iOSのアクセシビリティを知ろう! 活用アプリ後編

» 2015年07月23日 14時00分 公開
[杉本純ITmedia]

 iOSに用意されているアクセシビリティ機能を生かすために、さまざまな障がい者向けアプリが存在します。前回は視覚障がい者向けのアプリを紹介しまたが、今回は聴覚障がい者向けのアプリを取り上げます。

聴覚障がい者向け

複数デバイスで会議ができる「UDトーク」

photo 「UDトーク」

 「UDトーク」は、音声認識や手書き入力を駆使し、「会議のユニバーサルデザイン化」を支援するアプリです。

 サービスはマルチプラットフォーム対応で、PC/Mac/iOS/Android版のアプリが提供されています。音声認識を使って登壇者や講師のスピーチ内容を字幕化しプロジェクタに表示するといった使い方もできますが、最大の特徴は複数台のデバイスを接続して使用できる点。健聴者(耳が聞こえる人のこと)と聴覚障がい者が同席しているミーティングを想像してください。アプリは無料でダウンロードできますが、「1人で使う」機能は120円(税込み、以下同)のオプションが、またPCとの連携は3000円のオプションとなっています。

 健聴者が自身のiPhone/Androidに向かって発言すると、音声認識でテキスト化された内容が参加者のデバイスにリアルタイムで送信されます。聴覚障がい者は、手書き、またはキーボードを使った文字入力で発言しますが、これも各自のデバイスに送信されます。音声認識は誤認識する場合もありますので、書記役の人がPCを使い、認識結果をその場で修正する事ができるようになっています。

photo 音声認識、キーボード入力、手書き入力の3つをサポートする
photo Mac版の画面。書記役の人はPCを使い誤認識を修正できる

 発言の履歴はメールで送信できますので、ユニバーサル会議の実現のみならず、議事録の作成を容易にするという目的でも有用なアプリです。ただその際、手書きの発言は消えてしまため、テキストファイルへの出力といった改善をお願いしたいところです。

手書きと音声でコミュニケーションする「SpeechCanvas」

photo 「SpeechCanvas」

 「SpeechCanvas」(無料)も音声認識を活用したアプリですが、より1対1のコミュニケーションに主眼を置いたもの。画面を上下に分け、聴覚障がい者は手書き入力、健聴者は音声入力で意思疎通を図ります。最新の機種(iPad mini Retina、iPad Air、iPhone 6/6 plus以降)ではインターネットに接続されていない状態でも音声認識できるのが特徴です。

photo 電波のない状態でも音声認識してくれるのは安心

角度を変えて手話を学べる「ゲームで学べる手話辞典」

photo

 「ゲームで学べる手話辞典」(無料)は聴覚障がい者のみならず、手話に興味のある人全てに役立つアプリです。その名の通り手話辞典です。実写ではなくCGを使用していて、再生速度を遅めたり、カメラを移動して自由な角度から確認することができます。

photophoto 数字の2と4を回すしぐさで「コンビニ」を現わす(写真=左)。キャラクターの動きを見て単語を当てるゲームモードも(写真=右)

 単語を学ぶだけでなくゲームモードも搭載しており、RPG感覚で楽しみながら学習することができます。設定編でご紹介した「視覚障がい者向け使い方教室」と同じくソフトバンク提供のアプリで、このような利益度外視で社会に必要なことをする姿勢は素晴らしいと思います。

他にも数多くの支援アプリが

 今回ご紹介したのは数ある支援アプリの極々一部に過ぎません。もっと知りたい方は、東京都障害者IT地域支援センターが支援アプリのリストを更新されいますので、チェックしてみてください。

 ICT(情報通信技術)の発展により私たちは膨大な情報を容易に得られるようになりましたが、それは同時に情報端末活用能力の差が格差(デジタルディバイド)に繋がる時代であることを意味します。アクセシビリティはその格差を埋める試みです。

 今後は超高齢化社会の到来が問題視されていますが、誰もがいずれ高齢者になり、身体能力の衰えを実感するでしょう。アクセシビリティは決して他人事ではありません。技術の進歩で格差を広げるのか、狭めるのか。その選択は私たちの手中にあると思うのです。

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