政策やiPhoneの影響で変わったケータイの形 今こそ「au Design project」や「iida」が必要と思う理由石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2017年07月22日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 「INFOBAR」で鮮烈な印象を世に与えた「au Design project」の発足から15年がたったことを記念し、KDDIは東京・丸の内の「GOOD DESIGN Marunouchi」で、「ケータイの形態学 展」を開催している。ここには、au Design projectの原点ともいえるINFOBARのコンセプトモデルから、比較的最近登場したスマートフォン、さらには現状を踏まえた上で新たなコンセプトとして、「SHINKTAI」のデザインを展示。さまざまな事情でお蔵入りしてしまった、iidaブランドのスマホも初めて公開された。

au Design project 7月21日から31日まで東京・丸の内で開催される「ケータイの形態学 展」

 折りたたみケータイ全盛期に登場したINFOBARだが、au Design projectに携わってきたKDDIの砂原哲氏によると、もともとはスマートフォン的な存在を目指したものだった。裏面全てがディスプレイになり、そこに情報が表示されるというコンセプトが、INFOBAR(情報のバー)という名称の由来だ。ポップでカラフルな外観が注目を集めていたINFOBARだが、デザインだけでなく、発想そのものが今のスマートフォンを先取りしていたのだ。

au Design project KDDIの砂原氏が、発足当時からの開発秘話やコンセプトなどを語った

 その後、「talby」や「MEDIA SKIN」など、さまざまな“名作”を生み出してきたau Design projectは、「iida」に名称を変え、「G9」などを発売する。iPhoneが登場し、スマートフォン時代に入る徐々にラインアップは減っていってしまったが、AndroidスマートフォンとしてINFOBARを複数発売し、ハードウェアとソフトウェアが融合したユーザーインタフェースに挑戦してきた。ここでは、au Design projectやiidaの軌跡を振り返るとともに、未公開だったコンセプトモデルを元に、その可能性を考えていきたい。

折りたたみ全盛に一石を投じたINFOBARやTalby、素材への挑戦も

 製品として初代INFOBARが登場した2003年は、折りたたみケータイ全盛の時代だった。当時、INFOBARと同時に発表されたラインアップは、東芝の「A5501T」、三洋の「A5503SA」、カシオの「A5403CA」、ソニー・エリクソンの「A5404S」、京セラの「A5502K」で、5機種中4機種が折りたたみ。京セラのA5502Kはディスプレイ側が回転するリボルバータイプだったが、ケータイといえばクラムシェルタイプが当たり前だった。

au Design project ストレート型でポップなカラーリングが話題を呼んだINFOBAR

 特に日本で折りたたみ型ケータイが普及したのには、理由がある。1つは、ケータイが通話のための道具から、コンテンツを見るための道具に役割が変化したこと。キーを載せつつ大画面化し、なおかつ持ち運びやすいようコンパクトにするには、折りたためてしまえた方が都合がよかった。1999年に登場したiモードがこの流れを決定づけ、競合であったauやVodafone(現・ソフトバンク、INFOBAR登場直前にJ-フォンから社名変更)もこれにならっていた。iモード以前には一般的だったストレート型やバータイプと呼ばれる端末は、この当時、特殊な存在になっていた。

 この折りたたみ一色のデザインに一石を投じたのが、IFNOBARだった。同端末は、プロダクトデザイナーの深澤直人氏のアイデアから生まれたもので、ストレートタイプであるのと同時に、キーを市松模様にしたユニークさが話題を呼び、auを象徴する製品になった。機能面では、フラグシップモデルに位置付けられていた5000シリーズに一歩見劣りしていたが、それでも31万画素のカメラや2型のディスプレイ、GPSなどには対応していた。コンセプトモデルにはなかったアンテナが搭載されているのも、技術的な苦労のあとがうかがえる。

au Design project
au Design project 打ち合わせ時に深澤氏がレゴで示した見本と、それをコンセプトモデル化した「info.bar」。背面がディスプレイになるなど、スマートフォン的な要素を持った端末だった

 KDDIとしても、商品化には迷いがあったことがうかがえる。当時の記事では、プロダクト統括部長の牧俊夫氏(現・ジュピターテレコム会長)が「台数が売れるか不安があり、ふっきれなかった」と語っている。コンセプトデザインの「info.bar」を発表したのが2001年。そこから商品化には、2年以上の歳月を要した。この不安を払拭(ふっしょく)するかのように、INFOBARは完売店が続出。今に至るまで、その姿を変え、何度も後継機が作られている。

au Design project INFOBAR発売当時、プロダクト統括部長だった牧氏。現在は、ジュピターテレコムの会長

 ベースモデルのデザインだけを変えた「W11K」のような例外もあったが、INFOBARが好評を博した結果、au Design projectの端末は、その後、定期的に発売されるようになった。翌2004年には、プロダクトデザイナーで、現在はアップル製品のデザインにも携わっているマーク・ニューソン氏を起用した「talby」を発売。

 2005年には、蒸着塗装を用いてメタリックな質感を実現したサイトウマコト氏デザインの「PENCK」もリリースされている。PENCKはテンキーのフォント無断使用で一騒動あったが、2006年にはLEDが特徴の「neon」、2007年には吉岡徳人氏を起用した「MEDIA SKIN」やINFOBARの光景である「INFOBAR 2」を発売。いずれもユーザーからは高く評価されていた。

au Design project WIN対応初号機の1つで、ダブル定額も利用できたW11K
au Design project 世界的に有名なプロダクトデザイナー、マーク・ニューソン氏の手掛けたtalby
au Design project 蒸着塗装で鏡のような光沢感を出したPENCK
au Design project シンプルな背面からLEDが浮かび上がるneon
au Design project 触り心地までデザインしたMEDIA SKIN

 PENCKの蒸着塗装や、MEDIA SKINの手触りを実現したソフトフィール加工のように、見た目だけでなく、端末の素材への挑戦もしていたのが、au Design projectの特徴だった。今では当たり前にケータイやスマートフォンに用いられている技術も、当時は数々の苦労の末に実現している。結果としてアンテナの問題があり樹脂で質感を再現しただけになってしまったが、talbyも、コンセプト時はボディーにアルミニウムを採用していた。スマートフォンでは常識のように用いられる素材だが、当時はチャレンジングな発想だったというわけだ。

 「デザインケータイを作っていたわけではない」と砂原氏が語っていたように、au Design projectは、時代を先取りしながら、後のケータイ、スマートフォンのスタンダードに影響を与えたプロジェクトだったといえるだろう。

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