子どもとシニアでナンバー1を目指すトーンモバイル 石田社長「iPhoneの市場も狙う」MVNOに聞く(2/3 ページ)

» 2017年08月21日 11時31分 公開
[石野純也ITmedia]

IP電話の遅延も改善

―― 端末の開発という意味だと、今回はベースモデルのarrowsと似ている部分があります。どの部分をカスタマイズしているのか、あらためて教えてください。カラーはホワイトだけですが、これも何か理由があるのでしょうか。

石田氏 今回、ダメージレス構造以外はほとんど同じですが、ソフトウェアは全く違います。基本シャシーは同じ構造ですが、裏面を強くするために、塗装面だけを見ても、普通のものより10倍ぐらい強度を高くしています。これはVERYさんのニーズですが、割れないためというよりも、子どもがいろいろなものとスマホを一緒に入れてしまって、傷がつかないようにするためです。

 スマホ(のハードそのもの)で差別化できなくなるのは分かっているので、白い色を選んでいるのはできるだけ存在感をなくすためです。TONEのロゴも薄くしています。もう1つの理由は、色ムラなどの不良が見分けやすい。この2つの特徴があるため、白を選んでいます。

―― ドライバーなど、ミドルウェア部分まで手を入れているとうかがいました。この点を詳しくお聞かせください。

石田氏 もともとAndroid OSがサポートしていてもハードウェアメーカーが使わない部分もありますし、TONEではミドルウェアやドライバーまで手を入れています。例えば、IP電話の遅延に関してですが、AndroidはOS標準だと端末内部の遅延がものすごく大きい。この点はiPhoneがずば抜けています。iPhoneは6msから8msぐらいですが、Androidだと下手をすると80msや90msの遅延が発生してしまいます。同じIP電話アプリを動かすのでも、iPhoneとAndroidではここまで違いがある。そこに手を入れて、われわれはほとんどiPhoneと同じぐらいになるようにしています。その結果かもしれませんが、090の番号(音声通話のオプション)を選ぶ人は3割ぐらいしかいません。

―― 子ども用だとMNPで移るわけではないので、090のような電話番号がいらないという事情もありそうですね。

石田氏 子どもだけでなく、シニアもその形でいいようです。今はLINEもあるので、MNPで移らなくてもいいという方は出てきています。

―― IP電話に関しては、IPアドレスも別に振られるとうかがいました。

石田氏 交換機の中で、別のIPアドレスに分けています。これはわれわれの特許技術ですが、TCPのスタック自体をアプリが持っていて、Android OS側から見ると単なるアプリですが、インターネット側から見るとIPv6のアドレスを持っている形になります。完全に(通常の通信とは)別の系統になっていて、そこだけ、別の帯域を通しています。IP電話の難しいところはリーチャビリティ(到達性)ですが、いろいろな環境で着信させるのが難しい。そういうところを、この技術で解決しています。

 他にも、メモリの都合でアプリが殺されてしまうことがあります。Androidは7.1だとデータセーバーが付き、バッググラウンドでの動作を禁止できますが、TONEのアプリはそこからも外してあります。こういったところで動作に影響が出るので、OSレベルで手を入れているのです。

速度制限を外しても問題なしと判断

―― TONE m17の発売と同時に通信速度に対する制限を外しました。これはなぜでしょうか。

石田氏 AIチームがトラフィックを分析していて、17次元ぐらいの情報で予測をしています。退会される方のトラフィックの使い方や、コールセンターに電話する人が最終的にどういったアクションをするのかなど、そういうところを経験則からAIでの予測に切り替えました。そのAIでの分析結果によると、(速度制限を)外しても継続できるということが見えてきたので、このような形にしました。

 (他社では)カウントフリーなどのサービスもありますが、TONEは動画とアプリのダウンロード以外は、完全にフリー(定額)です。その2つだけはチケットを買っていただく形ですが、これは料金の対称性を守らなければならないからです。MVNEをやっていたときや固定をやっていたときもそうですが、ひどいときは1%の人が全体の42%のトラフィックを占有してしまっていたことがあります。ただ、われわれは同じ100円なら100円のサービスをしなければいけない。現在だと動画をいっぱい見たり、アプリをダウンロードしたりするぐらいでしか差が出ないので、そこだけを切り出してチケット制にしました。

―― 速度制限を外したことで、今まで以上に使い過ぎる人が出てくるということはないのでしょうか。

石田氏 TONEの端末でやっているので、そこはコントローラブルです。確かにいろいろなものがつながってくると結構危ないところではありますが、全部コントロールできているのが強みですね。たとえテザリングされても、トラフィックは見分けやすいので、そこは大丈夫です。

―― ただ、テザリングでオンラインストレージからファイルを大量にダウンロードするということもできそうです。今後、テザリングがチケット対象になることもあるのでしょうか。

石田氏 今のところはありません。たとえテザリングで動画を見たとしても、チケットがないとアクセスできないので、(テザリングそのものは)あまり影響がないですね。

―― 使い放題で1000円というのは、MVNOの中でもかなりの安さです。これで、本当にもうかるのでしょうか。ボロもうけという意味ではなく、持続的な事業展開が可能なのかという点ではいかがですか。

石田氏 いろいろなテクノロジーを使っているのが大きいのですが、(49%の株を持つ主要株主の)フリービット自体もMVNEをやっています。これは肉屋さんが焼き肉屋をやっているようなものですね(笑)。卸の部分がそうなっているのと、速度切り替えのシステムも洗練させていて、TONEはアプリごとに自動で速度を切り替えるという繊細な動作を、1日に20回も30回もやっています。これは、(帯域の)細かなコントロールができているということです。

 また、IP電話もSIPのシステムが、NTTと直接接続しており、総務省から直に電話番号をもらっているので、料金があまりかかりません。そういう意味でいうと、フリービットがあるからこそのコスト構造と言えます。

―― とはいえ、1GBのチケットも300円で、割安に感じます。

石田氏 他社の場合は帯となる基本料(1000円のこと)がなく、1GBプランは1GBプランとしてお金を取る形ですが、われわれは1000円をいただいています。それがこういう料金でできる理由です。

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