NTT東西のフレッツサービスでは複数のISP(もしくはフレッツ網内のサービス)とPPPoEで同時接続(PPPoEマルチセッション)できる。まず、WR8700Nのルータ機能は最大5つのISPの設定を保存し、同時に接続・利用できる。特定の接続先や特定のLAN内のPCの接続を「決まったISP経由にする」使い方が可能だ。これにより、親回線は共有しつつも利用ユーザーそれぞれで異なるISPを利用する──例えば家族や兄弟、2世帯住宅やルームシェアするユーザーに便利だ。Atermシリーズは従来からパケットフィルタやポートマッピング(ポートフォワード)を同時接続するISPごとに設定できたが、もちろん本機でも継承している。
さらにこの機能は、同時接続した複数のISPをほぼ等価に扱えるのがポイントの1つだ。例えば「インターネット側の同ポート番号となるパケットを、同時接続したISPごとにLAN内の別々のPCへ転送したい」というシーンにおいて、本機であれば、LAN内にある2つのWebサーバに別々のISP経由で接続することが当たり前に行える。これは自宅サーバを運用するような層には特にうれしいことではないだろうか。フレッツサービスはフレッツ網内で完結するVPNサービスも提供されるが、この機能を応用すると、通常はWAN側への送出が遮断されるファイル共有のパケットであっても“VPNサービス側にだけ送出可能にする”ような設定も容易である。
このような運用方法は、家庭用途やロケーション的に複数の親回線を引き込めない、あるいはトラフィック規模的に親回線は1つで十分という環境に適するものだ。一方で、業務・ビジネス用途であれば複数の親回線を準備して、ISPも個別運用するのが当然かもしれず、一般的には複数のISPと同時接続するケースは多くないとも思われる。
ただ、自宅サーバーを複数設置する筆者のようなユーザーにとっては、最大5つのISPと同時接続が可能であり、それぞれの接続をほぼ等価に扱えるという点を特に評価したいのである。
→(後編へ続く)
後編は、肝心の「通信速度」や「電波の飛び具合」を含む、新機能の使い勝手やパフォーマンスをじっくり検証していく予定です。
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