日本でデザインされたスマホを海外メーカーが販売――グートの「ARATAS」プログラム

» 2016年01月18日 21時25分 公開
[田中聡ITmedia]

 モバイル、インターネットのメディアプラットフォーム事業を手掛けるグート(Goute Pte)は1月18日、海外の低価格スマートフォンメーカーに向けたプログラム「ARATAS(アラタス)」を発表した。

 ARATASは、低価格スマートフォンを開発するためのノウハウを海外メーカーに提供するプロジェクト。端末本体のデザインを提供する「ARATAS DEVICE(アラタス・デバイス)」、UI(ユーザーインタフェース)デザインを提供する「ARATAS UI(アラタス・ユーアイ)」、キュレーションサービスの「ARATAS NET(アラタス・ネット)」の3つから構成される。

photo ARATASの3つの製品
photo グート(ARATAS)を通して、スマホのデザインやサービスをODMやメーカーに提供する

 グートがスマートフォンを開発するのではなく、ODMやメーカーに端末やUIのデザインを提供し、ライセンス料を徴収するビジネスモデルを採用する。まずは中国のメーカー Kingtech Mobileとパートナーシップを組み、第1弾の端末「K01」と「K02」を今春から順次発売し、約10カ国で年間30万〜50万台の販売を計画している。

photo 「K01」
photo 「K02」

 K01とK02はスペックを抑えた低価格モデルだがLTEには対応しており、価格はUSドルでK01が160ドル(約1万8800円)、K02が140ドル(約1万6400円)を想定している。2モデルの主な違いはサイズやデザインで、Android 5.1、MediaTekの4コアCPU、5型HD液晶、8GBストレージ、1GBメモリ、800万画素アウトカメラ、200万画素インカメラ、microSD(32GB)対応、2200mAhバッテリーなどは共通している。Kは「KAZE」の略で、ARATASの中ではミドルレンジに位置付けられる。

 もう1つ「NAMI」を略した「N」シリーズも用意しており、こちらはさらにスペックを抑えた、50〜80ドルの3Gスマホとなる。日本円だと1万円を切る安さだ。

 端末のデザインは、amadanaでデザイナーを務めたことのある鄭秀和氏が代表の、インテンショナリーズが担当し、丸みを帯びたデザインを特徴としている。

 ARATAS UIは、起動画面から壁紙、アイコン、着信音までを含み、いずれも日本の著名なクリエーターが手掛けている。

photophoto UIやサウンドの細部に至るまでをカスタマイズしている

 ARATAS NETでは、「LOUCUS(ルーカス)」「GOOUME(グーミィ)」という2つのキュレーションアプリを用意する。LOUCUSでは、各国のニュース記事やオススメアプリ情報などを、広告とともに配信する。ユーザーはARATAS端末のアプリやウィジェットから情報を取得できる。

photo 「LOUCUS」の配信内容

 もう1つのGOOUMEでは、日本の最新トレンドやコンテンツを海外に配信するアプリで、Google Playを介さずにコンテンツの配信が可能になる。GOOUMEにはネイティブアドや動画広告も挿入される。

photo Google Playを経由せずにコンテンツを配信できる「GOOUME」

 ARATAS NETは単独でもメーカーに提供するほか、ARATAS NET+UIという組み合わせでの提供も可能。また広告配信にあたって、グートはInMobiと提携し、最新のアドテクを活用していく。

photo ARATAS提供の形態

低価格スマホメーカーと新たな収益の形を作る

 ARATASのプログラムは、どのような経緯で発足したのか。グートは18日に都内で発表会を開催し、横地俊哉CEOが説明した。スマートフォンのOSシェアは、世界ではAndroidが大半を獲得しているが、収益面に目を向けると、iOS(Apple)90%近くを獲得しており、販売シェアが収益に結びついていない。スマートフォンの生産地は中国が中心となっており、アジア新興国を中心にシェアを獲得しているが、差別化を図れるのが「価格」のみとなっているのが現状だ。

photo スマートフォンの営業利益シェアは、Appleの1人勝ちと言っていい状況だ
photo K01とK02を手にする横地氏

 そこで、「プラスαのプロダクトを提供することで、端末の売上でなく、何かしら別の収益をデザインする」(横地氏)ことを目的として、ARATASプログラムがスタート。中でも横地氏が注目するのが、「継続的に収益を上げられる」というARATAS NETだ。端末の売上だけではなく、広告を加えることで、新しい収益の形を作ることを狙う。

 グートはデザインやマーケティング、ブランドコントロールを行い、端末メーカーは在庫管理や販売を担うという形で役割分担をする。グートは「チップや基板の選定も一緒にやる」(横地氏)そうで、メーカーはグートからいわば“コンサルティング”を受けられる。端末には「Designed in Japan」と明記し、日本品質であることを強調する。

 第1弾端末のK01とK02を販売する10カ国の中には日本も含まれるが、横地氏によると、日本での発売は2016年の夏以降になる見通し。「日本でARATAS端末を発売する計画はあったが、グローバルで考えると規模が小さく、技適の認証にもコストが掛かる。まずは海外である程度の台数を販売できてから、逆輸入という形で日本へ持っていく」とした。

 グートはシンガポールの企業だが、日本法人のグートジャパンもあり、コアメンバーはニフティ、NTT、NEC、イー・アクセス(現ソフトバンク)、富士通、ヤフーなど、日本の企業を出身とする人も多い。横地氏はニフティ出身だ。

 ARATASは“海外で販売する日本発の製品群”だが、世界でどこまで収益を上げられるか。日本でも2014〜2015年にかけて、多くのSIMロックフリースマートフォンが登場したが、格安でありながらもデザインの細部にこだわったARATASスマホが、日本市場でどこまで存在感を示せるのか。2016年の展開を注目したい。

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