この不満の大きさは、バルミューダに対する期待の高さの表れの裏返しといってもいいだろう。同じIT機器でも、スマートフォンより汎用性が低く、絞り込んだ機能で勝負できる分野はある。例えば、フィーチャーフォンはその1つ。寺尾氏は「スマートフォンという便利なものにくぎ付けになりすぎている」と語っていたが、そうであれば、より機能をそぎ落とした電話があってもいい。デジタルフォトフレームやスマートスピーカーのような製品も、バルミューダらしさを発揮しやすいかもしれない。
バルミューダはBALMUDA Phoneの開発にあたり、IT機器に特化した新ブランドのBALMUDA Technologiesを立ち上げているが、スマートフォンはあくまで同ブランドにとって第1弾の製品。第2弾以降の製品は「タブレットかもしれないし、今までになかったデバイスかもしれないが開発は進めている」(同)といい、今後の展開は期待して見守りたい。
もっとも、バルミューダ自身も、第1弾のスマートフォンだけで競合他社と肩を並べる存在になるとは考えていないことはうかがえる。バルミューダのファンに向けたスマートフォンを、既存のモデルと同じ尺度で評価するのは少々無粋かもしれない。実際、バルミューダはスマートフォンへの参入を表明した際に、売上高を27億円上方修正している。これを本体価格の10万4800円で割ると、年末までに販売する端末のおおよその台数が2万5000台程度だと分かる。
ソフトバンクがいくらで調達しているかは不明だが、キャリアはスマートフォンの販売で大きな利益を上げていないため、バルミューダの販売価格を大きく下回る調達価格が設定されているわけではなさそうだ。こうした事情を踏まえると、年末までに3万台前後の販売を見込んでいることが分かる。キャリアが販売するスマートフォンとして、この台数はニッチと呼べるレベル。話題性の大きさに反し、販売台数目標は現実的だ。
ソフトバンクが自社のショップ全2300店で在庫を持ち、家電量販店などの併売店でも販売すれば、1店舗あたり10台に満たない台数で目標は達成できる。
しかもキャリア版については、ソフトバンクに納入した段階で売上が立つ。ビジネス的な観点では、ソフトバンクの採用が決まり、発売できた時点で一定の成功を収めていたというわけだ。京セラが端末を製造しているのも、キャリアに納入するための布石と見ていいだろう。寺尾氏は自社を「整列できない、列からはみ出してしまうバルミューダ」と評していたが、その言葉とは裏腹に、BALMUDA Phoneのビジネスモデルは手堅くまとめていることがうかがえる。
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