低容量プラン+実質0円是正で公平性を高める――総務省、携帯料金タスクフォースの第5回会合を開催

» 2015年12月16日 19時00分 公開
[井上翔ITmedia]

 総務省は12月16日、「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の第5回会合を開催した。

 このタスクフォースは、「利用者にとって、より低廉で利用しやすい携帯電話の通信料金を実現するための方策を検討する」ため、同省のICTサービス安心・安全研究会に設置したもの。

 第1回の会合では、携帯電話の料金とサービスの提供条件に関する現状と課題を洗い出した。第2回の会合では、消費者相談員の団体、大手キャリア(MNO)、仮想移動体通信事業者(MVNO)からの意見聴取と質疑が行われた。第3回の会合は非公開で行われ、携帯電話の販売代理店、MNO、MVNOからの意見聴取と、それを踏まえた自由討議を行った。第4回の会合では、第1回会合で議論に上った「諸外国の端末の実質負担額」と韓国の「移動通信端末装置流通構造改善に関する法律」に関する調査報告、過去3回の議論を踏まえた論点整理を実施した。

 今回(第5回)は、総務大臣(総務省)に提出する提言を取りまとめる作業を行った。

第5回会合開始直前の様子 第5回会合開始直前の様子

料金体系:低容量プランの対象拡大と機種変更の少ない人への配慮を求める

 世界的には「高くもなく安くもない」日本の携帯電話料金だが、月間1GB未満の通信量の「ライトユーザー」に絞ると、かなり割高な部類である。また、大手キャリア(MNO)が通話の少ないユーザー向けのプランを作ったものの、データ定額プランにおいて制約を設けることで月額料金を「つり上げる」ような方向性になってしまった。

 前回の論点整理と、それに対するタスクフォース構成員の意見を踏まえ、この課題に対しては、以下のような提言案が示された。

  1. NTTドコモの「らくらくパック」やKDDI(au)の「ジュニアスマートフォンプラン」や「シニアプラン」のように、対象端末や年齢を制限しているプランの対象端末・年齢を拡大すること
  2. 低容量(1GB以下)のデータ定額プランを作ること
  3. 通話時間制限のある「かけ放題プラン」において、より低い容量のデータ定額プランと組み合わせられるようにすること
  4. 長期間端末を買い換えない人やSIM単体契約時など、端末の購入補助を受けない場合に代替割引(あるいは料金のより安いプラン)を提供すること
  5. 総務省は定期的に料金と利用実態の検証を行うこと

 1〜3つ目の提言は、データ通信容量の少ないユーザーに対する公平性を担保するためのものだが、(議論の進行的に仕方ないが)通話をほとんどしないユーザーに対する提案は盛り込まれていない。

 4つ目の提言は、第4回会合で報告された韓国での事例を参考にしたものだ。

競争環境転換:行き過ぎた端末購入補助を是正 一方で課題も

 携帯電話の販売において、特にMNP(携帯電話番号ポータビリティ)を利用した際のインセンティブ(販売奨励金)による端末代金の値引き、あるいはキャッシュバックが大きな問題になっている。端末購入を条件にした通信料金の値引き(「月々サポート」「毎月割」「月月割」)と合わせると、端末代金を超える割引となるケースもある。このことが、契約者間の不公平を生むだけではなく、MVNO(仮想移動体通信事業者)の普及の妨げになっているという指摘がある。

 一方で、問題については、MNOが行き過ぎを是正する旨を表明している。しかし、その実効性を高めるために行政が介入すると、独占禁止法上の「カルテル(企業協定・談合)」や「再販価格の拘束」を誘発してしまう恐れがある。

 前回の論点整理と、それに対するタスクフォース構成員の意見を踏まえ、この課題に対しては、以下のような提言案が示された。

  1. 端末の料金割引などで「実質0円」にする販売方法を是正し、端末購入補助を受けない人の負担を減らすべき
  2. 端末購入補助の、契約区分や契約プランによる著しい差を見直すことを検討すべき
  3. 「型落ち端末」については、新しい端末と同様に購入補助を制限すると、端末流通などの面で大きな影響があるので、別途配慮をするべき
  4. 総務省は、事業者の取り組みを促すために、カルテルや再販価格拘束を誘発しないように留意しつつ、端末購入補助の見直しに関するガイドラインを策定を検討すべき
  5. 総務省は、事業者の取り組みを検証できるような措置を取るべき
  6. SIMロック解除の着実な実施などにより、利用者の囲い込み施策の見直しを引き続き促していくべき
  7. 端末購入を条件とした料金割引や、解約した際の端末に関する負担について、利用者が理解して契約できるように総務省でルールの整備などをすべき

 インセンティブの行き過ぎを是正しつつ契約形態による差を少なくすること、総務省によるインセンティブに関するガイドライン策定とチェック体制の構築と、契約条件の開示ルールの制定が提言の要旨だ。

 インセンティブの是正に関しては、「0円端末がなくなる!」「端末価格が高くなる!」という扇動商法が起こりうること、型落ち端末の「型落ち」の定義をどうするのか、といった課題も多く存在する。一方で、是正によって端末の開発サイクルが延び、結果として過剰供給もなくなるという指摘もある。数年かけて、段階的に是正していく方向になるものと考えられる。

MVNO市場の成長:加入者管理機能の解放を促進 中古端末市場の発展促進も提言

 携帯電話料金の低廉化や、サービスの多様化の面では、MVNOサービスの普及も重要なテーマである。

 しかし、MVNOサービスの普及を考えると、利用者層が都市部在住者や情報リテラシーの高い人に限られていること、「安さ」から来る通信・サポート品質への不安が課題となっている。

 また、サービスの多様化の鍵となる加入者管理機能(HLR/HSS装置)の自前設置に関して、MNOとMVNOとの協議が進んでいないことも問題とされている。

 前回の論点整理と、それに対するタスクフォース構成員の意見を踏まえ、この課題に対しては、以下のような提言案が示された。

  1. MNOがMVNOに対して課す接続料に関する総務省令やガイドラインの整備を着実に進めつつ、算定基準の適正性・透明性の向上を図るべき
  2. 加入者管理機能をガイドライン上の「開放を促進すべき機能」と位置付け、MNO・MVNO間の協議を加速すべき
  3. MVNOとMNOの顧客管理システムのオンライン連携の早期実現を促すべき
  4. MVNO自身がより多くの利用者から選ばれるような戦略をとることが望まれる
  5. MNOのインセンティブ適正化と同時に、中古端末市場の発展が望まれる

 MVNOサービスの普及を図る意味での中古端末の普及に関しては、タスクフォースにおける議論の中で出てきたものだ。ただし、インセンティブの是正によって、流通する中古端末の量が減少してしまう懸念もある。競争環境の転換に関する提言との折り合いをどう付けるのか、注目したいところだ。

提言は案通りに承認

 これらの提言案は、原案通りに承認された。提言を受けて、総務省ではガイドラインの策定とパブリックコメントの募集など、具体的な作業に取りかかることになる。会合に出席した高市早苗総務大臣は、総務省としての方針を速やかに示すことを明言した。

第5回会合終了のあいさつをする高市総務大臣 第5回会合終了のあいさつをする高市総務大臣

 タスクフォースが投げたボールは、総務省の手に委ねられた。総務省は、携帯電話に関わる全ての人(ユーザー、事業者、販売者など)が“幸せ”になれるガイドライン類を整備し、実行できるのだろうか。今後の動きから目を離せない。

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