今回の発表で異例だったのは、AQUOS R9がキャリア/オープン市場向けモデルであり、グローバルを意識したモデルでもあることだ。「商品開発の段階からかなりグローバルで売ることを意識している」(篠宮氏)というAQUOS R9。発表会の説明は販売国の内容が最初だったように、シャープが「展開」についてもこれまで以上に力を入れていることがうかがえる。
これまではシャープが新商品を発表してからグローバルで展開するまでにタイムラグがあったが、「できるだけ早くグローバル展開していきたい」(小林氏)という考えから、グローバル展開の同時発表に至ったという。
理由について、小林氏は「日本以外で販売したグローバルの販売台数が、前年比に比べて倍増している」ことを挙げる。販売国については、これまでの日本、台湾、インドに加え、シンガポールが決まっているという。篠宮氏は「最初にかなり覚悟を決めてやらなければ設計上難しいところはあるが、グローバルスタンダードで受け入れられる仕様とすることを前提に、当初から目標を決めて製品を企画、設計した」と語る。
一方で気になるのは「pro」の存在だ。シャープは2023年、AQUOS R8(ドコモ向けモデルは12万4850円)だけでなく、その上位モデルとなるAQUOS R8 pro(一括価格はドコモ向けモデルが20万9000円で、ソフトバンク向けモデルが15万5520円)も投入していたが、中江氏は「proシリーズはやめてない」とし、小林氏が「今期は投入しない」と補足した。
投入か否かについては「為替などの経済状況を見て判断している」(小林氏)そうだ。加えて、「お客さまが購入できる(手を出せる)金額」(同氏)に限度があることから、シャープとしては毎年、ハイエンドモデルを2モデルに分ける発想を維持しづらいのだろう。
円安の影響や性能競争の激化によるコスト増大が端末価格に反映されやすくなっている他、スマートフォンの買い換えサイクルが4年と長寿化している現状、短いサイクルでproモデルが絶対に必要か? と問われると、誰もが首を縦に振れないはずだ。AQUOS R9は昨今のハイエンドスマホとしては安価といえる10万円前後の価格を実現したが、“proなし”がどう影響するかは気になるところだ。
小林氏は「総合的に考える必要があるなと思うし、(世に送り出す)タイミングもあるので、しっかりよく考えてから出していきたい」としている。
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