「arrows SV F-03H」は、NTTドコモの2016年夏モデルのラインアップで唯一のミドルレンジスマートフォンで、7月上旬の発売を予定している。スペックを“ちょうど良い”ものとすることで手頃感を出すという点では、2015年冬モデルとして登場した「arrows Fit F-01H」と同じコンセプトを共有している。
arrows SVでは、ちょうど良いスペックとデザインの“上質感”の両立に挑戦し、ミドルレンジモデルにありがちな「安っぽい」「作りが甘い」といった印象を払拭(ふっしょく)しているという。本稿では、そんなarrows SVの外観を中心にレビューをしていく。
皆さんは、スマホの上質感をどこから感じ取るだろうか。ボディーの素材、塗装の状況――多くの人は、外観からそれをまず感じ取るはずだ。
その上で有効なのが、ボディーに金属素材を取り入れることだ。金属には(元素によって差があるものの)重みもあるため、上質感をより感じやすくする効果もある。しかし、金属は電波を遮蔽(しゃへい)するため、ボディー全体に使うことは困難である上、そもそも使いすぎると端末価格も上がってしまう。
そこで、arrows SVではボディーの左右側面にアルミニウム製のフレームを採用した。SIM/microSDスロットのキャップにも同じ素材を使っているので、キャップの部分だけ見た目が違うということもない。右側面のフレームには「arrows」ロゴのレーザー刻印もあり、高級感を演出している。
さらに、フレームとキャップ部の素材には「アルマイト加工」を施してある。見た目の上質感をより高めると同時に、arrows Fitで打ち出した「永く美しく」を満たす耐食性や耐摩耗性も確保した。
通信の要となるアンテナなどがあるボディーの上下端部は樹脂素材となっている。色味はアルミフレームに合わせてあるため違和感はないが、よくよく見ると違う素材であることが何となく分かる。
フレームと樹脂素材の境界部は鉱石を彫刻刀で彫り込んだような形状になっている。「彫刻に触発されたかたちと質感」というデザインコンセプトを忠実に再現しているのだ。素材の変わる部分をあえてデザインで生かしている、ともいえるだろう。
この彫り込みは、単なるデザイン上のアクセントとしてだけではなく、持ちやすさにも一役買っている。スマホの「角」は、小指や手のひらに刺さることがある。arrows SVの彫り込みは、この刺さる感覚を緩和してくれるのだ。縦・横どちらの方向からでも指や手に優しいスマホであるといえる。
なお、arrows SVはキャップレス防水・防塵(じん)設計となっている。arrows FitではUSB充電する際にキャップの開け閉めが必要だったが、arrows SVでは不要となっている。ただし、キャップレス設計となった代わりに卓上ホルダによる充電には対応しなくなった。
つや消し加工の側面とは打って変わり、ボディー背面アクリルパネルは鉱石を真っ二つに割ったような光沢加工となっている。ただし、明かりを当てるとギラギラと光る、という性質のものではなく、もう少し上品な仕上がりとなっている。パネルのテクスチャー(模様)は、カラーごとに異なる。背面にある1310万画素のアウトカメラ(LEDライト付き)は、パネルに対してフラットな設計となっており、机に置いたときにがたつくこともない。
昨今のarrowsはユニセックスなデザインを志向しているが、arrows SVも例外ではない。どのカラーも男性・女性どちらが持っても違和感のない仕上がりとなっている。
arrows SVには、arrows Fitにあった指紋認証センサーがない。デザインとコストの両面から見送りになったというが、筆者のように生体認証を好んで使っている人にとっては残念なことだ。ただ、指紋認証センサーがないことで、わずかながらスリムになったことを考えると「痛しかゆし」だ。
指紋認証センサーがなくなった代わりに搭載されたのが「ワンセグ」だ。ワンセグは自然災害発生時に貴重な情報源の1つとして役に立つ。アンテナも本体に内蔵されているので、本体さえあればすぐに試聴できる。
arrows Fitのコンセプトを継承しつつ、上質感を加えて2016年の夏商戦に挑むarrows SV。コスト的な制約が多いミドルレンジモデルにあって、所有感を満たせる作りを実現していることは「お見事」の一言だ。ドコモショップなどに実機が配置されたら、ぜひの質感をじっくり確認してもらいたい。
今回は外観面でのレビューだったが、機能面でもarrows SVは進化している。そのレビューは近日中に公開する予定だ。楽しみに待っていてほしい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.