au(KDDIと沖縄セルラー電話)が5Gで用いる電波には、28GHz帯の「ミリ波」、3.7帯の「Sub-6」、そしてau 4G LTEで用いている帯域を5G NR(5Gの通信規格)に転用した「NR化」の3種類がある。これらの電波の“使い分け”は、エリア構築において重要な要素の1つとなる。
周波数の高い電波は、従来は通信に使われることが少なかったこともあり、帯域幅を広げやすく、結果として通信速度も引き上げやすい。しかし、電波の直進性が高く、衰えやすい上に透過しにくいため、建物や起伏の多い場所のエリア化には不向きだ。
逆に、周波数の低い電波は回り込みやすく、衰えにくく透過しやすいため。広い範囲や建物の多い場所のエリア化に適している。しかし、他の通信に使われることも多いため、使える帯域幅が狭く、結果として通信速度を引き上げにくい。
端的にまとめると、通信速度が求められる場所や人やデバイスが密集しやすい場所はSub-6やミリ波で、通信できる場所を広く確保することを重視すべき場所ではNR化した帯域でエリアを構築する、という使い分けが理想といえる。
基地局のアンテナを設置する際には、周波数の高低を問わず“見通し”が良い場所に置くことが理想ではある。しかし先述のように、高い周波数帯の電波は、は建物や起伏が障害となりうるため、利用者により近い場所にも基地局(アンテナ)を設置することで品質を高めている。
Sub-6で用いる帯域のうち、3.7GHz帯は別の困難も抱えている。
この帯域は「宇宙無線(衛星)通信」でも使われている。具体的には、海外の衛星放送(国際放送)で用いられることが多い。そのため、3.7GHz帯の5G基地局を宇宙無線通信の地球局(地球側の送受信設備)の近くに設置すると、相互に干渉してしまう。
そのため、3.7GHz帯の基地局を設置する場合は、事前に既存の免許人(地球局の運用者)と交渉が必要なこともある。その上で、干渉対策を施さなければならない。
干渉対策は、主に基地局アンテナから発する電波の「出力(強さ)」「指向(方向)」「チルト角(角度)」を調整することで実施する。宇宙無線通信への干渉を避けつつ、5G通信のパフォーマンスをできる限り発揮できるように調整するのは、エリア設計者の“腕”の見せ所でもある。
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