日常生活の支出すべてに「Tポイント」を――Tポイント・ジャパンが推進する“ドミナント”戦略Tポイント・ジャパン 北村氏に聞く(前編)(2/2 ページ)

» 2015年09月14日 16時24分 公開
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ポイントが“隠れ負債”にならないよう処理している

―― ユーザー視点で、家計の中での占有率の高さでポイントがたまりやすいということはわかったのですが、加盟店側の視点で、ほかの汎用ポイントと較べて、Tポイントの加盟店になるメリットは何でしょうか。会員数の規模という話は先ほどありましたが。

北村氏 自社ポイントか共通ポイントかの視点で申し上げますと、自社ポイントでやっていらっしゃると、既存顧客しかないんですよね。

―― 囲い込みですよね。

北村氏 そうです。まだ見ぬお客さんは会員になりようがありません。年間5477万人のアクティブユーザーがいらっしゃいますが、参加いただいているアライアンスさんの既存顧客分の構図があるわけです。別に個人情報というわけでなく、未利用者を特定できて、その人たちにリコメンドできるということが、自社ポイントとの最大の違いです。

 もう1つ。ポイント引当金をご存知だと思いますが、表面上に出てこないので、よく“隠れ負債”と表現します。例としてふさわしくないかもしれませんが、JALさんが破綻したときに、マイルを全廃するかという議論がありました。事業資金とは別に、ちゃんと現金を積んでいるわけじゃないんですね。多くの自社ポイント導入先でもそうだと思います。

―― 家電量販店がポイントを全部使われたらつぶれるという議論と同じですね。

北村氏 そうです。一方、我々の場合はオフバランスができまして、毎月お付けいただくポイントの原資に関しては、月次で損金処理、PL(損益計算書)では経費として確定してもらっているんです。ですから一切隠れ負債にならないんです。お客様にポイントを付与した時点でPLは確定するんです。ここからが自社ポイントでなかなかご理解いただけないところなんですが、バンクにためてありまして、そこにキャッシュと一緒にポイントが一致するように積んであります。明日、5400万人がポイントを1ポイント残らず使いに来たとしても、ポイントの残高ゼロ、積んであったキャッシュもゼロになるだけでビクともしないんです。

――  それは大きいですね。業法の規定があるプリペイドカードと違って、ポイントはそこの規定がないので、隠れ負債問題はずっといわれていますね。

北村氏 金融庁管轄の電子マネーでも、半分供託者がいるんですよ。うちは全額、供託はしていませんが、保全してあります。免許制度ではないポイントで、多くの企業に参加していただくことの公明正大感を大事にしています。ご参加いただくための証として、その制度を取り入れたんです。この点は財務的な観点で、参画企業の大きなメリットの1つだと思います。

―― 財務がシンプルで透明性があり、問題を引きずらないというメリットは大きいですね。その話はユーザー視点でも、ちゃんと保全されていることで安心感があります。ポイントサービスの運用会社がなくなったらどうなるのか、ということは誰も議論したことがないですから。

Tポイントと提携するメリット

―― 共通ポイントであるTポイントに入るメリットはよく分かったのですが、一方で汎用ポイントは御社が始めてから、Ponta、Rポイント、これから始まるdポイントなど、後発サービスがいろいろ出てきています。加盟店からみて、Tポイントをパートナーとして選ぶメリットは何でしょうか。

北村氏 マーケティングやデータ分析の充実度でしょうか。1年やそこらでナレッジはなかなか集められませんが、共通ポイントとしてほかより先に苦労した分、マーケティング支援としてのCRM(顧客関係管理)、あるいはMD(マーチャンダイジング)ということで、お店の売り方、販促の仕方を変革していくための支援が、他社と一番違っていると思います。

―― 送客を受けられますとかCRMに役立ちますとか、これはポイントに限らずいろんな事業者さんがおっしゃいます。その中で、Tポイントは歴史もあるし、実績もあるということでしょうか。

北村氏 ずっと契約更新していただいているということが、その評価だと解釈していただければ。価値がなければ加盟店契約を解除しますよね。それが1つの証だと思っています。

―― 価値があるから、加盟店は今もどんどん増えているわけですね。

北村氏 自社ポイントをやっていらっしゃった、あるいはポイントサービスに参加してらっしゃらなかった場合、1年目以降はそのポイントサービスの価値のゲタを履きますよね。2年目以降は、前年のカードサービスに加盟した上に載っかっているだけです。会員は増えていきますが、ポイントのゲタを履いた上で事業をなさることになるので、共通ポイントのメリットが一番大きく出るのは1、2年目なわけです。

 その後は販促やマーケティングの改革といった面が価値になる。そして最終的には消費者の価値につながらないと支持されません。MDや販促の改革を継続的にお手伝いしていかないと、ポイント価値だけだったらすぐやめられてしまいます。

「Tマネー」で決済をするとダブルでお得

―― 先行者利益がありますし、ポイントも企業通貨として非常に成功していると思うんですが、その中でTマネーという電子マネーも始められました。TポイントとTマネーの位置関係や、電子マネー事業まで踏み込まれた狙い、背景はどういったものなのでしょうか。

photo 「Tマネー」

北村氏 クレジットカードのポイントや、先行の非接触型のマネーは、マネー決済という縛りの上でのポイントです。加盟企業からすると、通常の流通で負担していただいているポイント、加えて決済ポイントのダブルポイントが世の中に存在しなかったんです。例えば、セブン-イレブンさんはnanacoでポイントが付くだけです。ローソンさんだったら、Pontaポイントしか付かない。Tマネーで決済機能も使っていただくとダブルポイントでお得ですよ、ということですね。

 もう1つは、クレジットが嫌な人、あるいは未成年でクレジットカードを持てない方に対しても、1枚これを出すだけでポイントをためることも使うことも支払うこともできる価値として提供したということです。

―― なるほど。Tポイントが登場したときに、決済手段に縛られないのが強みだと思ったので、ここであえて決済事業に入ってきたのはなぜだろうと思っていたんですが。

北村氏 ダブルにしたということですね。縛られない特徴はそのまま、決済までお付き合いいただく。1枚だけの価値にこだわったんです。Tカード1枚でポイントもマネーも、ということですね。

―― 確かに別の電子マネーだとTカードと2枚出さなくてはいけませんし、手間もかかります。ユーザー側からすると、それはすごく分かりやすいんですが、加盟店側からすると、また新しい決済サービスが来たのかという感じもあると思います。加盟店のメリットは何でしょう。Tポイントと密接に連携しているのは大きな強みだと思いますが。

北村氏 nanacoやWAONは、通常の流通だと系列に加わらない限り、意思決定がしづらいですよね。

―― アイワイさんかイオンさんじゃないとできないし、汎用化しづらいですよね。

北村氏 となると、交通系か楽天Edyさんくらいしかない。それを採用しても、彼らの立場は、採用してくれたらセブン-イレブンでもローソンでも決済できるという、極めて汎用的なので、それ自体を採用するメリットというのは、あまりないですよね。

―― お客さんの利便性が上がります、っていうのと、本当かウソかよく分からないけれど、売り上げが増えます、という2点くらいですね。

北村氏 T経済圏の中のアライアンス先さんにすると、セブン-イレブンでは使えない、ローソンでは使えないですから、チャージしていただいたマネーは循環的にTの中だけで使われます。チャージしていただいたお客様ほど当然、来店頻度は上がるし、単価も上がる。そういった価値をアライアンス先さんにご提供できるということですね。

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