NTTドコモが、スマートフォンやタブレットに装着されたSIMカード内の契約情報(電話番号や加入者情報)を、SIMを搭載しないタブレットやIoT(Internet of Things:モノのインターネット)機器などにタッチするだけで転送できるAndroid向けの「ポータブルSIMアプリ」を発表した。
スペイン・バルセロナで開催されているモバイル関連見本市「Mobile World Congress 2015」の同社ブースでは、ポータブルSIM技術のデモンストレーションや活用事例などを披露。SIMを差し替えることなく、複数の端末で1つの携帯電話番号やデータ回線契約を共有できる可能性を提案していた。
ドコモは2014年に、スマホやタブレットのSIMを抜き差しすることなく、1つの電話番号を複数の端末で切り替えて使う小型端末「ポータブルSIM」を発表している。今回同社が開発した技術では、Androidアプリと米Qualcommが開発したSIMを制御する組み込みソフトウェアを組み合わせることで、ポータブルSIM端末を使うことなく、対応端末同士でダイレクトに契約情報を切り替えられるようになった。
展示ブースではカーナビでの活用事例が紹介された。スマホをカーナビにタッチするとBluetooth経由でスマホの契約者情報がカーナビに転送され、目的地情報の共有、検索履歴の表示、お気に入り楽曲の再生、通話などがそれぞれ可能になる。カーナビのほか、テレビなど家族間で1つのデバイスを共有する場合に、各人のお気に入り番組や視聴履歴などをワンタッチで引き継げるので、今後SIMを入れられないものも含めてさまざまな機器との連携が考えられる。
ドコモの担当者は「1つのタブレットを家族間で使う場合や、1人で複数の端末を使うなど、マルチデバイス利用が増えており、ポータブルSIMにはさまざまなユースケースが考えられる。最近はSIMが入るLTE対応のデジタルカメラなどもあるが、わざわざSIMを契約してまで使いたい人がどれだけいるか分からない。そういったカジュアルユーザーでもタッチ操作で簡単にSIM情報を送れればストレスなく利用できる」と説明する。
また、会場ではICカードリーダーにスマホをかざすとドアが開閉する「Intelligent Locker」もデモしていた。スマホをかざすと個人情報が認識され、ロッカーの画面にドアを開けたり、ほかの端末にカギ情報を送ったりする操作ボタンが表示される。
実際に都内のロッカーでのトライアルが始まっており、今後は法人中心に導入を進めていくという。「個人と法人どちらのユースケースも考えられるが、まずは法人での利用が進んでいきそうだ」とドコモ担当者は語った。
このようにSIMカード内の契約者情報をほかの端末に転送する仕組みは、世界的に見てドコモのみが取り組んでいることなのだろうか?
担当者は「実は来場者の1人がポータブルSIMのようなデバイスを持ってきて、『うちにも似たような技術があるんだ』と言われました」とのこと。どうやら海外でも、同様の転送技術を展開する企業があるようだ。
スマホやタブレットの複数台持ちはもちろん、身の回りのモノがネットにつながるIoT時代が間近に迫っている。ロッカー以外の公共端末での利用や、ビジネスとプライベートで電話番号を使い分けるなど、アイデア次第で可能性が広がるポータブルSIM技術の今後に注目が集まる。
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