晴れ渡って、汗ばむ天気だった5月2日の東京。そう、今日は「iPhone 5 スリープ/スリープ解除ボタン交換プログラム」の受け付け開始日だ。事前に、筆者のiPhone 5 64Gバイト版が対象機か否かをアップルのWebページで確かめたところ、ばっちり当選(違う)。早速、Genius Barがある最寄りのアップルストア渋谷にWebから予約したのは4月30日だった。ひょっとしたら、おいらのiPhone 5が新品になるのかなぁ、いやならないだろなぁと、かすかな希望に胸を膨らませて井の頭線の急行に駆け込んで快晴の渋谷へと向かった。
とはいえ、今回のプログラムは2013年3月以前に製造されたiPhone 5が対象となるだけに該当機が多く、初日は相当な混雑が予想される。戦の前にまずは腹ごしらえとばかりに、「麺屋 大漁まこと」で人気の「伊勢海老そば」をかっこんでからアップルストア渋谷を訪れた。
アップルストア渋谷のGenius Barは2階にある。ご存じの通り、あまり広いとは言えない店内だが、すでに1階から人で埋まっている。恐る恐る1階奥の階段を上ったところ、そこには満員電車の車内に近い光景が広がっていた……。というのは少々大げさだが、人混みで思うように身動きが取れなかったのは事実だ。
軽いショックに打ちひしがれつつも店内を見渡したところ、青いシャツを着たスタッフが多数控えているのが目につく。まるで、iPhone発売当日のアップルストアのようだ。アップル側も、交換プログラム受け付け初日ということでこのようなシフトを敷いたのだろう。
ぼうぜんとしている筆者に声をかけてくれた心優しいスタッフに、しどろもどろで予約時間と名前を伝えたところ、いつも通り「壁際に立ってお待ちください」とのことで、陳列棚の前に身を移した。最も、壁際には筆者と同じようにサポートの順番を待つ多くの人々が巡礼者のように立ち尽くしている。かろうじて自分のスペースを確保し、回りの様子をうかがったところ、気のせいか表情が消えかかっている人が目立つ。いや、予約時間の10分前に来たし、まぁ30分も待てば順番が回ってくるだろうとのんきに構えていた筆者だが、無情にも時は過ぎていく。
「今はお客様がめちゃ多いんですよねぇ……」という先ほどのスタッフが去り際につぶやいた一言が筆者の脳裏に浮かんでは消える。そうこうしているうちに、スタッフに気色ばんで問い合わせる人が出始めた。かくいう筆者も満腹ではあるがすでにのどがカラカラで、足も棒になりつつある。iPhoneを見ると、予約時間からもう40分も過ぎている。50分は待った計算だ。
いや、この混雑ぶりだからやむを得ないよなと同情していたのもせつな、60分が経過したところでユナイテッドアローズと思われるショーツと風ぼうのスタッフ(ITmediaの本社はユナイテッドアローズの本部オフィス隣にある)に確認を願い出た。筆者の予想は(残念ながら)的中したようで、すぐに対応を始めてくれた。
ここからは、交換プログラムの流れをざっと見ていこう。あくまで筆者の場合であり、必ずしもこのようになるわけではないが、事前の心構えと準備に役立ててほしい。
01:今回のプログラムに該当するかiPhone 5のシリアル番号確認と代替機の要望確認
02:確認ツールをiPhone 5にインストール
03:カウンターに呼ばれる
04:前述のツールを走らせてスリープ/スリープ解除ボタンやホームボタンの動作を確認
05:iPhoneの外装を詳細にチェック
06:再びツールを走らせてハードウェアの動作確認
07:代替機を希望すると「iPhone 貸出契約書」の内容確認と署名
08:代替機のiPhone 5 16Gバイト版を準備、連絡先(メールアドレスや電話番号)をiPadに入力
09:修理完了連絡先の確認(メールか電話か)
10:「Genius Bar サービス見積書」と「iPhone 貸出契約書」、代替機を渡される
まず手順01では、スタッフが手持ちのiPadに(ユーザーのiPhone 5の)シリアル番号を入力して、交換プログラムに適合するか否かを確かめる。該当した場合は、データのバックアップをしているか、本体のリセットが済んでいるか(設定→一般→すべての設定をリセット)の確認がなされる。リセットがまだの場合はこの段階でリセット処理が行われる。そして、代替機の貸し出しを希望するかどうかも聞かれる。筆者の場合、着脱に精密ドライバーが必要な保護ケースを利用していたため、「本来はこれを外してから来店してほしいのですが…」と苦言を呈されたが、運良く取り外すことができたので事なきを得た。保護フィルムや保護ガラス、ステッカーなどを使っている場合も、事前にはがしておいたほうが無難だ。
上記が済むと、再び壁際に立って名前が呼ばれるのを待つ。名前が呼ばれると手順02に進み、机上にあるMacBookやMacBook AirからユーザーのiPhone 5に確認ツールをUSB経由でインストールする。導入が済むと、再度壁際に戻る形になるが、筆者は幸運にも待ち時間は少なかった。
手順03でようやくカウンターに着席でき、ホッとするのもつかの間、交換プロセスの説明と確認ツールの実行に移る。スタッフにより、スリープ/スリープ解除ボタンおよびホームボタンの動作確認がじっくりなされる。黒い割り箸のような専用工具を使って入念にチェックが行われる。
特に手順05の外装確認は、レンタカーの貸し出しのように入念にチェックが入る。この部分も前述の確認ツールに従って処理され、どの部分をどのように確かめるのか画面の指示に沿って進む。確認ツールはマルチランゲージ対応で、作業にムラが生じないよう工夫が施されているわけだ。
ユーザーのiPhone 5を預ける署名などはスタッフのiPad画面に指で入力する形だが、貸出機の契約書は紙が使われる。ここに署名と日付を書くことで貸出機(iPhone 5 16Gバイト版)の貸し出しが完了する。容量やカラーは選べず、筆者はスペースグレイが割り当てられた。注意点としては、修理完了の連絡がユーザーに来てから14日以内に貸出機を返却する必要があること(やむを得ない場合は事前承認により5日間の延長あり)、貸出機の紛失や破損時はユーザーが費用を負担する責任が生じる場合があることだ。
すべてのプロセスがiPadで完結しているわけではないが、一連の流れはスムーズで、ユーザーが慣れていれば短時間で済む。実際、今回は待ち時間を除けば30分弱で終わったのが救いだ。もし貸出機が必要なければ、アップルに電話連絡をして送られてくる送料支払済みの梱包箱にiPhone 5を入れて返送する「ピックアップ&デリバリー修理」を選んでもいい。
修理には4〜6日ほどかかる模様で、「現時点では修理が集中しているのでもっと時間がかかる可能性もあります」と気になることもスタッフから言われたが、日頃使う機器だけに問題は先送りしたくない。
何より筆者が今一番気になっているのは、これまで64Gバイトで運用していたのに16Gバイトでアプリやデータをやりくりできるのかということ、修理が終わった頃に仕事の山が続いて引き取りに行けるのかということ、そしてサービス見積書の「再現のステップ」で「検証時はスリープボタン反応します」と記載されていたことだ……。
ともあれ、賽(さい)は投げられたわけで、運は寝て待てというわけではないが、まずは目の前に迫った連休を有意義に過ごそうと思う。最後に、今回得た教訓を以下にまとめた。みなさんの参考になれば幸いだ。
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