政策やiPhoneの影響で変わったケータイの形 今こそ「au Design project」や「iida」が必要と思う理由石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

» 2017年07月22日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

政策の変化やiPhoneの波を受け、変わる役割

 純粋にケータイのあるべき姿を追求してきたように見えるau Design projectやiidaだが、やはり環境から受ける影響も大きく、その役割を徐々に変化させている。特にau Design projectからiidaになってからは、その傾向が顕著に出るようになった印象だ。砂原氏によると、2009年に発売されたiidaの「misora」は、2007年に出された総務省のモバイルビジネス研究会の報告書によって、「0円ケータイ」や「1円ケータイ」が消える中で開発されたという。

au Design project 分離プランの導入という時代の変化に合わせて開発されたmisora

 misoraは、au Design projectに深く関わり、現在はKom&Co.Designの代表を務める小牟田啓博氏の会社に所属していた、迎義孝氏がデザインした端末。その外観はシンプルの一言に尽き、そぎ落とされたデザインながらも、必要十分な機能を備えていた。モバイルビジネス研究会が問題視していたのは、通信料金と端末代が一体となった価格でしか販売されていなかったこと。2015年に開催された総務省のタスクフォースに通じるところがあるが、この報告書を受け、各社が端末と料金を明確に分けた、分離プランを導入することになった。

 KDDIは、2007年に「au買い方セレクト」を導入。端末価格が安いぶん、一定の縛りがある「フルサポートコース」と、端末は基本的に定価で買う半面、毎月の通信料を抑えられる「シンプルコース」の2つから選択できるようになった。こうした料金制度の変化があり、シンプルで買いやすい端末が求められていたのだ。これに対応したのが、misoraである。auはもともと、フルサポートコースをメインにしていたが、ソフトバンクの「新スーパーボーナース」やドコモの「バリューコース」に押され、2008年にはシンプルコースを改定し、割賦販売制度を導入している。

au Design project
au Design project モバイルビジネス研究会の報告書を受け、KDDIは「au買い方セレクト」を導入。高橋誠常務(現・代表取締役執行役員副社長)が、仕組みを解説

 それでも、いわゆる1円ケータイや0円ケータイは姿を消さず、毎月の割引と組み合わせることで実質0円(以下)の価格で販売する手法は残り、2016年のガイドラインが出されるに至っているのだが、iidaもこうした販売制度の影響を受けざるを得なかったというわけだ。

 このタイミングで、もう1つ大きな変化があった。それが「iPhone 3G」の日本上陸である。2008年にソフトバンクが日本で初めてiPhoneを発売。当初は話題性ほどの販売実績はあげられていなかったiPhoneだが、その後、ソフトバンクが「iPhone for everybodyキャンペーン」を展開したり、iPhone 3GSでソフトバンクのキャリアメールに対応したりすることで、売れ行きを伸ばしていった。ドコモやKDDIは、これにAndroidで対抗。XperiaやGalaxyなどのグローバルモデルをいち早く導入したドコモに対し、KDDIはおサイフケータイやワンセグを搭載した「IS03」で、スマートフォンの本格展開を始めた。

au Design project 2008年7月11日に、iPhone 3Gが日本に上陸した

 「デザイナーも含め、みんなアップルの製品が好き」と砂原氏が語る一方で、当時のiidaは、iPhoneにはないスマートフォンの形を模索し、コンセプトモデルを発表していた。こうした取り組みが実を結んだのが、iidaブランドとして初のスマートフォンとなる「INFOBAR A01」だ。

 INFOBARは、その後もテンキーを搭載した「INFOBAR C01」や、HTCが製造を担当し、物理キーを廃した「INFOBAR A02」、金属ボディーを採用し、キーをセンサーとして復活させた「INFOBAR A03」が発売されている。iida名義ではないが、Firefox OSを搭載した、最初で最後のスマートフォン「Fx0」も、砂原氏が担当し、デザインはMEDIA SKINや「X-Ray」でおなじみの吉岡徳人氏が手掛けている。

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au Design project スマートフォン時代に向け、さまざまなユーザーインタフェースが模索されていった
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au Design project スマートフォン化したINFOBAR。(上から順に)A01、C01、A02、A03の4機種が発売された

 スマートフォンは前面から見ると、ディスプレイの占める比率が高く、キーを搭載していたフィーチャーフォンによりも、デザインで差を出しづらいといわれる。そこで、iidaは、ユーザーインタフェースとハードウェアを一体にしたデザインを採用し、他のスマートフォンとの差別化を図った。INFOBAR A01開発時には、中村勇吾氏を起用。縦スクロールで、アイコンの代わりにタイルを用いた「iida UI」を採用している。このiida UIに磨きをかけ、動きにも躍動感を持たせたものがINFOBAR A02に搭載された。

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