パルムッターさんは上海で「Netbook」をアピールするIntel Developer Forum 上海 2008

» 2008年04月02日 21時30分 公開
[長浜和也,ITmedia]

まず、NettopとNetbookありき

 IDF上海のキーノートスピーチは、同じ日に正式発表された「Centrino Atom」がメインテーマとなった。Atomと聞くと、どうしても「Mobile Internet Device」の超小型デバイスが最初に思い浮かぶが、最近ではDiamondville(開発コード名)が想定する、用途をネットワークサービスの利用にある程度限定させた低価格の「Nettop」「Netbook」にも注目が集まりつつある。

 IDF上海でIntelは、MIDとしてのAtomをアピールするのか、それともDiamondvilleとしてのAtomを重視するのか。初日冒頭のキーノートスピーチでは、パトリック・ゲルシンガー氏(米Intel 上級副社長 兼 デジタルエンタープライズグループ ジェネラルマネージャー)によるエンタープライズシステム向けのトップエンドコンピューティングの講演が最初に行われ、その次に登場したデビット・パルムッター氏(米Intel 上級副社長 兼 モビリティグループ ジェネラルマネージャー)は、「DiamondvilleとしてのCentrino Atom」を紹介した。

 世界全体で、年ごとにダブルスコアの勢いで成長してるノートPC市場だが、インターネットで提供されるサービスの利用者が増えるにつれて、多くのユーザーが、簡単にアクセスできるデバイスを望むようになるとパルムッター氏は主張する。

 その需要に応えるのが、エントリーレンジのAtomプラットフォーム、開発コード名「Diamondvile」がターゲットとする低価格レンジのデスクトップPC「Nettop」とノートPC「Netbook」だ。この主張は、2008年に入ってCeBITあたりからIntelが述べてきたものだが、搭載するプラットフォームが正式に発表されたことで、製品のイメージがより具体的になった(すでにIDF上海の開催前日からNettopとNetbookが展示されている)。

明らかに異なるNetbookと既存ノートPC

 パルムッター氏は、既存のノートPCとCentrino Atomを搭載した小型デバイス「MID」、そしてNetbookの違いについて、画面サイズと導入されるOS、そして主な利用シーンから説明する。

 それによると、既存のノートPCは画面サイズが12インチ以上、OSはWindowsが導入され、主にオフィスワークで求められるアプリケーションを使うようになる。一方、その対極にあるMIDは、画面サイズが4.5インチから6インチの間、OSはWindows XP、もしくはLinuxが導入され、主に情報端末として使われることが想定されている。

 既存のノートPCとMIDをつなぐポジションとして描かれているのがNetbookで、画面サイズは10インチ以下、Linux、もしくはWindows(キーノートで示されたスライドにはXP、Vistaの記載はなかった)で運用され、メールやWebブラウジングなど、インターネットで提供されるサービス利用を中心に使われることになる。

 インターネット利用が中心というNetbookのコンセプトはデスクトップのNettopでも同様だ。どちらも2008年第2四半期に出荷されるDiamondvilleを搭載し、コストを抑えるために最適化されたフォームファクタを採用することが求められている。

既存のノートPCとMID、そして、Netbookの切り分けは画面サイズとOS、主な利用目的で決まる。キーノートスピーチで示されたスライドにUMPCが含まれていなかったが、これには何かしらの意味があるのだろうか
NettopとNetbookはデスクトップとノートPCという見た目の違いはあるが、そのコンセプトと構成は非常に近いものがある

 パルムッター氏の講演では、Nettop向けマザーボードの概要も紹介された。そこでは、ファンを用いたアクティブな冷却機構は採用せず、CPUソケットも省略することで、通常のマザーボードより20〜30%のコスト削減を可能にしているという。このコストカットとともに、システム全体の設計でも電源ユニットの最適化や冷却ファンの廃止、HDDからSSDへの移行、コストを軽減できるOSの選択などで、PC全体の低価格化が実現できるとパルムッター氏は主張した。

キーノートで示されたNettop向けマザーボードのデザイン方針には、コストを抑えるための項目が並ぶ(別記事で紹介したIntelのマザーはファンクーラーを載せていたが)。CPUソケットの省略という項目は自作PCユーザーにとって懸案事項となるだろう
電源ユニットの最適化、システムファンの廃止、コストを優先したOSの選択と、価格を抑える努力はシステム全体に及ぶ。ただ、HDDからSSDにするとコストが有利になるには、もう少し時間がかかりそうだ

「パフォーマンスに期待」のCentrino 2は6月登場

 パルムッター氏は、続けて2008年6月に登場する予定に“Montevina”こと「Centrino 2」の説明に入った。会場では世界各地のユーザーに聞いた(とされている)ノートPCに関するインタビューを紹介、そのなかでは、「もっとコンパクトに」「ワイドサイズのディスプレイを」「どこでもインターネットにアクセスしたい」「速さが一番重要」(と語っていたのは日本人)「セキュリティーをパスワードよりも使いやすいものに」などが挙げられていた。

 パルムッター氏はそれらの要求がCentrino 2で実現できると述べた上で、パフォーマンスの向上について特に説明を加え、SSDの導入によるストレージアクセスの高速化や、HDクラスに十分耐えうるHD再生環境の提供、ベンチマークテストの「3DMark」で結果が従来の2倍近く向上する3Dグラフィックス環境などをデモを交えながら紹介した。

2008年の6月にはCentrino 2が登場する。パフォーマンスの向上など、Centrino 2が“Wow”な理由が紹介された

ユーザーが既存のノートPCに望むもの。パフォーマンス、データプロテクション、バッテリーライフといったあたりが上位に並ぶ。Centrino 2ではここに挙がっている多くの問題を解決できると、パルムッター氏は説明する
“Montevina”こと「Centrino 2」のパフォーマンスを紹介するデモンストレーションでは、45ナノメートルプロセスルールを導入した“新世代Core 2 Duo”とSSDを組み合わせたシステムと従来のCore 2 DuoとHDDを組み合わせたシステムとで、HDコンテンツのエンコード処理速度を競わせた

 なお、キーノートスピーチでは、このあと、アナンド・チャンドラシーカ氏(米Intel 上級副社長 兼 ウルトラモビリティグループ ジェネラルマネージャー)による「MIDとしてのCentrino Atom」も時間をかけて紹介されている。この話題は別記事で改めて紹介したい。

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