―― Xiaomi 13T、13T Proの発売に合わせて、渋谷でポップアップスペースを開きました。その意図を教えてください。
大沼氏 日本に来てまだ3年、4年というところですが、その中でいろいろと試してみようというのが1つです。ブランド認知はまだまだですが、こういったお店をやったとき、お客さまからどのような声をいただけるのか。安達がやっている「Xiaomiモノづくり研究所」も含め、いろいろなチャレンジをしています。そういったことをやりながら、日本でどうあるべきかを選択していきたいと考えています。
―― 今後もああいった体験スペースはやっていくのでしょうか。
大沼氏 やりたいなと思っています。
―― 常設の店舗はいかがですか。
安達氏 あったらいいなというお声はたくさんいただいています。
大沼氏 ただ、そこまではまだ考えていません。香港や台湾、北京にはすごい数のSKUがお店の中にあり、それを日本に持ってくるにはコンプライアンスもしっかりしなければなりません。ただ単に持ってくればいいというものではなく、日本法人としてしっかりやるのがミッションだと思っています。
―― なるほど。確かに海外と比べると、まだ商品数が足りないのでお店をやってもスカスカになってしまうかもしれませんね。
安達氏 はい。一方で、ポップアップスペースにオンラインでしか販売していなかったものを置いたら、「こんな大きさだったのか」といった声や、「これがあったらいい」という声もいただきました。「思ったよりも商品ラインアップが多い」と言っていた方もいます。そういった声をいただいているので、一歩ずつ議論をしていきたいと考えています。
大沼氏 あのラインアップの中に、テレビがあったのはよかったですね(笑)。
安達氏 テレビは大きさもありますし、発光するので存在感もありますからね。
―― ここまで言及がありませんでしたが、秋冬モデルとしてRedmi 12 5Gも販売しています。このモデルにはどういった役割があるのでしょうか。
安達氏 われわれの論理で言うと、一番お求めやすい5Gモデルです。スマホは生活の一部になっているので、必要以上に高機能ではなくてもご満足する方がいらっしゃるのは事実です。弊社が日本に参入した当初からKDDIに採用していただけたのも、5Gの戦略的なモデルでしたし、日本向けにカスタマイズした「Redmi Note 10 JE」も足かけ2年ほど販売し、たくさんのお客さまにご愛用いただけています。こういった商品の後継にふさわしいものを、しっかり進化した形でお届けしたいというのがRedmi 12 5Gを発売した理由です。
大沼氏 一言で言えば、コスパです。ハイエンドのコスパとエントリーのコスパに違いはありますが、こんな機能でこの価格なのかというのが1つのポイントになります。そのわれわれの考えは事業者にもオープンマーケットにも届いていますが、2年以上たつと、やはりそれなりにモデルチェンジをしなければなりません。
安達氏 オープンマーケットモデルだけですが、メモリ8GB、ストレージ256GBのモデルを用意しています。今はユーザーの買い替えサイクルが延びているので、メモリやストレージの大きさは魅力になるということでご用意させていただきました。容量だけを考えると、この値段はありえないと思います。ものによっては、10万円を超えているようなスマホでもストレージが128GBしかないことがありますからね。これも、グローバルのスケールでお求めやすい価格を実現した例になります。
―― 最後に、大沼さんは9月にXiaomi Japanの社長に就任されたばかりですが、どのような役割を期待されているのでしょうか。
大沼氏 初代社長のスティーブン(・ワン氏)はものすごく行動的で、立ち上げをしっかりやってくれました。ただ、今の日本市場はキャリア市場が90%以上を占めています。その中で日本人の役割は何かというと、やはり既に関係をしっかり持っていることです。これを1から作るのは大変ですから。そのリレーション構築を省くという意味もあり、私を採用したのだと思います。スティーブンも長くやってきたので、1回現地の人にやらせてみようという判断をしたのではないでしょうか。
キャリアとのビジネスだけでなく、日本には日本の商流や習慣、文化などもあります。大切なのは、お客さまにどう届けるか。Xiaomi Japanには日本人も中国人もいますが、お互いが違うことを認めつつ、共通の話題でベクトルを合わせていくということを徐々にやっています。
日本市場で徐々に存在感を高めているXiaomiだが、大沼氏が語っていたように、まだまだ認知度は不足している。メーカー別シェアを見ても、依然として「その他」グループからは脱していない。グローバルでSamsungやAppleといった“ツートップ”を追うポジションにつけていることを踏まえると、まだ実力を十分発揮できているとはいいがたい。
一方で、Xiaomi 13TシリーズやXiaomi TVの投入などで、そのラインアップは着実に広げている。キャリアとの連携も、以前より密接になっていることがうかがえた。ハイエンドモデルで実質24円(現在は1年で実質12円)のような打ち出し方ができたのも、もともとコストパフォーマンスが高いからこそ。2023年の秋冬は記録以上に記憶に残る販売方法を取れたといえる。日本での体制も強化しているため、今後の伸びにも期待できそうだ。
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