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“ECO”で“高画質”な23型フルHD液晶ディスプレイ――「FlexScan EV2333W-H」を試す人感センサー、DisplayPort搭載(3/3 ページ)

» 2009年08月20日 11時00分 公開
[林利明(撮影:矢野渉),ITmedia]
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VAパネル+10ビットLUTで表示品質にも注力

 EV2333W-HとEV2023W-Hは、10ビットのルックアップテーブル(LUT)による内部ガンマ補正機能を搭載している。この効果は高く、sRGBモードで黒白の無段階グラデーションを表示しても、不自然な段差(トーンジャンプ)はほとんどなく、色かぶりも気にならない。シャドウ寄りの階調で若干のつぶれが確認できるものの、これは大半の液晶ディスプレイが抱える現象で、色再現性を重視する用途でない限り、不満は出ないはずだ。

 液晶パネルはVA方式なので、TN方式より格段に視野角が広く、実用上はまず問題ないが、厳密に見れば、画面に角度が付いたときの色度変化はそれなりに発生する。画面の正面に対して上下左右から眺めると、彩度とコントラストが落ちて白っぽくなるので、フォトレタッチのような色を扱う作業時は、操作する画面上の場所を正面から見るようにすればよいだろう。

 階調表現の優秀さは、エックスライトのキャリブレーター「i1Pro」(製品パッケージとしては「i1Basic」)での計測結果からも確認できる。PCのRGB出力と画面上のRGB出力のグラフがほぼ「1:1」の直線になっており、RGB個別のグラフでもズレがほとんどない。つまり、かなり正確な階調と発色を実現しているということだ。

EV2333W-Hの表示例。左からモノクログラデーション、カラーグラデーション、角度を付けて画面を見た様子

EV2333W-Hの発色性能を、キャリブレーターのi1Proで計測。sRGBモードでは実測の色温度が6600Kで、sRGB規格の6500Kにかなり近い(写真=左)。RGB信号の入出力グラフは高精度だ。PCからの入力(input)に対して、画面上の出力(output)が中間調で微妙に高くなっており、これは中間調が少し明るく表示されることを意味するが、問題視するほどではない。RGB個別グラフの直線との一致度は高く、トーンジャンプや特定階調での色かぶりが発生しにくい。もう1つ、i1 ProとEV2333W-HのCustomモードを使った詳細なキャリブレーションは、sRGBモードの結果を上回る精度になった(写真=右)。色温度は目標値の6500Kになり、輝度の目標値(120カンデラ/平方メートル)もほぼ正確である。RGB入出力グラフの品質も高くなり、中間調がわずかに明るくなる傾向が解消されたほか、RGB個別グラフの直線との一致度が高くなった。sRGBモードの結果と比較して、階調の表現力、発色の正確性が向上したということだ

こちらは2023W-Hの表示例。発色の傾向はEV2333W-Hにかなり近い

EV2023W-Hの発色性能をi1 Proで計測した。sRGBモードの色温度は6400Kなので問題ないが、EV2333W-Hと比べてRGB入出力グラフのブレが少し大きい(写真=左)。暗部から中間調にかけて、明るめに表示される傾向だ。一方、EV2023W-HをCustomモードに変更して詳細なキャリブレーションを行うと、発色性能が向上した(写真=右)。色温度は目標値と実測値が一致し、輝度の目標値と実測値もほぼ一致といってよいだろう。RGB入出力グラフでは、暗部から中間調が少し明るくなる傾向は完全には消えなかったが、改善は見られる。RGB個別グラフの直線が整ったことで、発色の正確性は増している

ディスプレイキャリブレーションの基本キット「i1Basic」

「i1Basic」

 エックスライトの「i1Basic」は、測色器の「i1Pro」が付属し、ディスプレイのキャリブレーションに機能を特化したパッケージ。名前の通り、i1シリーズの中ではエントリーモデルにあたるが、i1Proはスペクトル方式を採用した測色器で、フィルター方式のエントリーモデル「i1Display 2」に比べて、検出精度がかなり高い。より高度なカラーマネジメント環境を構築したい場合は、必要に応じてソフトウェアの機能を拡張することも可能だ。

 日本国内での販売は、2009年4月から加賀電子が行っており、クリエイター向けオンラインショップ「KGDirect」や「CGiN」で購入できる。両サイトでのi1Basicの価格は16万9800円だ。i1シリーズの製品紹介サイトはこちら

 なお、i1Proはナナオのカラーマネジメント対応ディスプレイ「ColorEdge」シリーズと組み合わせることで、ナナオ独自のソフト「ColorNavigator 5」による高精度なハードウェアキャリブレーションにも対応する。



EV2333W-Hのオーバードライブは強弱を設定可能

EV2333W-Hのオーバードライブ機能は強度が選択できる

 EV2333W-HとEV2023W-Hは、黒→白→黒の応答速度が25msと遅いため、動画鑑賞やゲームにはあまり向かないが、前述の通りEV2333W-Hは中間調の応答速度を高めるオーバードライブ回路を搭載している。OSDメニューにて、オーバードライブの強度と有効/無効を選択することが可能だ。選択肢は、強/普通/オフの3通りがある。

 「オフ」だと残像感が割とはっきり伝わってくるので、映像鑑賞やゲーム、モーションCGといった用途では「普通」か「強」がよいだろう。「普通」と「強」の違いは、一般的な映像鑑賞やゲームならほとんど見分けがつかない。厳密に見れば、「強」だと輪郭の偽色が微妙に確認できる。これはオーバードライブによるオーバーシュート/アンダーシュートの影響だろう。強度が「普通」だと輪郭の偽色は消えるが、「強」と比べて輪郭のシャープさがやや甘くなるようだ。この辺りは、個人の感覚や好みの問題になってくる。

幅広い用途で快適に使える時代に即した液晶ディスプレイ

 EV2333W-HとEV2023W-Hの省エネ機能は賢く、人感センサーを利用したEcoView Senseの自動パワーセーブは、かなり高精度だ。今回試用した限りでは、センサーの誤作動(画面の前にユーザーがいてPCを操作している状態でパワーセーブになってしまうなど)はまず見られなかった。使っていないときにキッチリと自動パワーセーブが可能で、この小さな積み重ねがCO2や電気代の低減につながる。何台もの液晶ディスプレイを導入するオフィスで特に効果的なのはもちろん、家庭や個人であっても有用だ。

 機能と性能もきちんと押さえられている。インタフェースは複数の入力系統があり、縦位置表示に対応し、柔軟な高さ調節が可能なスタンド、豊富な色調整が行えるOSDメニュー、3通りのスケーリング機能など、実用的な機能が充実しているのは高評価だ。VAパネルと10ビットLUTのおかげで画質も安定しており、sRGBモードにおける色温度とRGB入出力グラフの正確さは、このクラスの汎用液晶ディスプレイとしてはトップクラスではないだろうか。

 最近は液晶ディスプレイの低価格化が著しく、画面サイズや解像度だけで製品を見ると、EV2333W-HやEV2023W-Hが少々割高なのは否めない。しかし、これらは機能と画質の両面で、単に価格勝負のディスプレイに大きな差を付けており、購入後の省エネや疲れ目軽減を図る機能、5年間保証まで考慮すると、トータルコストはむしろ安く思える。環境性能まで意識して製品選びをするならば、必ず検討してほしい液晶ディスプレイだ。

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