米Orbicが日本上陸、2万円台からのスマホやタブレットを展開 参入のきっかけは“コロナ禍”(2/2 ページ)

» 2023年06月01日 21時00分 公開
[金子麟太郎ITmedia]
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なぜOrbicが日本市場への上陸を果たしたのか

 Orbicは2006年にニューヨークで創業。米ニューヨークに本社を構え、プエルトリコやインド、台湾、中国、オーストラリア、日本、ドイツ、イギリスと世界中に拠点を持つ。日本に投入したスマホ、タブレット、イヤフォン、クラウドサービスの他にノートPCやモバイルWi-Fiルーターも手掛ける。

Orbic オルビックジャパン Orbicの概要

 そんなOrbicがなぜ日本市場への参入を果たしたのか。2020年までモトローラ・モビリティ・ジャパンの代表取締役社長を務め、日本のモバイル端末市場に深い知見を持つ、Japan Orbic社長で米Orbicエグゼクティブ・バイスプレジデントセールス&オペレーションズを担当するダニー・アダモポウロス氏が、日本市場への上陸理由や市場背景を語った。

Orbic オルビックジャパン Japan Orbic社長で米Orbicエグゼクティブ・バイスプレジデントセールス&オペレーションズを担当するダニー・アダモポウロス氏

 米通信大手のVerizon(ベライゾン・コミュニケーションズ)などに端末を納入しているOrbicはSamsung Electronics、Apple、Motorolaに次いで4番目にVerizonでのラインアップが多いメーカーで、これまでに15機種が採用された。2019年、Verizonへの納入を皮切りに米国の通信事業者であるT-MobileやUS Cellularの他、プエルトリコ、オーストラリア、ニュージーランド、インドと海外展開を加速してきた。

Orbic オルビックジャパン Verizonを中心に世界の通信事業者との付き合いがある

 そんなOrbicがなぜ日本市場への参入を決めたのか。ダニー氏は「どの市場で事業を拡大すればいいのか、上級幹部の一員としてさまざまな分析を行った。技術的な背景や消費者のセグメントなどを調査し、日本が適した環境であることが分かった」とこれまでの経緯を話す。

 「市場調査を続ける中で変革となったのがコロナだった」とダニー氏は振り返る。コロナ禍においては、人の生活だけでなく、モバイル端末の使われ方が変わったという。「日本はこの2、3年の間にスマートフォンやタブレット、通信サービスで5Gへの移行が進んだが、半導体不足や高齢化社会などが昨今の課題となっている」と日本市場の現状を語る。

Orbic オルビックジャパン 半導体不足や高齢化社会などが課題となっており、モバイル市場への影響は少なからずあるという

 さらに、ダニー氏はここ数年での日本市場の変化に「価格高騰」「端末の割引額」を挙げる。

 特にここ数年においては円安基調で部材調達でのコストが端末の販売価格に反映され、結果として過去に比べて大幅な値上がりとなり、ハイエンドモデルを中心に20万円を超えるのが当たり前になった。

 また、過度な割引やユーザーを囲い込んで契約させることなどの改善を目的として、総務省が2019年10月に「改正電気通信事業法」を施行。通信事業者が回線と端末をセットで売る場合の割引上限額2万2000円とした。そのため、大手通信事業者を中心に端末価格を2万円から3万円とする中国メーカー、OPPOやXiaomiなどに製造を委託し、割引後の実質負担額が0円に近くなるようにした。

 その結果、日本メーカーのシャープやFCNTなども低価格モデルをNTTドコモやKDDIに納入したが、コストに見合わず、苦しむメーカーもあった。そんな市場背景を踏まえ、京セラが汎用(はんよう)的な個人向け携帯電話事業の撤退を発表し、FCNTとその親会社であるRENOWAホールディング、グループ会社のジャパン・イーエム・ソリューションズ(JEMS)が民事再生手続きを開始。事実上、携帯電話事業からの撤退を余儀なくされた。

 ダニー氏はこうした日本市場の厳しさに理解を示す。「他社に関してわれわれが直接コメントできない」としつつも、「多くの日本のメーカーが消費者の意向と懸け離れているのではないか」と指摘。その上で「コロナ禍でより日常的にモバイル端末を使う機会が格段に増えているが、手ごろな価格で必要最低限の機能に絞った商品が少ない」と話す。

 日本市場への参入を見据えたOrbicはエンドユーザーがモバイル端末の何に期待し、それに対してOrbicとしてどのように応えられるのかを示すチェックリストを作成したという。日常生活に必要な機能を備え、手ごろな価格を実現しながら、昨今、当たり前となりつつあるオンラインでの行政手続きや、SNS、YouTubeなどの動画コンテンツ視聴が行える――そんな端末が求められていると判断した。

Orbic オルビックジャパン Orbicが日本市場への参入を踏まえ、独自に作成したチェックリスト

 ダニー氏は「日本のメーカーが減ったことについては、われわれとしてはチャンスと捉え、空いた穴を埋めるべく日本市場で戦っていく」との意気込みを述べ、日本市場にいま必要とされる「手ごろな価格で必要最低限の機能に絞った端末を取りそろえた」と話した。

端末は自社設計、ODM端末にブランド名を冠しているわけではない

 ここまでお伝えしたように、市場背景やニーズを把握し、日本市場への上陸を果たしたOrbic。自社で端末を設計していることもアピールポイントの1つとなっている。ダニー氏は「ODMによって製造された端末に、自社ブランドの名を冠したシールを貼っているだけではない」と強調する。開発拠点を米国、台湾、インドに持つOrbicはソフトウェアの開発をインドで、生産をインドと中国で行っており、「全てOrbicの社員が関わっている」という。

Orbic オルビックジャパン 生産拠点の1つであるインド(SMT)

 Orbicの創業者CEOであるマイク・ナル―ラ氏の元に、スマートフォンをはじめとする、モバイル端末業界で製品設計、評価からサプライチェーンマネージメント、販売戦略、リバースロジスティクスまで各分野で数十年以上の経験を持つ、通信業界のプロフェッショナルたちが集結し、“本当に作りたかった端末”を開発、製造しているのもアピールポイントの1つという。その経験や技術は新製品の開発を担う若い世代にも引き継がれているという。

 製品設計から生産、輸送に至るまでのエコシステムについて、ダニー氏は「一貫した品質を保つことに寄与する」と話し、端末の製造ラインの映像を日本上陸会見で披露した。ダニー氏はわずか数秒から数分程度の映像とともにインドで製造した、ミリ波対応のスマホ「Myra 5G」をVerizon向けに納入していることにも触れ、これまでの実績を武器に安定的な製品供給をアピールした。

Orbic オルビックジャパン 製品設計から生産、輸送に至るまでのエコシステムに関する資料

 ただ、先にも触れたように日本市場へは5Gではなく、まずは4G端末を投入。5G対応スマホやフィーチャーフォンについては「投入の可能性はあるが、6月1日時点で何も決まったことはない」との回答にとどめた。

日本での販売やサポートの体制を整える

 Japan Orbicは日本での製品展開に伴い、日本語のWebサイトを開設した。米国ではURLに「US」と入るが、日本語ページは「jp」となる。Twitterアカウント「@OrbicJapan」と、Instagramアカウント「@orbic_jp」も新たに設けた。製品に関する内容やアップデートなどを発信していく。

Orbic オルビックジャパン Japan Orbicビジネス・ディベロップメント・マネージャの島田日登美氏

 Japan Orbicビジネス・ディベロップメント・マネージャの島田日登美氏は「Orbicは若者もいるので、今後さらに製品を作っていきたい」と意気込む。製品のサポートについて島田氏は購入から12カ月のメーカー保証を用意すると明かした。カスタマーサポートと修理センターを日本向けに設置し、日本のユーザーの要求に応える考えだ。

 製品のブランディングや宣伝については、ダニー氏のゆるキャラ「Danny忍者」を用いて、「Orbicブランドの認知、訴求に努める」(島田氏)としている。

Orbic オルビックジャパン
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