実のところ、メモリ原価高騰の影響をもろに受けるのはハイエンドスマホよりも、ミッドレンジの廉価機種だ。「低コスト」を売りにする機種でもメモリとストレージは必須であり、ここでの原価高騰は少ない利益率を圧迫することになる。
既に登場した機種を見ても、機能を削って価格を維持するか、機能を維持したまま値上げをするかの瀬戸際に立たされている状況だ。
また、値上げに踏み切るとしても、4〜5万円のスマホで「5000円の値上げ」はかなり大きな上げ幅となる。Nothingのように通信キャリアなどと提携して販路を強化することで、コスト圧縮を試みているところもある。
このスマホ高騰の波が直撃したのはいわゆる「1円スマホ」だ。総務省の値引き規制をふまえ、回線契約時に1円(本体価格2万2000円)で提供できる価格設定のスマホだが、メモリ高騰と為替変動を踏まえると原価高騰は避けられない。
例えば、ZTEがY!mobile向けに展開する「nubia S 5G」は2万1996円と2万2000円以内に収めていたが、後継機のnubia S2は2万6640円と値上がりしたことで1円スマホの対象から外れている。
一方、楽天モバイル専売の「nubia S2R」は2万2001円に収めたものの、カメラを単眼にしたりストレージ容量を64GBに落としたりして、何とか1円スマホの枠組みに収めている状況だ。
このような状況が続けば、薄利多売の1円スマホがそもそも成り立たなくなる可能性が高く、お得に使えるスマートフォンの継続が困難になるのではないかと考える。
こうした状況下でも、端末の値上げを見送っている例外的なメーカーが中国にある。Huaweiだ。その理由はシンプルで、米国の輸出規制によって構築せざるを得なかった独自サプライチェーンが、図らずもグローバルのメモリ争奪戦から同社を切り離しているからと考えられる。
Huaweiのスマートフォンに搭載される半導体は、中国メーカーのものが大半を占める。HiSilicon設計の独自SoC「麒麟(Kirin)」はSMICが製造し、メモリは長鑫存儲技術(CXMT)、NANDフラッシュは制裁対象ゆえに国際市場と距離を置く長江存儲(YMTC)から調達する体制とされている。
大手のSamsung Semiconductor、SK Hynix、MicronはいずれもHuaweiへの供給に制限がかかっているため、Huaweiのスマートフォンはこれら3社が主役を演じるメモリ争奪戦の外側に置かれているのだ。
加えて、フラグシップのMate・Puraシリーズで培ったブランド力による高い利益率が、コスト上昇の吸収余力を生んでいる。米国の制裁という逆境が結果として防壁になったという、皮肉な構図だ。
スマートフォンの値上げ傾向は、全ての価格帯において今後2年ほどは続くと予想される。メモリ高騰だけでなく、現在の水準で円安が維持されればその流れはより確実なものになる。
さらに見通しを暗くするのが、次世代フラグシップSoCの製造プロセスだ。2026年後半から2027年にかけて投入が見込まれるSnapdragon 8シリーズやDimensityの次世代チップは、TSMCの2nmプロセスへの移行が予定されている。Appleのプロセッサもこれに追従することが予想される。
最先端プロセスへの移行は製造コストの大幅な上昇を伴うため、これを搭載するハイエンドスマートフォンの価格は、メモリ高騰とは別の次元でさらに押し上げられる可能性が高い。
メモリ高騰、円安情勢、新型プロセッサのコスト増。これらを全て織り込んだAppleやサムスンの次世代フラグシップが30万円に迫り、折りたたみ端末ではそれを超える水準になる可能性も、もはや非現実的とは言い切れない。
気になるのは、スマホの買い時だ。筆者は、ストレージ容量の多い大容量モデルを「お得に手に入れたい」なら早めに検討することを勧めたい。特に512GBや1TBといったラインは今後登場する機種でも高止まりが予想され、既存機種の値上げも現実に起きている以上、今の価格で購入できる期間は限られてくる。
メモリ高騰、円安、次世代プロセッサへの移行という三重苦が重なる今、スマートフォンの「適正価格」に対する感覚をアップデートしておく必要がありそうだ。
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。
スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
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