一方、GPUダイは従来の45ナノメートルプロセスルールで製造されており、メモリコントローラやPCI ExpressコントローラもこのGPUダイに統合されている。
GPUコアは「Intel HD Graphics」と名付けられており、従来のIntel GM45 Express系チップセットに内蔵されていたGPUコア「Intel GMA 4500MHD」をベースに改良を加えたものだ。描画処理を行うシェーダが10基から12基へと増えているほか、2ストリームの同時デコードへの対応などが加わり、3D描画性能、動画再生機能ともにパワーアップした。なお、GPUコアの動作クロックはモデルよって異なるが、CPUコア同様にTBにより、温度や負荷状況に応じて自動的に動作クロックが可変する。
GPUダイに統合されているメモリコントローラはDDR3-1066(PC3-8500)のデュアルチャンネルアクセスに対応し、メモリ帯域は超低電圧版ではDDR3-800(PC3-6400)までの対応にとどまる。グラフィックスインタフェースとしてPCI Express 2.0コントローラ(16レーン対応)も統合しており、別途外部GPUを接続することも可能だ。
内蔵GPUの出力は、通常はFDI(Intel Flexible Display Interface)というインタフェースからチップセットに送られて出力されるが、デスクトップ向けの新Core iシリーズ(Clarkdale)にはないモバイル向け新Core iシリーズ(Arrandale)のみの機能として、PCI Express x16レーンの代わりに、DisplayPort出力を(FDIとチップセットを経由せず)直接行う機能(eDP:Enbedded DisplayPort)も用意されている。
将来的にノートPC内蔵液晶ディスプレイのDisplayPortによる接続、および液晶の直接駆動が可能となった場合にこれを利用すれば、大幅なチップ削減が可能となる。この場合にはPCI Express x16は無効となり、代わりにDisplayPortとPCI Express x1が有効化される。
新Core iシリーズ(Arrandale)に合わせて、企業向けのIntel QM57 Express/Intel QS57 Express、コンシューマー向けのIntel HM57 Express/Intel HM55 Expressと合計4種類のチップセットもリリースされている。
新Core iシリーズ(Arrandale)では、従来のCore 2システムにおいてチップセットのノースブリッジが扱っていた、メモリコントローラ、GPUコア、外部グラフィックスインタフェース(PCI Expressコントローラ)といった機能がすべてCPUに統合された。
そのため、チップセットといっても実質的にはCore 2システムのサウスブリッジにあたるICH(I/O Controller Hub)に近い機能を備えた、ワンチップのPCH(Platform Controller Hub)で構成され、CPUとは2Gバイト/秒の帯域を持つDMI(Direct Media Interconnect)で接続される。
モバイルCore i7(Clarksfield)とともにリリースされたPM55、ICH9Mも含め、基本的な機能の違いは下図と下表を見てもらいたい。表ではQM57とQS57がまったく同じ機能を持つが、クアッドコアのCore i7(Clarksfield)に対応する前者に対し、対応しない後者という関係となっている。
これら新チップセットに共通する特徴は、CPUに統合されたGPUからのディスプレイ出力を受け取るインタフェース(Intel FDI)と、それを実際にディスプレイに出力するインタフェースを持っていることだ。
ノートPCの液晶ディスプレイはLVDSのインタフェースで出力されるが、これはCPUから直接出力されるのではなく、FDIを経由してチップセットから出力される。FDIはDisplayPortのプロトコルをベースにしたものだが、D/A変換が必要なアナログRGB出力や、HDMIやDVIなど信号振幅の大きなデジタル出力方式にも対応させるため、このようなシステムとなっている。
ちなみに、LVDS出力のサポートはモバイル向けチップセットのみで、デスクトップ向けのH57/H55では省かれている。CPUに統合されたGPU機能を使わないならば、ディスプレイ出力機能は不要なため、FDIを搭載していないPM55と新Core iシリーズ(Arrandale)の組み合わせでも利用可能だ。
モバイル向けチップセットの仕様 | |||||
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モデル名 | QM57/QS57 | HM57 | HM55 | PM55 | ICH9M |
FDIサポート | ○ | ○ | ○ | − | − |
ディスプレイ出力 | LVDS、CRT、DisplayPort、DVI、HDMI、SVDO | LVDS、CRT、DisplayPort、DVI、HDMI、SVDO | LVDS、CRT、DisplayPort、DVI、HDMI、SVDO | − | − |
USB 2.0 | 14ポート | 14ポート | 12ポート | 14ポート | 12ポート |
Serial ATA(3Gbps) | 6ポート | 6ポート | 6ポート | 6ポート | 6ポート |
AHCIサポート | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
RAID 0/1/5/10サポート | ○ | ○ | − | ○ | − |
PCI Express | 8レーン(2.5GT/秒) | 8レーン(2.5GT/秒) | 6レーン(2.5GT/秒) | 8レーン(2.5GT/秒) | 6レーン(2.5GT/秒) |
Intel AMT | ○ | − | − | − | − |
TDP | 3.5W | 3.5W | 3.5W | 3.5W | 2.5W |
消費電力も気になるところだ。各モデルのTDP(熱設計消費電力)は最初の表にも掲載しているが、通常電圧版が35ワット、低電圧版が25ワット、超低電圧版が18ワットとなっている。Core 2 Duo(Penryn)では低電圧版が17ワット、超低電圧版が10ワットだったので一見、上昇しているようだが、新Core iシリーズ(Arrandale)のTDPは、CPUだけでなくGPU、メモリコントローラ、PCI Expressコントローラも含めたTDPである点がポイントだ。
CPU統合のGPU機能を利用するならば、CPUとワンチップ構成チップセットの2チップですみ、そのぶんシステムトータルでのTDPは低くなる。例えば、CULVノートPCでもおなじみのCore 2 Duo SU9400のシステムは、チップセットのGS45+ICH9M-SFFを加えたTDPが24.5ワットになるのに対し、Core i7-640UMならば、HM57(HM55)チップセットを加えるだけで同等機能のシステムとなり、合計のTDPも21.5ワットと低くなる。別表にいくつか代表的な構成例のTDPの合計値をまとめたので、参考にしてほしい。
主な構成別のシステム合計TDP | |||||
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CPU+チップセット+GPUの構成 | CPU | チップセット(ノースブリッジ) | サウスブリッジ | 外部GPU | 合計 |
Core i7-820QM+PM55+GeForce GT 230M | 45W | 3.5W | 0W | 23W | 71.5W |
Core i7-620M+HM55 | 35W | 3.5W | 0W | 0W | 38.5W |
Core i5-540M+HM57+GeForce G210M | 35W | 3.5W | 0W | 14W | 52.5W |
Core i5-540M+HM55 | 35W | 3.5W | 0W | 0W | 38.5W |
Core i7-640UM+HM57 | 18W | 3.5W | 0W | 0W | 21.5W |
Core 2 Extreme QX9300+PM45+ICH9M+GeForce GT 230M | 45W | 7W | 2.5W | 23W | 77.5W |
Core 2 Duo T9900+PM45+ICH9M+GeForce GT 230M | 35W | 7W | 2.5W | 23W | 67.5W |
Core 2 Duo P8800+PM45+ICH9M+GeForce G210M | 25W | 7W | 2.5W | 14W | 48.5W |
Core 2 Duo P8800+GM45+ICH9M | 25W | 12W | 2.5W | 0W | 39.5W |
Core 2 Duo SU9400+GS45+ICH9M-SFF | 10W | 12W | 2.5W | 0W | 24.5W |
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