世界初、「Tigris」を搭載したMSIノートPCを披露

» 2009年08月10日 21時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]

ノートPCの求められるのはメールとWebだけじゃない

 米AMD プロダクトマーケティング担当副社長のレスリー・ソボン氏は、AMDのモバイルプラットフォームを決定する要素として、AMDが2008年に調査したノートPCユーザーのプロファイルを紹介した。それによると、ノートPCを使う利用する場面としてユーザーが挙げているのは、デジタル画像の編集や管理、映画、テレビ、ビデオなどのデジタルコンテンツの視聴といったデジタルコンテンツの利用であった。この結果をふまえて、ソボン氏は、PCユーザーは、メールやWebブラウジングだけでは満足せず、デジタルコンテンツを快適に利用できる性能をノートPCに求めていると主張した。

AMDが2008年に調査したノートPCの用途と期待する利用方法では、デジタルコンテンツに対するニーズが高まっていることが分かったという(写真=左)。デジタルコンテンツの利用では、PCで視聴する需要が従来の家電より高いという結果も示された(写真=右)

 このような、ユーザー調査の結果に基づいて、AMDのノートPCプラットフォームの開発は、メールとWebだけでなく、エンターテイメントにおける性能も重視しているという。現在、AMDのノートPC向けプラットフォームは「Ultrathin Notebook」「Low Power Notebook」「Low Power Desktops」という3つのセグメントに分けて用意されている。

 ソボン氏は、2009年10月に登場する予定で「Low Power Notebook」の次世代モバイルプラットフォームになる「Tigris」について説明を行い、Tigrisを構成するCPUでは45ナノメートルプロセスルールが導入され、チップセットに統合されるグラフィックスコアではDirectX 10.1に対応することを紹介した。ソボン氏が示したPumaとTigrisとの比較では、QuickTimeを使ったiPod対応ファイル変換の処理速度が18%速くなることやバッテリー駆動時間が47分長くなったことなどが記載されている。

 ソボン氏は、AMDのノートPC向けプラットフォーム戦略について「AMDのモバイルプラットフォームはUltrathinから通常タイプのノートPCに最適化している」と述べ、Netbookにはフォーカスしていないことを改めてアピールしている。説明会では“Neo”ベースのノートPCと、インテルの“Atom”“CULV”ベースのノートPCとで目的別の使い勝手や個別の性能を比較したが、Atomに対しては、テキストベースのコミュニケーションやバッテリー駆動時間は“Neo”と互角であるものの、Webブラウジングやデジタルコンテンツの利用、マルチタスク処理やゲームなどでは“Neo”ベースのノートPCが優れているほか、CULVに対しては、多くの使用目的や個別の性能が互角であるものの、製品価格は“Neo”ベースが抑えられると説明している。

Tigrisの主要な機能(写真=左)と、“Puma”と比較した性能の違い(写真=右)

会場にはTigrisを採用したMSIのノートPCが展示されていた(写真=左)。デバイスマネージャーを開いたところ、CPUはデュアルコアの「Turion II M640」、グラフィックスコアは「Mobirity Radeon HD 4200」であることが確認できた(写真=右)。展示されていたMSIのTigrisノートで測定したWindows Experience Index(写真=右)

ノートPCで導入した技術をAIOに最適化

 Ultrathin Notebookでは、第2世代でデュアルコアの“Turion Neo X2”“Athlon Neo X2”を搭載するほか、チップセットも第1世代のAMD M680からAMD M780Gチップセットに変更する(それに伴なって、そこに統合されるグラフィックスコアもRadeon HD 3200に変わった)。 ソボン氏は、第2世代の特徴として、デュアルコアCPUの性能、DirectX 10への対応などのほかに、TDPを18ワットに引き下げることなどで、バッテリー駆動時間が45分長くなることや、チップセットに統合されたRadeon HD 3200が対応するUVDによってBlu-ray収録のHD動画の再生も可能になることを訴えた。

 すでに、Hewlett-Packardから第2世代を採用した「HP Pavilion Notebook PC dv2」が7月に発表されており、PC USERでも「デュアルコア化した新型「HP Pavilion Notebook PC dv2」の性能は?」でその性能を紹介している。

ソボン氏が示した第2世代のUltrathin Notebook向けプラットフォームの構成(写真=左)と特徴(写真=右)。Ultrathin Notebookの第1世代は「Yukon」という開発コード名で呼ばれていており、第2世代は同じく「Congo」と呼ばれていた

 ソボン氏が「ノートPCで開発した技術をほかのプラットフォームでも最適化して利用している」と述べるように、AMDでは、小型、省電力、ファンレスといった要素が求められる液晶一体型PC(All In One:AIO)にもノートPCプラットフォームの技術を適用している。AMDが説明で資料資料では、AIOに搭載されるCPUとして、TDP45ワットの「Athlon II X4 energy effient」「Athlon II X3 energy effient」や、TDP25ワットの「Athlon II X2 ultra low power」「Athlon II X2 energy effient」「Athlon II ultra low power」が記載されていたほか、チップセットでもAMD M880Gという名称が確認された。

AMDでは、ノートPC向けのプラットフォームで導入した技術をAIOに最適化している。AIOの価格は500ドルから1000ドルの間に設定され(写真=左)、省電力タイプのAthlon IIが搭載されるという(写真=右)

ユーザーの実態にあったバッテリー駆動時間を

 ソボン氏は、ノートPCなどで使われているバッテリー駆動時間の指標にも言及した。日本では、JEITAが規定したバッテリー駆動時間が標準指標として利用されている。この方法では、JEITAが用意した動画ファイルを連続して再生できた時間と、アイドル状態で駆動していた時間を足して2で割った値をノートPCのバッテリー駆動時間として規定しているが、ソボン氏は、「ユーザーは、ノートPCを使う目的を果たしたらすぐに電源を落とす」と、アイドル状態より負荷をかけている状態におけるバッテリー駆動時間を重視する考えを示した。その上で、携帯電話は、バッテリー駆動時間を連続通話時間と待ち受け時間を分けて表示しているのに合わせて、ノートPCでも、負荷をかけた状態の駆動時間である「ACTIVE TIME」とアイドル状態の駆動時間である「RESTING TIME」を併記することを提唱した。

 ソボン氏によると、AMDも参加しているBAPCoの委員会で、この考えを協議する予定で、MobileMarkに変わる新しいベンチマークテストの開発を行う予定であるという。作業は、メンバー間の交渉や調整なども含めてこれから取り掛かる段階で、完成までには開発着手から少なくとも2年は必要だろうと述べている。

“CULV”ベースのノートPCと“Neo”ベースのノートPCとでバッテリー駆動時間を測定すると、アイドル状態で不利な結果になる“Neo”も、負荷をかけた状態では“CULV”と互角になる(写真=左)。AMDでは、ユーザーの利用実態に合ったバッテリー駆動時間の表示を提唱している。説明会ではアイドル状態と負荷をかけた状態とで測定したデータを併記する新しいロゴマークも紹介された(写真=右)

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