KDDIと沖縄セルラーが、ネットワークを分析する調査会社、Opensignalが10月28日に発表した日本市場の「モバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート」にて、全18部門のうち、11部門で1位を獲得。国内キャリアでは最多受賞となった。KDDIは2024年10月、2025年4月の調査結果に続き、3期連続で最多受賞を達成した。
KDDIの5Gサービスでは、3.7GHz帯と4GHz帯のSub6における基地局数が4.1万局に上り、これは2025年7月25日時点で総務省無線局等情報検索で閲覧できる免許数のうち、国内キャリアでは最多となる。
KDDIは2024年11月に、全国のSub6エリアで5G SA(スタンドアロン)を利用できるよう設定を完了している。5G SAはコア設備や基地局を含めて全て5Gで運用するため、4Gの設備に左右されることなく、より高速かつ低遅延の通信を利用できるとされている。
今回、5G SAの調査対象となったキャリアはauとソフトバンクのみ。ドコモも5G SAは提供しているが、対象エリアが一部施設やスポットにとどまっているため、調査対象からは外れたようだ。楽天モバイルは5G SAを提供しておらず、2026年に提供予定としている。
ソフトバンクはドコモよりは広範囲で5G SAを展開しているようだが、5Gエリアの全域には至っておらず、エリアマップではなく住所一覧で5G SAの対応エリアを公表している。
今回の調査でKDDIは、5G通信の体感品質を評価する「5Gエクスペリアンス」部門で、ビデオ、ライブ・ビデオ、ゲーム、音声アプリの4部門で単独1位を獲得した。これは、Sub6エリア全域が5G SAに対応していることが功を奏したものと思われる。
通信品質向上に寄与している5G SAだが、5G SAならではのサービス提供には至っていない。KDDIは、5G SA契約者を対象に、混雑時でも専用の無線リソースを利用して快適に5G通信を利用可能にする「au 5G Fast Lane」を2025年6月から提供しているが、このサービス自体は5G SAの特性を活用したものではない。
5G SAで可能になる技術の代表例として、ユーザーの用途に合わせてネットワークを仮想的に分割してさまざまな通信サービスを提供する「ネットワークスライシング」が挙がる。KDDIも複数メーカーと実証実験を行っている。例えば、2022年にはソニーと、ゲームストリーミングや映像配信の利用を想定し、複数ネットワークスライスを使い分けた同時通信する技術実証を発表(関連記事)。2023年にはサムスン電子と、5G SAでサービス品質を保証する、SLA(Service Level Agreement)保証型ネットワークスライシングを商用基地局で実験した(関連記事)。しかしこれらはまだ商用展開には至っていない。
KDDIの松田浩路社長は、KDDI SUMMIT基調講演後のグループインタビューで、5G SAならではサービスについて「お客さんにとって『何が(メリットか)』というのが伝わらないといけない」と話す。au 5G Fast Laneは5G SA時代を見越して始めたサービスだといい、衛星通信のStarlinkも同様の考え方であることを示す。Starlinkは災害時だけでなく、フェスなどの混雑するイベントでも活用している。KDDIのネットワークは現在のところ「混雑時も快適な通信」を強みとしているようだ。
一方でコンテンツも、通信とは切っても切り離せない関係にある。3Gや4Gでも経験してきたように、通信サービスの進化に従ってコンテンツも成熟していく。「エリアが広いからといって、それ専用のものが出てきていないのは事実」と松田氏が認める通り、コンテンツとセットで訴求しないとSA自体のよさが伝わりにくい。au 5G Fast Laneのように混雑時につながりやすいことは大きなメリットだが、目に見えにくく、伝わりにくい面もある。
衛星通信についてはドコモ、ソフトバンク、楽天モバイルも準備を進めており、auの優位性がどこまで続くかは未知数だが、「どの業界でも模倣は起こりうるので、それが同質化する前に先手を打つ」と松田氏は述べる。
通信品質を向上させた後は、どのようなサービスで差別化を図れるかが課題といえる。松田氏がモットーとして掲げる「先手必勝」で、どのような手を打つのか期待したい。
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