モバイル向け新Core iシリーズのCPU性能をじっくり調べてみた「VAIO F」2010年春モデル3台で検証(3/4 ページ)

» 2010年01月20日 11時20分 公開
[鈴木雅暢(撮影:矢野渉),ITmedia]

新Core iシリーズのパフォーマンスを3台のノートPCで検証する

 ここからはベンチマークテストの結果から新Core iシリーズ(Arrandale)のパフォーマンスを検証していこう。検証にはCore i5-540M、Core i3-330Mをそれぞれ搭載したVAIO Fシリーズ、比較対象として同じくVAIO FシリーズのCore i7-720QM(Clarksfield)搭載モデルを利用している。各モデルの主なスペックは別表にまとめた。

 今回入手できた機材では、GPUの統一ができなかったが、実際の製品レベルではこのような組み合わせで利用されることも少なくないと思われるので、参考として見てほしい。なお、メモリ速度の違いはCPU内蔵メモリコントローラのスペックを反映したものなので、PC3-10600を利用しているCore i7(Clarksfield)のスコアを割り引いて考える必要はないだろう。

 また、参考までに筆者の手元にあったThinkPad T61(2.25GHz動作のCore 2 Duo T7500/Merom搭載)のスコアも併記している。もともとはWindows Vistaがプリインストールされていた2年以上前の製品だが、ノートPCの買い替えを考えている人は性能アップの目安として見てほしい。

Core i7-720QM搭載のVAIO F(VPCF119FJ/BI)
Core i5-520M搭載のVAIO F(VPCF118FJ/W)
Core i3-330M搭載のVAIO F(VPCF117FJ/W)

Core i7-720QM搭載VAIO F(VPCF119FJ/BI)のデバイスマネージャ

Core i5-520M搭載VAIO F(VPCF118FJ/W)のデバイスマネージャ

Core i3-330M搭載VAIO F(VPCF117FJ/W)のデバイスマネージャ

テストに使用したノートPC
製品名 VAIO F VAIO F VAIO F ThinkPad T61(参考)
モデル名 VPCF119FJ/BI VPCF118FJ/W VPCF117FJ/W 7658-A2I
CPU Core i7-720QM Core i5-520M Core i3-330M Core 2 Duo T7500
CPU動作クロック 1.6GHz 2.4GHz 2.13GHz 2.25GHz
TB最大クロック 2.8GHz 2.93GHz 2.13GHz
チップセット Intel PM55 Express Intel PM55 Express Intel PM55 Express Intel 965G Express
メモリ PC3-10600 4GB(2GB×2) PC3-8500 4GB(2GB×2) PC3-8500 4GB(2GB×2) PC2-6400 4GB(2GB×2)
GPU(グラフィックスメモリ) GeForce GT 330M(1GB) GeForce 310M(512MB) GeForce 310M(512MB) チップセット内蔵
HDD 500GB(5400rpm) 500GB(5400rpm) 500GB(5400rpm) 160GB(5400rpm)
光学ドライブ Blu-ray Discドライブ Blu-ray Discドライブ DVDスーパーマルチドライブ DVDスーパーマルチドライブ
液晶ディスプレイ 16.4型ワイド(1920×1080) Adobe RGBカバー率100% 16.4型ワイド(1920×1080) 16.4型ワイド(1920×1080) 14.1型ワイド(1440×900)
テレビ機能 地上デジタル×2 地上デジタル×2 地上デジタル×2
OS 64ビット版Windows 7 Home Premium 64ビット版Windows 7 Home Premium 64ビット版Windows 7 Home Premium 64ビット版Windows 7 Home Premium

Windows 7のエクスペリエンスインデックスはCore i5が健闘

 まず、Windows 7に標準で搭載されているWindowsエクスペリエンスインデックスの結果だが、CPUはCore i7が7.0に対し、Core i5が6.8、Core i3が6.2となっている。Windowsエクスペリエンスインデックスでは、比較的マルチスレッド/マルチタスクの性能が重視される傾向があることを考えると、特にCore i5のスコアは優秀といえる。

 一方、メモリはCore i7の7.4に比べて、Core i5、Core i3は5.9と、かなり劣るスコアだった。容量は同じなので、PC3-10600とPC3-8500の差、そしてCore i7(Clarksfield)ではCPUダイにメモリコントローラが統合されているのに対し、Core i5/Core i3(Arrandale)ではCPUとQPIでつながれたGPUダイに統合されているぶんのロスが現れたと思われる。いずれにしてもWindows 7を快適に利用できるスコアであるのは間違いない。

Core i7-720QM搭載VAIO Fのスコア
Core i5-520M搭載VAIO Fのスコア

Core i3-330M搭載VAIO Fのスコア
Core 2 Duo T7200搭載ノートPCのスコア(参考)

メモリアクセスは既存のCore i7(Clarksfield)に劣るが、AES-NIは絶大な効果

 次はSisoftのSandra 2010cを実行した結果を見てみよう。多彩なテストが含まれているが、ここではCPU/メモリに関する一部のテストのみピックアップした。テスト結果は下のグラフの通りだ。

Sandra 2010c/CPU Arithmeticのスコア
Sandra 2010c/Cryptographyのスコア
Sandra 2010c/Memory Bandwidthのスコア

 CPU Arithmeticは、基本的な整数演算(Dhrystone)と浮動小数点演算(Whetstone)の性能を見るテストだ。ワークセットが小さく、CPUの外部的要因(メモリ、HDDなど)に左右されずにCPUコア内部の純粋な演算性能を計測できる。

 結果はグレードの序列通りといえるスコアだ。Core 2 Duo T7500と比べると、Core i3は約1.5倍、Core i5は約1.9倍のスコアとなっている。マルチスレッドに最適化されているため、コア数の差やHTの効果が大きく影響していると思われる。また、Core i7とCore i5のスコアを比較すると、整数演算では21%、浮動小数点演算では33%の差が付いた。浮動小数点演算のほうがコア数/同時処理スレッド数の差が出やすい傾向にある。

 Cryptography(暗号処理)のテストでは、新Core iシリーズ(Arrandale)から導入されたAES-NIを新たにサポートしたということで実行してみた。Core i3では省かれているので、この中で対応しているのはCore i5のみだ。結果はCore i5のみがAES256の暗号化(Encryption)/復号化(Decryption)でケタが違う圧倒的なスコアをマークした。

 次のMemory Bandwidthは文字通りメモリ帯域を見るテストだが、Core i7が圧倒的で、Core i5、Core i3は大きく見劣る。Core i7(Clarksfield)がサポートするPC3-10600と、Core i5/Core i3(Arrandale)がサポートするPC3-8500では、理論上のメモリ帯域は25%ほど(どちらもデュアルチャンネルの場合)しかないのに、実測では75%近い差が開いている。

 これはメモリコントローラがCPUダイに統合されているCore i7(Clarkdale)と、CPUダイとは別のGPUダイに統合されているCore i5(Arrandale)の差が出たものだろう。メモリコントローラがチップセットにあるCore 2 Duoは、さらに大幅に低いスコアだ。

高クロック&AES-NIで下克上を見せるCore i5

 Sandra 2010を使った基本性能について簡単に見てきたが、これらのテストはCPUが仕様通りの性能が発揮できているか、理論値との差がどのくらいあるのか、といった確認に近い作業だ。CPUの特性を理解するのには役立つが、実際のアプリケーションにおける優劣とは別物なので、それは個別のアプリケーションで確認していく必要がある。

 とはいっても、現存するすべてのアプリケーションをテストするわけにはいかないので、利便性を考えて用意されているのが、PCMark05やPCMark Vantageといったベンチマークテスト用のプログラムだ。OS標準装備のアプリケーションを中心に利用し、メールの送受信、Webブラウズ、静止画/動画コンテンツの管理、テキスト編集などといった日常的なPCの作業をシミュレートする内容となっている。

 PCMark05では、CPUやメモリなどPCのコンポーネント別に比重の大きなテストをまとめてスコアを出すが、PCMark Vantageでは内容が複数のコンポーネントにまたがるテストが多いため、用途別にスコアを出す。もちろん、これだけですべての利用モデルをカバーできるとはいわないが、ほとんどOS標準の機能を使ってテストするので、基本性能を見るにはかなり有用といえる。

 PCMark05とPCMark Vantageのスコアは下のグラフのようになった。

PCMark05 1.2.0のスコア
PCMark Vantage 1.0.1.0(x64)のスコア
PCMark Vantage/PCMark Test Suitesのスコア

 一世代前のPCMark05はさすがに古いテストなので、多くのテストがシングルスレッドで行われる。スコアを見ると、CPUスコアでCore i5がCore i7を若干ながら上回る下克上が見られる。また、Core 2 Duo T7500もCore i3を上回るスコアを出した。クアッドコアやHTのメリットがあまりない一方で、TBを含めて動作クロックの影響が大きく出ていると思われる。メモリのスコアはSandraの結果ほど大きくはないが、順当な結果だ。

 PCMark05の後継であるPCMark Vantageは、PCMark05よりもハイビジョンコンテンツの扱いやマルチタスクを強く意識した内容にシフトしており、マルチスレッドに最適化されたプログラムも含んでいる。ただし、プログラム単体では2スレッドまでの最適化にとどまるものも多い。

 結果は、総合スコア(PCMark)でまたもCore i5がCore i7を上回る下克上となった。これは、テストにCNG/AES/CBCのデータ暗号化/復号化処理が含まれているためで、同様の処理を含む用途別テストのCommunicationsでもまたスコアが突出している。OS標準の暗号処理APIを使ったテストなので、実用性がないことはないだろうが、実際の利用モデルにおいてこのスコアほど有効なのかについては、まだ分からない部分がある。とりあえず、これはこれで切り分けて考えたほうがよいだろう。

 ほかの用途別テストでは、グレードの序列に順当な差が付いた。GPU性能の効果が大きなGamingは別として、エンコード処理を含むMemoriesやTV and MoviesなどでクアッドコアのCore i7とCore i5/Core i3との差が大きめに出ている。それでもCore i7とCore i5、そしてCore i3も含めて、基本性能の差は意外に少ないといえるかもしれない。

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