では、iPhone 12 ProとMagSafe充電器で実際の充電速度をチェックしましょう。
充電環境ですが、USB PD対応充電器としてApple製「20W USB-C 充電アダプタ」と、他社製の「Anker PowerPort III 65W Pod」を用意しました。設置方法は、このテストまでにMagSafe充電器の充電速度は温度に左右されるという結果を得ており、MagSafe充電器を普通に下に敷いて置くと充電に3時間半ほどかかります。これを避けるため、室温18℃の屋内で放熱しやすいようMagSafe充電器を上にして充電しました。
比較用に、iPhone 12シリーズにも付属する「USB-C - Ligntningケーブル」とUSB PD対応充電器を利用した、最大20Wの急速充電もチェックしました。
充電結果ですが、MagSafe充電器のワイヤレス充電(最大15W)は約1時間で50%。90%充電に2時間以上かかります。フル充電は約3時間で、MagSafe充電器を下にして置くより約30分短くなりました。
それでも、約27分で50%充電、1時間で90%近く充電できる有線の急速充電(最大20W)と比べると、実質2倍の速度差があります。
iPhone 12 Pro充電速度ですが、どの充電方法も50%までは高速で、50〜90%の間は少しずつ充電速度が遅くなり、90〜100%は一律で約40分かかります。なので、急な充電を想定する場合は、50%や90%あたりの充電時間が有用な情報となります。
では、MagSafe充電器のワイヤレス充電は最大15W対応、有線の急速充電は最大20W充電対応で1.3倍ほどしか差がないのに、実際の充電速度はなぜ2倍も違うのか。充電中のiPhone 12 ProとMagSafe充電器の動作を含め見ていきましょう。
充電が遅い理由としてまず挙げられるのは、電磁誘導で電力を供給するワイヤレス充電の充電効率の悪さです。直接電力を供給する有線の充電と比べて電力ロスが出やすい。電力ロスによりMagSafe充電器やiPhoneの本体温度が上昇すると、熱でバッテリーの劣化を招くので、MagSafe充電器からの供給電力を抑えるという仕組みです。そもそも、MagSafe充電器で最大15Wの電力を供給するために、出力20W以上のUSB PD充電器が必要な時点でも効率の悪さは理解できるでしょう。
実際の充電時の動作を見ると、MagSafe充電器が最大の電力で動作するのは、充電開始後にiPhoneが起動した跡の5分程度でした。この間はUSB PDの充電器から約18Wの電力がMagSafe充電器に供給され、最大15Wに近い電力で充電できたものと思われます。
ですが、充電を続けるとMagSafe充電器の周りが38℃以上に上昇。供給電力は11〜4W(9V/1.2〜0.5A)の間を上下します。MagSafe充電器が最大15Wでも、実際には多くの時間、11〜4Wより少ない電力でしか充電できなかったことになります。
一方、有線の急速充電も本体が熱くなりますが、バッテリー残量50%になるまでは約18Wの電力が安定供給され素早く充電できました。ちなみに、最大20Wの電力が必要とされるのは、約18Wで充電中にiPhone 12 Proの画面を表示するなど負荷がかかったときぐらいです。
とはいえ、このMagSafe充電器。4400円もするのに充電速度が遅いという結果で終わってしまってはあまりに残念です。そこで、もう少しテストすることにしました。
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