ここまでに挙げたIP電話・中継電話を使ったサービスは、電話料金をある程度引き下げることはできますが、「アプリなどを使わずに普通に電話するだけで安くなってほしい」「やっぱり定額制で使いたい」という要望には必ずしも応えられていません。
最初にも書いた通り、日本のMVNOは音声通話サービスについての設備をキャリア網に接続することができず、直ちに独自性の高い料金プランを作るのは難しいのですが、MVNOの中には独自性の高い料金プランの実現に向けてキャリアとの交渉を行っているところもあるようです。
1つの方向性は、キャリアからMVNOに提供する通話サービスの料金プランを増やすことです。これにより、MVNOが自社の利用者に提供する音声通話サービスに、今までにないバリエーションを増やすことができるかもしれません。
もう1つの方向性は、MVNOが音声通話のための設備を持ってキャリアと相互接続し、独自の音声通話サービスを始めることです。自前の設備を持つことにより、MVNOは設備の利用状況を見ながらより「攻めた」通話プランを提供できる可能性があります。
しかし、これを実現するためには現在キャリアが相互接続のために開放している設備よりも、より広い範囲での開放が行われる必要があります。また、MVNO側でも今まで以上に大きな投資が必要になります。こうした新たなコストを負担しながら、利用者に響く「攻めた」音声通話プランが作れるかどうかは、未知数です。設備の投資額によってはキャリアから提供される通話サービスよりもコストが高くなってしまうということも十分に考えられ、MVNOがあえて挑戦する意味が見いだせない可能性もあります。
MVNOの努力により、今後も多様な音声通話サービスが提供されるとは思いますが、「普通の電話を安く」の実現にはまだまだハードルがあると考えています。
堂前清隆
株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ) 広報部 技術広報担当課長
「IIJmioの中の人」の1人として、IIJ公式技術ブログ「てくろぐ」の執筆や、イベント「IIJmio meeting」を開催しています。エンジニアとしてコンテナ型データセンターの開発やケータイサイトのシステム運用、スマホの挙動調査まで、インターネットのさまざまなことを手がけてきました。
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