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» 2009年08月28日 09時30分 公開

Snow Leopardが切り開く、Macの新時代元には戻れない快適さ(2/2 ページ)

[林信行,ITmedia]
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主要な6つの改善点を総括する

 Snow Leopardは、実に多くの細かなブラシュアップの集合体だが、その中でもいくつか大掛かりな変更が行われた点がある。アップルは大々的に宣伝しているのは次の6つだ。

  • 1.ドックエクスポゼに対応した新ドック
  • 2.Cocoaで作り直された新Finder
  • 3.新しく生まれ変わったQuickTime X
  • 4.大幅に機能強化されたプレビュー
  • 5.JavaScript実行パフォーマンスがあがったSafari 4
  • 6.タッチパネルMacを実現するUniversal Access

 このほかにExchange対応も大きな変更点の1つだ。また、上記以外の主な変更点についても、別の記事を掲載しているのでそちらを読んでほしい(関連記事:これは便利! 「Snow Leopard」を実際に使って感じた新機能“トップ20”)。以下では上に挙げた主要な6ポイントを評価してみたい。

ドックエクスポゼに対応した新ドック

 ドックの改善点は主に2つある。1つは新たに加わったドック・エクスポゼという新機能だ。ドックに表示されている実行中のアプリケーションのアイコンをマウスボタンで長押しすると、そのアプリケーションで開いている全ウィンドウがエクスポゼ状態に移行する。これまでのアプリケーション・エクスポゼと違い、画面の下3分の1ほどのところに線が引かれ、その下にドックに格納してあった(最小化してあった)ウィンドウも一覧表示される。

 書類ファイルなどをアプリケーションアイコンにしばらく重ねる形でも、ドックエクスポゼを呼び出すことができるので、ファイルアイコンや選択データのアプリケーションをまたいだドラッグ移動に非常に便利だ。

 一方、スタック機能も改善された。フォルダの中身を1クリックで一覧表示するStacksだが、これまではファン、グリッドのどのスタック表示モードでも一覧表示できる項目数に限りがあった。Snow Leopardではグリッド表示時にスクロールバーを表示する仕様になったおかげでこの制限がなくなっている。この変更はむしろ「Leopardの時点で実現していて欲しかった機能がやっと実現した」という印象で、PowerPCユーザーのためにも、ぜひLeopardでも対応してほしいところだ。

ドックからエクスポゼを起動できる(画面=左)。Stacksのグリッド表示ではスクロールが可能になった(画面=右)

Cocoaで作り直された新Finder

Cocoaで書き直された新Finder。アイコンをCDほどのサイズまで拡大できる

 新Finderは、見た目こそLeopardのFinderにそっくりだが、実はCocoa技術を使って全面的に書き直されている。それにあわせて最大512×512ドットのアイコンサイズに対応している。Quick Look機能すら呼び出すのが面倒くさい、という人は、Finderでアイコンサイズを調整するだけで、書類の中身がほぼ簡単に確認できる。これにあわせて、Finderのアイコン表示モードでも書類のページめくりやムービーの再生もできるようになった。

 ちなみにPDFアイコンのリフレッシュ速度が1.7倍、JPEGアイコンのリフレッシュが1.4倍など、表示の速度もやや向上している。また、Finderとは直接関係ないが、Time Machine機能を使ったTime Capsuleへのバックアップも1.5倍高速になっている。

新しく生まれ変わったQuickTime X

 再生画面の見た目が大きく変わったQuickTime Xでは、フル画面再生やトリミング編集のほか、iPhone、iPod、AppleTV、コンピュータ、HD480p、HD720p、HD1080pの7種類のフォーマットで書き出す機能が追加されたことから、Snow LeopardからはQuickTime Proが不要になった、という人もいるが、それは誤解だ。

 正確にはQuickTime Playerが、まったく別の再生主体のソフトに生まれ変わったというのが正直なところだ。確かにトリミングや、フォーマット変更書き出しの機能はついたが、ムービーの範囲を選択してコピー&ペーストしたり、字幕を追加したり、ムービーの音声トラックや映像トラックだけを切り出したり、回転させたりといったQuickTime Proの編集機能はアプリケーションのデザイン上、一切使えなくなり、今後こうしたニーズは別のアプリケーションで満たす必要がある。

 これはQuickTime Playerをムービー編集用アプリケーションとして使っていた人には不満が残る点だろう。もっとも、これまでのQuickTime 7が使いたい人は、インストールDVDのオプションインストールから、QuickTime 7(7.6.3)を追加インストールできる(なお、その場合、QuickTime Proのライセンスコードを購入しなくても、すべての機能が利用できる)。

 一方で、ムービー再生ソフトとして活用する人にとっては、再生パフォーマンスも含めてかなり満足度が高い。ただ、これまでQuickTime Playerを起動すると表示されていたコンテンツガイドが表示されなくなったのも、ちょっと寂しい変更点だ。

大幅に強化されたプレビュー

 Snow Leopardで、もう1つ目玉となっているのが大幅に機能強化されたプレビューだ。特にアップルがウリにしているのは、JPEGファイルの表示が1.2倍、PDFが1.5倍というパフォーマンスの向上と、2段組み、3段組みなどでレイアウトされた書類でも、人工知能を使ってきちんと段組みを認識して文字選択ができる点だ。実際、英語だけでなく日本語でも、アップルの宣伝の通り段組みにあわせた文字選択ができた。

 ただし、これは横書きの段組みをしたときだけで、縦書きの場合には、きちんと文字を選択できないことが多い。この点はぜひ今後のアップグレードで対応してほしいところだ。

段組されたレイアウトでもきちんと段組に沿って文字選択ができる(画面=左)。ただし、縦書きでは段組を認識できない場合が多い(画面=右)

 このほかプレビューでは、コンタクトシートビューという、複数ページからなるPDFのサムネイルをウィンドウいっぱいに展開表示するモードが加わったり、スキャナーから画像を取り込む機能が追加された。

 また、PDF校正用のツールバーがウィンドウの下側に表示されるようになった。なぜ下側に表示されるのかは疑問だが、試しに使ってみるとこれが以外と使いやすい。おそらく校正作業は、書類を少しずつスクロールしながら行うので、注釈をいれたい場所は画面の下側に表示されていることが多いからなのかもしれない。

 プレビューでは、もう1つ、画像の拡大/縮小がよりきれいに行えるようになった、という改善点もある。

JavaScript実行パフォーマンスがあがったSafari 4

Safari 4の実行速度がさらに速くなる

 Safariも改善された。Snow Leopardに付属のWebブラウザは、すでにLeopard用としても配布が始まっているSafari 4だが、Snow Leopardで利用した場合は、64ビットモードで動作し、JavaScriptの実行速度が最大50%速くなる。これにより別記事でも書いたが、Google Mapなどの表示がかなり速くなっている。また、Webブラウザの閲覧履歴をカバーフロー表示する、といった操作もかなり快適になった。

 Snow Leopard上のSafariには、もう1つ変更点がある。クラッシュ耐性を高めるために、ブラウザプラグインに実行を独立したスレッドで行うようになった。これまではWebブラウザ内のスレッドとして実行していたため、例えばFlashの再生などがなかなか始まらないと、それに引きずられてブラウザ全体の動作も重くなってしまうことがあった。

 これに対して、Snow LeopardではWebKitPluginAgentという別のプロセスを用意し、そちらで実行しているため、万が一プラグインが原因で表示に手間取っても、そのプラグインの場所が表示されないだけで、Webページのほかの部分は先に描画される。なお、Snow Leoprdでは、こうした安定動作の重視や64ビット動作になったことから、これまでSafariで利用していたプラグインの多くは利用できなくなる。

タッチパネルMacを実現するUniversal Access

 Mac OS Xのすばらしい機能の1つ、Universal Accessも大きく進化した。特に進化したのがiPhone 3GSの目玉ともなっているVoiceOver機能だ。

 Snow Leopard版では、トラックパッドの右上をタップすれば画面右上に表示されている内容が、トラックパッドの左下なら画面左下の要素が選択され、そこに表示されている内容を読み上げてくれる、という機能が加わった。

 視覚障害で画面が見えない人にとっては、ノート型Macの液晶画面は無用の長物だ。このVoice Over機能を使えば、最近巨大化する傾向にあるMacBookファミリーのトラックパッドが、(画面表示のない)タッチパネルに早変わりする。画面上のオブジェクトをタッチする要領で指でタッチしたり、指を滑らせることでそこに表示されている要素をMacが読み上げてくれるので、聴覚を使ったGUI操作ができるのだ。

 また、同じVoiceOver機能を使ってSafariで表示したWebページをMacに読み上げてもらうことも可能になる。これはなかなか画期的な機能だと思うが、なぜかiPhone 3GSのVoice Over機能は、日本語読み上げに対応しているのに、Mac OS X版のVoice Over機能は、英語のみの対応となっている。

 Mac OS Xは、またUSBやBluetoothを使って接続する40種類以上の米国点字ディスプレイ(コンピューター制御で文字列を点字に変換する)を標準でサポートした。1台のMacで複数の点字ディスプレイを制御することも可能で、特別支援学校での利用も期待されているが、こちらも今のところ米国英語専用の機能だ。


 以上、今回のSnow Leopardは一見変わっていないようでいながら、これから先の5年、10年の発展性を考えて、いくつか反感を買うであろう重大な決断も下している。しかし、実際に手にして使い込んでみると、もはや元のLeopardには戻れない快適さを備えたOSであることは間違いない。

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