではあるが、“通常の”Androidスマートフォンで導入しているAndroidではない。Googleが「Android Open Source Project」(AOSP)として公開しているオープンソース技術を利用したプラットフォームだ。

 同じく、暗号化などセキュリティ技術ベンダーの米Silent Circleとスペイン新興スマートフォンメーカーGeeksphoneが「Blackphone」をMWC2014で発表している。プライバシー関連データの保護を重視したスマートフォンで、その外観からはAndroidと想像できないが、Androidをベースに作成した「PrivatOS」を導入している。こちらもAOSPを採用して開発した独自のプラットフォームだ。

 NokiaでLumiaスマートフォン以外の携帯電話事業を担当するモバイルフォン事業部でR&D担当シニアバイスプレジデントのディーク・ディダスカロー氏は「(Nokia Xも)Androidのエコシステムを利用できる」と述べる。Nokia Xのラインアップは価格帯的にはローエンドであるが、パワーユーザーもターゲットとしており、「Nokiaの技術とデザイン、SkypeやBingなどのMicrosoftのサービスを組み合わせ、さらにAndroidのアプリが利用できる」と“Nokiaが開発するAndroidデバイス”のメリットを説明する。

 この戦略はその後、9インチ以下の端末で「Windows Phone」「Windows」を無償化するというMicrosoftの大胆な変更に続く。Microsoftにとって重要なものはサービスとクラウドであり、プラットフォーム(MicrosoftにとってはOS)から収益を得るという同社が得意としてきたビジネスモデルからの緩やかな移行を示す1つの動きとみてよさそうだ。

 一方で、BlackphoneがPrivatOSを開発した理由は、通常のAndroidスマートフォンでは得られない暗号化などの技術を提供するためだ。もちろん、Androidのエコシステムを利用したいという思いはNokiaと同様だ。

ホーム画面のレイアウトがWindows Phoneを導入するLumiaシリーズと共通する「Nokia X」と(写真=左)、ユーザーインタフェースのデザインがAndroidとは大きく異なる「Blackphone」(写真=右)

Androidの“異性体”AOSP限定とGMS付属

 AndroidはGoogleが中心となって開発するモバイルOSだが、その内容は複雑だ。Androidはオープンソースプロジェクトに基づいて無償で公開しているといわれるが、オープンソースの部分はNokia XやBlackphoneが採用したAOSPの部分だけだ。AOSPに含まれているのは、LinuxカーネルのAndroidバージョン、Dalvik仮想マシン、基本的なユーザーインタフェースと、ごくベーシックなもので、GPL、および、Apache License 2というライセンスの下でコードを公開している。

 Googleが用意しているのはAOSPだけではない。AndroidスマートフォンはGoogleのサービスを利用できる点が大きな特徴だ。これにより、メーカーは自分たちで開発したりサードパーティと提携をすることなくAndroidのエコシステムの恩恵を受けられるが、Googleアプリやクラウドサービス(これはGoogle検索、Gmail、Google Mapなどが相当する)の利用にあたっては、ライセンスが必要だ。

 これらGoogleのクラウドサービス、連携のためのAPI、アプリストアGoogle Playなどを含むものとして、Googleは「Google Mobile Service」(GMS)を提供する。GMSは無料だが、GoogleがGMSに一定のハードウェア要件を設けているため、GMSを導入するデバイスは互換認定テストを通過する必要がある。このテストが有料で、Googleは詳細条件を公開していないが、1台あたり0.75ドルといわれている。Androidの商標はGoogleが保有しており、”Androidスマートフォン”とメーカーがうたうためには、GMSのライセンス取得などのステップをクリアする必要がある。

 このようにAndroidには“二段構え”といえるラインアップが存在することになる。Googleにとって、Androidは自社サービスを利用してもらうためのプラットフォームであることを考えると、妥当な仕組みといえる。

 一方で、「Nokia X Software Platform」や「PrivatOS」のように、GMSを利用せずAOSPのみで自分たちのプラットフォームを作った「フォーク」(元々のプロジェクトから分岐させたもの、の意味でAOSPをベースに独自OSとして開発したものを“フォーク”と呼ぶケースが多い)となる。Nokia Xシリーズでは、オンラインマップサービスとして「Nokia HERE」、メールはネイティブのクライアントのほか「Hotmail」「Yahoo! Mail」を利用する。アプリストアは「Yandex.Store」(Yandexについては後ほど紹介する)、「1Mobile Market」などサードパーティのAndroidアプリストアを利用する計画だ。

 最も早い段階でこのGMSやAndroidの商標は不要と大々的に訴求したのがAmazonだ。Amazonは、2011年秋に投入したタブレット「Kindle Fire」向けにAndroidフォークの「Fire OS」を開発した。Androidアプリストアとして「Amazon Appstore」を用意している。Androidで重要なバージョンアップについても、Androidとある程度歩調を合わせながら、Fire OSでバージョンを上げている。

Kindle Fire(写真=左 画像はKindle Fireシリーズの3代目「Kindle Fire HDX」)とともに、Lenovoが投入した初期のAndroidデバイス(写真=右 画像は「IdeaPad Tablet A1」)も“Googleサービスを使わないAndroid”として日本のユーザーにはなじみがあるかもしれない。アプリストアは、Lenovoが用意した独自のサービスで「Lenovo Shop」を利用していた

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