2月22日、日経 xTECHが「NTTドコモとau、ソフトバンクが打倒LINEで結託」と報じた。同記事では「各社、SMSがMMSに統一される」とあったが、23日の日経本紙では「携帯大手3社のショートメッセージ 動画共有、世界仕様に」として、RCS(Rich Communication Service)になると指摘されていた。その後、筆者の取材で、複数の関係者が、RCS導入の事実を認めた。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2018年2月24日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
「RCSとは何か」をこのメルマガで紹介しようと思ったが、去年8月にすでに書いていたので、まずはその記事を再掲する。
----------
「石川温のスマホ業界新聞」8月26日 vol.241
1.KDDIがメアド「ezweb.ne.jp」を「au.com」にチェンジ
――「今さら」ではなく、次の秘策に向けた布石か
8月22日、KDDIはメールアドレスを来年4月より「ezweb.ne.jp」から「au.com」に変更すると発表した。ネット上では「いまさら、メールなんて使わない」と失笑のような反応であった。
確かにキャリアメールの利用頻度は下がっており、このタイミングでau.comに変える意味はないように思える。しかし、ここ最近の業界の動きを見ていると、KDDIに対して「何か準備しているのではないか」という、うがった見方をしたくなる。
そもそも、KDDIはau.comというドメインをすでに2013〜14年ごろに取得している。当時も、メアドをau.comに変える検討がされたようだが、ローンチ直前になってお蔵入りになったようだ。
だが、2017年になって、まずKDDIのサイトがau.comというドメインに生まれ変わった。そして、来年春には、キャリアメールがau.comに変更となる。
あえて、このタイミングでドメインを変えてくるということは、ひょっとするとメール関連サービスの大幅刷新を準備している可能性が考えられる。
実はいま、世界的なキャリアの動きとして、GSMAを中心にSMSの進化版である「RCS(Rich Communication Service)」の導入が進みつつある。グーグルがRCSを標準的に採用し、「Android メッセンジャー」として、Androidの標準アプリにもなっている。
RCSになることで、メッセンジャーアプリのように吹き出しがでるかたちでメッセージのやりとりができるようになる。Facebookメッセンジャーのように相手が書き込んでいる様子も確認することができる。
複数デバイスでの受信が可能になり、チャットボットとして、会話型でサービスや情報を提供するということもできるようになるのだ。
この秋リリースとなるiOS11からは、ユーザー間で金銭のやり取りが可能になるとされている。RCSベースのAndroidメッセンジャーであれば、同様のこともできるようになるとされる。
iMessageの利便性が上がる一方、Android側だけが機能的に劣るというのは許されない。となると、キャリア側としても、RCSに対応して、Androidメッセンジャーの機能強化を図っても不思議ではない。
キャリアとしても、単にキャリアメールやSMSとしての連絡手段ではなく、チャットボットへ展開し、au IDと組み合わせ、情報提供や課金などと組み合わせれば、さらなるビジネス展開が可能となる。特に課金はキャリアが最も得意とするところだ。
RCSと組み合わせることで、課金はもっと便利で使いやすくなり、結果、手数料収入の増大も期待できる。
個人的な予想に過ぎないが、もしかするとKDDIはメアドのau.comの導入に合わせて、SMSをRCS対応させ、メッセージ関連のサービスを強化してくるのではないか、という気がしてならない。
RCSについては、KDDIだけではなく、NTTドコモやソフトバンクも着手している。果たして、3社一斉に導入されるのか、それとも、どこかが出し抜くのか。
いずれにしてもSMSが大幅進化することも考慮すると、「キャリアが提供するサービスは終わっている」という早計な見方は辞めたほうがいいのかもしれない。
----------
まさに、RCSを3社で一斉に導入する流れになったようだ。
「打倒LINE」になるかは微妙なところだが、仕事相手であれば「LINEのアカウントは知らないが、携帯電話番号は知っている」という人も多い。そうした相手にファイルや長文メッセージを送れるのは意外と便利かもしれない。もはや、音声通話定額の料金プランも当たり前になっているだけに、RCSで通話料金が無料というのもあり得そうだ。
報道では4月に導入とあるが、これがまた個人的には実に興味深いタイミングと言える。
KDDIは、4月からezweb.ne.jpからau.comにドメインを変更する。4月のKDDIといえば、田中孝司社長から高橋誠新社長にバトンタッチされる。高橋誠新社長といえば、2007年にGoogleと提携し、au oneメールにGmailの機能を取り込み「100年分のメールを保存できる」とうたっていた。その後、100年メールはわずか6年で幕を閉じてしまった。
高橋誠新社長とメールの新サービスは切っても切れない関係になりそうで、高橋誠新社長が新しいau.comメッセージサービスをどのように語るのかが、いまから注目だ。
© DWANGO Co., Ltd.