HuaweiとXiaomiのバトル、新興勢力の台頭 2015年中国スマホ市場を総括する山根康宏の中国携帯最新事情(1/2 ページ)

» 2015年12月31日 17時30分 公開
[山根康宏ITmedia]

 右肩上がりで成長を続けてきた中国スマートフォン市場も、2015年は出荷台数が前年比でマイナスを記録する月があるなど成長鈍化が見られた1年だった。それでも買い替えを中心とした新製品の需要は高く、各メーカーはシェア増加をめざしさまざまな製品を投入してきた。数を伸ばしたメーカー、期待はずれに終わったメーカー、2015年の各社の動きを振り返ってみよう。

Huaweiがついに首位、Xiaomiは製品乱発で対抗

 中国のスマートフォンメーカーの人気もこの1年で大きく変わった。1年前の2014年、出荷台数トップに立ったのはXiaomi(シャオミ、小米科技)、わずかな差で韓Samsungが続き、3位グループはLenovo、米Apple、Huawei、Coolpadだった(IHS Technology調査)。だが2015年に入るとSamsungは失速、またLenovoとCoolpadも勢いを伸ばせずXiaomiとAppleが激しいトップ争いを繰り広げる格好となった。だが7月〜9月期にはHuaweiが初めて中国でスマートフォン出荷台数トップとなり、中国メーカーの「顔」のポジションをXiaomiから奪い取った。

 Huaweiは中国以外の市場でも好調で、同社の発表によると2015年12月28日には全世界でのスマートフォン出荷台数が1億台を超えた。年間出荷台数を億の大台に乗せたのはSamsung、Appleに次いで史上3社目。2015年のグローバル市場で、Huaweiのシェア3位の座はこれで当確だろう。

中国シェア1位となったHuawei 中国シェア1位となったHuawei。「Mate S」などハイエンドだけではなくミッドレンジも強い

 中国でシェア1位にもなったHuaweiだが、製品ラインアップはミッドレンジモデルを主体としており、ボリュームゾーン向けの製品は種類が豊富だ。そして「Mate S」や「P8」などハイエンドかつ高級感あるモデルも複数投入している。オンライ販売向けとして当初リリースされたhonorシリーズは、今では中国の通信事業者3社が取り扱い、実店舗の一部でも販売されるまでの人気モデルに成長した。“Ascend”のブランドを外したメインラインのHuweiブランドモデル(P8やMate S)がハイエンドにフォーカスし、Honorはミッドレンジ以下――という図式も、高性能カメラを搭載した「honor 7」などの登場で境界は無くなりつつある。

 honorのハイエンドモデルの上に位置するのはHuaweiブランドのP8やMate Sで、honorシリーズは「7」「6」「5」「4」「3」と、機能および価格別に複数のラインを持つ。それ以外にHuaweiブランドの「G」シリーズ、China Telecom(中国電信)とコラボレートした若年層向けの「麦芒」シリーズなど製品バリエーションは今や中国メーカーの中でも最大規模だ。「Huaweiの全製品の中に、自分が欲しいと思うモデルが必ずある」という今の状況は、往年のNokiaや強さが際立っていたころのSamsungをほうふつさせる。

 実店舗展開も積極的で、地下鉄のコンコースの「駅ナカ」やショッピングモールのエスカレーターのわきの小さいスペースなど、小規模な店も増えている。中国も今やオンラインショッピングで何でも買える時代だが、買物ついでに立ち寄れて、実機に触れる実店舗はまだまだ重要性が高い。手にして思わずその場で買ってしまうこともあるだろう。Huaweiは自社のオンラインショッピングサイト「Vmall」も持っているが、オフライン店舗を展開することで製品体験の場を提供しているともいえる。豊富な製品ラインアップと、オンラインとオフラインの両方の販路を強化したHuaweiが中国でシェア1位になったのは当然の結果だったのかもしれない。

Huaweiは実店舗も増やしている Huaweiは実店舗も増やしている。ショールームの役割で製品ファンを増やす戦略だ

 一方、長らく中国のスマートフォン市場の話題を独り占めしてきたXiaomiはやや勢いが無くなり、製品展開戦略を大きく変えた。2015年はエントリーモデルの「RedMi(紅米)」シリーズを強化、11月にはフルメタルボディに指紋認証センサーを搭載した「RedMi Note 3」を発表した。価格は889元(約1万6490円)からだ。

 一方、上位モデルとなる「Mi」シリーズでは、USB Type-Cコネクタを備え、画面サイドがタッチ操作できる「Mi4c」を10月に発売。しかしボディはプラスチック製で価格も1299元(約2万4100円)と低価格化を進め、RedMiシリーズとの差が小さくなった。

 「ハイエンドのMiシリーズで話題を取り、低価格なRedMiシリーズでボリュームを稼ぐ」のがXiaomiのこれまでの戦略だ。しかしXiaomiは今後、1000元以下の低価格帯モデルの機能を強化しこちらをメインのラインアップとしていくように見える。一方のMiシリーズは最新の技術を搭載して差別化を図っていくのだろう。しかしHuaweiのPシリーズのような高級感あふれる質感の製品を出す動きは見られない。

価格競争に自ら入りこもうとしているXiaomi 価格競争に自ら入りこもうとしているXiaomi。ブランド力低下が気になるところ

 Xiaomiは2015年頭に2014年の年間出荷台数が1億台を超えるという予想を立てた。だが春先から減速が目立ち、1億台到達には至らなかった。Xiaomiが今後注力するボリュームゾーン向け製品は2016年も競争が厳しくなっていくだけに、ようやく登場するとみられるMiシリーズの最新モデル「Mi5」がどんな製品になるのか、注目される。

ブランド力をつけたOPPOとVivo、伸び悩むLenovoとCoolpad

 OPPOとVivoは2014年と比較して2015年の新製品の数はだいぶ減った。その分製品数を絞り込み、高デザイン、高性能モデルを中心とした製品展開をより明確にした。両者の実店舗はコーポレートカラーであるそれぞれ緑とブルーの色に飾られ、清潔感と高級感もある。1000元以下のスマートフォンの売れ行きが好調な中国だが、両者は3000元(約5万5000円)前後の高価格帯のモデルも用意しておりそれらの人気も高い。スリムな金属ボディに高性能なカメラや音楽再生機能などAV再生機能も強化しており、20代から30代の世代に売れているという。

ブランド力をより強固なものにしたOPPOとVivo ブランド力をより強固なものにしたOPPOとVivo

 OPPOとVivoの製品は女性ユーザーが多く、ブランドイメージも高いといわれている。低価格競争に巻き込まれなくとも売れる製品をじっくりと育て上げた結果が、2014年になって開花したのだろう。2015年第1四半期のデータになるが、Vivoは中国国内でシェア5位、OPPOはLenovoと並んで6位につけた。低価格品だけでなく高価格品も売れる両者はそのブランドを生かして東南アジア各国にも進出しており、中国メーカーではなく「海外の高ブランドメーカー」として人気を高めているという。

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