私たちが海外に渡航する際に必要な「パスポート(旅券)」は、原則として外務省が居住する都道府県を通して交付します。その手続き窓口の状況は都道府県によって大きな差があり、一部または全ての市町村に再委託することで市役所や町村役場で手続きできるようにしている所もあれば、都道府県が指定する数カ所の「パスポート(旅券)センターに出向かないといけない所もあります。
そんな中、外務省と都道府県は順次「マイナポータル」を通してパスポートの交付申請を受け付けるサービスを整備してきましたが、2025年3月27日から全都道府県において全ての申請をマイナポータルを通して行えるようになりました。ちょうど、私のパスポートも更新可能な時期にさしかかったので、マイナポータルを通してパスポートを更新してみました。
この記事は、東京都(23区)に在住する筆者がパスポートを更新する手続きをまとめたものです。他の道府県でも手続きの流れは同様ですが、「申請手数料の支払い」と「パスポートの受け取り方法」については都道府県によって違いがあります。詳細はお住まいの都道府県(市町村に再委託している場合は市町村)のパスポートに関するWebサイトを確認するか、窓口に問い合わせてください。
日本のパスポートに関する手続きは「旅券法」と関連する政令によって定められています。3月27日、同法が改正されたことで全ての都道府県においてマイナポータルを通して以下の手続きが行えるようになりました。
「あれ、増補(査証ページの追加)手続きは?」と思った人もいるかもしれませんが、今回の旅券法改正によってパスポートの増補手続きは廃止されました。3月27日以降にパスポートの査証(ビザ)ページが足りなくなった場合は「切り替え申請」で対応してください。なお、査証ページが足りなくなった(残り3ページ以下になった)ことを理由に、有効期限が1年以上あるパスポートを切り替える場合は「残存有効期間同一旅券」が発行されます(手数料が割安になります)。
パスポートに関する各種手続きと受け取りは、原則として住民票登録のある市区町村が属する都道府県(再委託している場合は市町村、以下同)の窓口で行う必要があります。ただし、一定の要件を満たすと一時的に居住している都道府県の窓口で手続きを行う「居所申請」も可能です。
マイナポータルを使ったオンライン申請では、以下のいずれかの条件に当てはまる場合のみ居所申請できます。
他の理由(海外からの一時帰国、船員の寄港など)による居所申請は、オンライン申請できないので注意しましょう。
先述の旅券法改正で、パスポートの発行手続きにかかる手数料も改正されました。
手数料が「都道府県納付分」と「国庫納付分」に分かれるのは従来通りですが、5年以内に「未交付失効」(※1)があった場合の発行手数料が割り増しされることになりました。また、マイナポータル経由で申請すると手数料の都道府県納付分が一律で400円引きとなる制度も導入されました。
(※1)交付日から6カ月以内に受け取らなかった場合、新規発給/更新パスポートは無効になる
現行の割引前手数料は以下の通りです(都道府県納付分と国庫納付分の合算)。
改正前と比べると、通常発給では300円の値上げとなっています。ただし、マイナポータル経由で申請すると400円値引きされるので、トータルで100円の値下げとなる計算です。
また、マイナポータル経由で申請した場合は手数料をクレジットカードまたはデビットカードによるオンライン決済でも支払えます。利用できるブランドはVisa/Mastercard/JCB/American Express/Diners Clubで、「3Dセキュア2.0」(オンラインでの本人確認)に対応するカードが必要です。決済は受け取り時に行われます(登録時は有効性確認のみ)。
ただし、クレジットカード/デビットカードでの支払いは都道府県によって対応状況が異なり、対応している都道府県でもパスポートの受け取り箇所によっては利用できない場合があります。例えば東京都の場合、受け取り箇所を「島しょ部の町村役場」にするとオンライン決済に対応できません。オンライン決済ができない場合は、従来通り受け取り時に現金で手数料を支払う必要があります。
他のマイナポータルの手続きと同様に、パスポートに関する手続きを行う端末はWindows PC/Mac、あるいはスマートフォンで構いません。Windows PC/Macで手続きをする場合は、マイナンバーカードを読み取れるスマートフォン(参考リンク)またはWindows PC/Macに接続できるICカードリーダー(参考リンク)を用意する必要があります。スマホを使う場合は、自身でマイナンバーカードを読み取れるものが必要です。
手続き時には、手元にマイナンバーカード(個人番号カード)の原本と有効なパスポートの原本(切り替え/記載事項の変更時)も用意してください。Androidスマートフォンで「スマホ用電子証明書」でマイナポータルにログインしている場合は、カード原本を使って再ログインするように促されます。これは戸籍のフリガナの確認/申請と同じく、手続き中にスマホ用電子証明書にはない情報(券面事項入力補助アプリなど)を利用するためです。
パスポートを新規発行する場合、本来は申請日の6カ月以内に発行された戸籍謄本、または戸籍全部事項証明書が必要ですが、マイナポータル経由で申請する場合は「戸籍電子証明書」を使うので提出不要です。戸籍謄本や全部事項証明書を取得するための出費も浮かせられます。
マイナポータルからパスポートに関する手続きを行う場合、新規発行/切り替えしたパスポートに添える写真や署名はPC/Macまたはスマホからアップロードすることになります。
写真については、写真店あるいは証明写真機で撮影したデータはもちろん、スマホなどで“自撮り”したものでも構いません(申請途中で撮影することもできます)。ただし、パスポートに使う写真には厳格な要件があり、自撮りであっても要件への合致が求められます。
署名(自署)については、白い紙に書いたものをスマホなどで撮って添付すればOKです。ただし、こちらも陰が入らないようにするなど、撮影時に注意を要します。
写真や署名の要件は、外務省のWebサイトで確認できます。手続きを始める前に必ず確認しておきましょう。
マイナポータルによるパスポートの申請手続きは15歳未満でも可能ですが、15歳未満は本人による申請はできないようになっています。
15歳未満の人の「法定代理人」(通常は両親)が、マイナポータルで15歳未満の子どもに対する「代理人サービス」を利用している場合、これを利用することで法定代理人が代わりにパスポートの申請手続きを行えます。
代理人サービスを利用するにはマイナポータルで事前に手続きが必要なので注意してください。
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