“ジーンズのバックポケットにねじ込まれたミニノートPC”という刺激的な広告ビジュアルで話題を呼んだソニーの「VAIO type P」。2009年1月の登場以来、数度のマイナーバージョンアップを繰り返してきたが、2010年5月には設計をイチから見直し、見た目も中身も大きく変更した新世代の「VAIO P」が発売された。
先に掲載したレビューの前編では、“つつむ、たたむ”をイメージしたという新しいボディデザインをはじめ、液晶ディスプレイ側に追加されたタッチパッドの使い勝手、キーボードや液晶ディスプレイの変更点、通信機能、基本スペックの強化点などをチェックした。
今回のレビュー中編では、新型VAIO Pに内蔵された各種センサーがもたらす新機能やソフトウェアの注目点を追っていこう。
前編の最後でも簡単に触れたが、新型VAIO Pのボディには3つのセンサー(加速度、地磁気、照度)が内蔵され、より便利にPCを使うための機能が加わっている。
1つめの加速度センサーは、本体の傾きを検知することで縦位置/横位置表示の切り替えや、送り/戻しの操作が行えるジェスチャー機能を提供する。本体を縦向きに90度回転させると表示方向が縦に切り替わり(ターン)、本体を左右に少し傾けるとWebページや写真表示の送り/戻し操作(フリック)が行える仕組みだ。もちろん、画面表示が縦位置に切り替わると、タッチパッド、スティック、カーソルキーの方向設定もユーザーから見た向きに自動で変更される。
VAIO Pが搭載する1600×768ドット表示の8型ワイド液晶ディスプレイはかなり横長なので、縦位置にすると縦方向の情報量がぐんと増し、縦長のWebページなどでは視認性が向上するとともに、スクロールの移動量が減る。その代わりに横方向の解像度が低くなるため、Webページの端が切れてしまうことも少なくないが、ニュースサイトのヘッドラインやTwitterのタイムラインをざっとチェックする場合などでは、縦位置表示が威力を発揮してくれるだろう。
ソニーによると、縦位置表示機能は電子書籍リーダーとしての活用も想定しているそうだが、特殊な画面比率なので普通の縦書き文章は収まりがよくない。今後、縦長の画面でコンテンツを閲覧しやすいように工夫したリーダーソフトが搭載されるなどすれば、もっと縦位置表示を生かせるかもしれない。
モバイルに適したミニノートPCらしい機能だが、実際に使い込んでみると、意図しないときにセンサーが反応する場面もあった。例えば、電車の中などで本体を両手持ちしてタッチパッドやキーボードを使っていると、本体が左右に少し傾くこともあるが、この動きを加速度センサーが送り/戻し操作と判断してWebページの表示を切り替えてしまうようなことは少なくない。また、Webブラウズ中に本体を縦位置に回転させると、加速度センサーも同時に反応して、Webページの表示が1つ前に戻ってしまうことも多かった。
加えて、Windowsは画面の表示方向をシームレスに変更することを想定していないため、表示方向の切り替え時に画面が一瞬ブラックアウトし、再描画時に表示が乱れるのも気になる。この辺りの使い勝手は、最近のスマートフォンに比べて見劣りしてしまうのは否めない(VAIO PはWindows 7のフル機能が使える利点はあるが)。
表示方向の回転機能と送り/戻し機能は「VAIOの設定」でオン/オフを切り替えられるほか、送り/戻し機能は感度を3段階(高/中/低)に調整できるため、利用シーンに応じてカスタマイズして使えばいいが、せっかくコストをかけて加速度センサーを追加したのだから、もっと実用性にこだわり抜いてほしかった。今後の改善に期待したい。
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