「おじさん構文」「おばさん構文」に若者が違和感を覚える理由 テキストのやりとりで大切なことは?

» 2025年07月09日 10時41分 公開
[鈴木朋子ITmedia]

 若年層とのコミュニケーションでギャップを感じたことがあるという人は多いのではないでしょうか。その1つが、デジタルツールを使ったコミュニケーションでしょう。仕事でもプライベートでも、テキストを使ったコミュニケーションが浸透してきています。

 NTTモバイル社会研究所の調査によると、友人とのコミュニケーションで最も多く使う手段は「LINEでのメッセージ」が全年代で7割弱とのこと。若い人ほどLINEを使うイメージですが、全年齢での基盤になっていることが分かります。

 また、日常会話の手段としても、「テキスト」「音声通話」「直接会って伝える」の中で「テキスト」が最も多く、76.5%を占めています。これほどテキストを使って交流することが当たり前になってきているのです。

テキスト音声 友人と日常会話をする際に最も多く使う手段は、どの年代もテキストが最多だった(出典:NTT社会モバイル研究所)

 テキストのコミュニケーションでは、相手の表情や口調が分からないまま会話をするため、文章からさまざまな情報を読み取らなければなりません。その際、年代ごとに受け止め方が異なるため、食い違いが生まれてしまうのです。

LINE初期に生まれた「おじさん構文」

 世代間ギャップの代表的なものが、「おじさん構文」です。おじさん構文が話題になり始めたのは、2016年頃でした。当時は、若い女性がおじさんから受け取るLINEの特徴を指していました。やがて女子高生が「おじさんLINEごっこ」を始め、大ブームになりました。

 おじさんLINEごっことは、おじさん構文を使って友人同士でLINEを送り合うものです。筆者も当時見せてもらいましたが、「キモーい」と言いながら、誰が一番おじさんらしい文章を作成できるかを競っていました。

 おじさん構文には、相手を気遣うようなそぶりで食事に誘うなど、下心が感じられるケースもあります。また、「ナンチャッテ」や「〇〇ちゃんと会いたいナ」と片仮名を多用するのも特徴とされています。また、主に女性に向けて「今日の昼はラーメンでした」「残業中です」など、日記のようなLINEを送ってくることも多く、「俺通信」と呼ばれることもあります。

 おじさん構文が有名になったため、最近では典型的なおじさん構文を使う人は減ってきていると思いますが、「俺通信」はいまだ健在ですね。

おじさん構文 おじさん構文の例(筆者作成)

 一方、おばさんがつづる「おばさん構文」も話題になり、女性誌などでおばさん構文についての記事が組まれています。

 おばさん構文は、文章を装飾したい気持ちから顔文字や絵文字が多用されます。「車」と書いた後に、車の絵文字を入れるなど、不要な絵文字も入るため、少々読みづらいこともあります。また、「ぉはよう」など母音を小文字にする人や、改行を多めにする人もいます。

 内容としては、「体に気を付けてね」「暖かくして寝てね」など、母親のように体調を気遣う一言が入ることもあるようです。うれしく思う人もいると思いますが、職場の部下にあたる人にとっては、おせっかいに感じるかもしれません。

おじさん構文 おばさん構文の例(筆者作成)

 それぞれの特徴を挙げましたが、おじさん構文・おばさん構文は以下の点が共通しています。

  • LINEなのに長文
  • 句読点がしっかり入っている
  • 顔文字、絵文字が多い

 こうした点が若者にとっては違和感を覚えるようです。それはなぜなのでしょうか。

世代間で異なるコミュニケーションの手法

 大人世代と若者は、慣れ親しんでいるデバイスが異なります。大人世代はPCやケータイを使い込んできたため、メールやショートメールの感覚でLINEなどのチャットも使います。一方、若者はケータイやスマホのメッセージから入り、LINEをメインとしてコミュニケーションしてきた人が多いでしょう。

 大人が親しんだメールの基本は、あいさつから始まる長文です。文章をつづるのですから、句読点も正しく入れます。最後は締めのあいさつを入れるなど、起承転結を付けます。

 また、ケータイ(いわゆるガラケー)時代に愛用していた顔文字や絵文字(汗をかいている顔文字、赤いビックリマークなど)をよく使います。先日、NTTドコモが「ドコモ絵文字」の終了を発表しましたが、「iモード」時代に絵文字を使えるようになった喜びを覚えている人もいるのではないでしょうか。文面を飾りたい気持ちがあるのです。

おじさん構文 2025年6月以降に発売の機種から終了するドコモ絵文字。画像はLINE STOREから引用。LINE絵文字として購入してLINE上で使うことはできる

 一方の若者は、チャットでの交流に慣れ親しんでいます。若者はLINEを文節ごとに区切り、複数回に分けてメッセージを送ってきます。大人世代からすると、「用件はまとめて」と言いたくなる動作ですが、若者同士では普通なのです。また、効率を重視するため、必要なはずの読点が入っていないこともあります。

おじさん構文 若者のLINEの例(筆者作成)

 これは、若者が「書き言葉」ではなく、「打ち言葉」を使っているからです。

 「打ち言葉」とは、「話し言葉の要素を多く含む新しい書き言葉」を指します。これは、主にネットを介してキーを打つなどして伝え合う時に使われるものです。「打ち言葉」については、文化庁が2018年3月2日に発表した「『分かり合うための言語コミュニケーション(報告)』について」で詳細に説明されています。

 例えば、書き言葉では欠けてしまう表情や口調を顔文字と絵文字で補完したり、「おけ(OK)」「り(了解)」など、短文で通用する文章を多用したりします。正しい日本語ではないですが、入力する際に役立ちます。

 とはいえ、チャットツールの利用が広がっている今、LINE以外でもツールの使い方が議論されています。

 例えば、「〇〇さん、こんにちは」とチャットが来たものの、こちらが応答するまで続きのメッセージが来ないことがあります。相手としては、こちらの都合のいい時間にチャットで話をしましょうと呼びかけているのかもしれませんが、テキストでのやりとりなら非同期でもいいのではと思う人もいるでしょう。

 また、懇切丁寧に説明したメッセージに、返事ではなく「いいね」ボタンで返答されてがっかりした、といった話も聞きます。

 職場の場合はなおさら、世代の違いが気になると思います。あるテレビ番組が提唱したことで広まった「マルハラ」は、文末に「。」が付いていると怖いと感じるというものでした。「『マルハラ』は実在するのか」という調査では、実在するかどうか断定できないとのことでした。

 私が行ったインタビューでは、大人からのメッセージに「。」が付いていても何とも思わないが、普段やりとりしている友達が急に「。」を付けてくると怒っているのかなと感じると聞きました。ハラスメントとなると、上司にあたる大人世代には気になりますが、若者も正しく判断してくれていると思います。

お互いを思いやるコミュニケーションを

 日本にiPhoneが上陸したのは2008年のこと。約17年がたちましたが、大人世代にとっては約20年なんてあっという間です。慣れ親しんだコミュニケーションの方法でLINEを使っているのだと思いますが、無理をして変える必要はないと思います。若者も「大人は文章長め」として受け止めてくれるでしょう。

 ただし、相手の迷惑になるような内容や頻度については、世代の違いで片付けてはいけません。相手が不快な思いをしないようなコミュニケーションを心掛けたいものですね。

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