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» 2010年02月12日 15時00分 公開

開発チームに誕生秘話を聞く:「LOOX U」は、なぜスーツのポケットに入るのか? (3/4)

[前橋豪,ITmedia]

モバイルPCの開発資産が新型LOOX Uをカタチにした

―― 今回、ボディの外観を最初に決めてから製品開発ができたのは、Atom ZなどのPCアーキテクチャが変わっていないことは大きいですか?

小中 そうですね。今までモバイルPCの開発をずっと続けてきた資産があるので、それを生かせるのは大きいです。ここでいう資産とは実際に世に出た製品に限りません。製品化しなかった設計資産や検討資産も多数あります。今回はそれらをフルに活用し、パーツによってはほかのメーカーと協業しながら、開発を進めました。また、製造面では島根富士通にも引き続き協力してもらっています。

飯島 デザインを先に決めたため、最初はこの小さなボディに中身のパーツをどう並べればいいのかという点で苦労しました。バッテリーのセルサイズは固定なので、そこから具体的なフットプリントが見えました。それを基に、通信モジュールやSSD、基板サイズ、といったように各パーツの配置を決めていき、ようやくこのサイズに収めることができたわけです。しかし、後からファンを内蔵することになったので、そこでも苦労することになりました。

 もっとも、苦労したかいあって、サイズと重さをここまでスッキリまとめることができました。これなら、外出するのにPCを持っていくかどうかと悩むことなく、常にカバンにポイッと放り込んで使ってもらえると思います。

SSDはハーフスリムタイプのモジュールを内蔵している

―― CPUやチップセットは継続ですが、SSDにハーフスリムタイプのモジュールを採用しているのが珍しいですね。

小中 このサイズのボディにSSDを内蔵するには、とにかく実装面積が小さいハーフスリムタイプモジュールがいいだろうという判断です。小型のSSDはほかにも存在しますが、ハーフスリムタイプというのは一応標準化された規格なので、今後の展開のしやすさまで考慮して採用しました。

 SSDのインタフェースはSerial ATAですが、もちろんLOOX Uのチップセット(Intel SCH US15W)はSerial ATAのインタフェースを備えていません。そこで、Serial ATAからUltra ATAへの変換アダプタを介してチップセットと接続しています。変換によるロスがあっても、Serial ATAのSSDの容量ラインアップや将来性を考慮して、こうした仕様にしました。

―― 細かいところですが、底面のバッテリーを外すと、SIMスロットとPCI Express Miniスロットが空いているのが気になりました。

小中 これらは海外展開しているワイヤレスWAN搭載モデルで使われているスロットで、現状の国内モデルでは未使用です。今回は従来機のようにFOMA HIGH-SPEED対応モデルを用意していませんが、その代わりとして店頭モデルにも標準でWiMAXモジュール(Intel WiMAX/WiFi Link 5150)を搭載しました。モバイルWiMAXによる高速なモバイル通信を活用してほしいと考えています。

コンパクトボディながら放熱性、静音性、堅牢性にも配慮

ボディ中央の奥に薄型のファンを内蔵している

―― ファンの内蔵は開発途中で決まったそうですが、ファンレス設計はなぜやめたのですか?

飯島 最初はファンレスで発熱のシミュレーションをしたのですが、最大に発熱した状態ではキーボード面が高温になり、ファンがないと社内の品質基準を満たせないと判断しました。実際、さまざまな環境で使われることを考えると、ファンの内蔵によって表面温度はかなり抑えられるので、より安全なシステムといえます。

 また、LOOX Uの場合は底面が薄型のバッテリーなので、発熱しやすい内部パーツからボディ表面までの距離が離れているという利点もあります。利用時には、こうした快適さも味わってもらえると思います。

小中 単純にファンを省くことで、装置が動くか動かないかという問題ではありません。お客様が触れるキーボード面や底面の温度が快適さに直結するため、社内基準においてはかなり低めの温度を設定しています。正直、ファンがなくても装置の表面温度が上がるだけで、動作はするのですが、我々としては表面温度が一定以上に上がらないことが大事なのでファンを入れました。

小林 エアフローに関しては、両側面の通風口をはじめ、ボディのすき間から吸気し、背面に排気します。排気口が背面にある関係で、CPUとチップセットがファンと直線上に並ぶようになっています。バッテリーの裏側にはくぼみがあり、そこから空気が流れて、ファンの効率が上がるようにしているのも細かいポイントです。

益山 開発途中でファンを入れることに決まったので、大丈夫なのかと思いましたが、ボディサイズを大型化することなく、このサイズにファンまで収まったので感心しました。まるで、魔法のようでしたね。

スケルトンモデルの底面とバッテリーを外した状態。標準バッテリーは2セルタイプだが、中央に空気を通すための溝が設けられている

―― 小型軽量のモバイルPCでは、ファン自体も非常に小さなものになりがちで、動作時の騒音が気になることも少なくありません。静音性についてはどのような工夫をされているのでしょうか?

小中 ファンには信号線が4本付いていて、かなり低速から回せるファンを選びました。従来機のファンは電圧の変化に応じて回転数が変わるだけでしたが、今回のファンは回転自体をダイレクトに制御できるようにしました。実際、256段階くらい細かく制御できます。これにより、非常に低い回転数から回して、なるべく騒音や消費電力を抑えられるよう工夫しました。

 また、ACアダプタ接続時とバッテリー駆動時では、ファンの制御モードを変えています。ACアダプタ接続時は充電に伴う発熱もあり、ファンを回転させるようにしていますが、バッテリー駆動時はファンの回転をかなり抑えています。

飯島 ファン自体の細かな制御に加えて、背面側に向かって排気する構造も風切り音の低減に貢献しています。

―― ボディの一新に伴い、堅牢性はどうなりましたか?

飯島 堅牢性については、液晶ディスプレイとタッチパネル用のガラスをボンディングすることで、ある程度確保できました。後は本体側にバッテリー、骨組みとなるマグネシウムのフレーム、キーボードユニットと板を重ねたイメージです。LOOX Uの外装は樹脂製ですが、この設計で剛性をかなり高めることができたと思います。

小中 具体的な数値でいえば、耐200kgfの天面加圧試験をクリアしました。内部の堅牢性評価に関しても、既存のモデルと変らない結果が出ています。カタログに数値は出していませんが、一点加圧などの強度試験も行っているので、ほかのモデルと遜色(そんしょく)ないです。堅牢性で妥協はまったくしていません。

LOOX Uを2枚の板で挟み、その上に小中氏が乗って剛性の高さをアピール
小中氏が乗った後のLOOX Uは、もちろん問題なく起動した

―― これだけ凝ったデザインとスペックの割に、価格は直販モデルで8万9800円、店頭モデルで10万円前後と抑えられている印象を受けます。この価格はかなり苦労したのではないですか?

小林 確かにコスト削減はいろいろとやりました。価格もどちらかといえば、こういう設計だからこの価格帯になったという流れではなく、この価格帯で行くと決めたものでした。もっと高級な仕様も考えられたのですが、価格が上がってしまうと、ユーザー層を広げるのが難しくなります。

 今回は決められた価格帯に収まるように、全体のバランスを取りながら構造や材料を厳選していきました。その過程では、堅牢性を満たしつつ、構造の部分はいくらで作ってほしいなど、厳しい要望もありましたね。

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