競馬場でPCを使う場合に大きな問題は、インターネット回線だろう。データベース用の成績やオッズのデータを取得するにも投票するにもインターネットに接続できる回線が必要だ。最近の競馬場には「iスポット」といって、備え付けのPCや持ち込んだPCで競馬を楽しめるスペース(有料)が用意されており、一部の指定席では無線LANサービスも行うなど、IT/PCを活用できる環境が整ってきている。しかし、iスポットは22席(中山競馬場の場合)と少ないし、そもそも撮影することが最大の目的なので、筆者にとってiスポットや指定席という選択肢はない。
無線LANサービスが一般の入場客でも利用できるかどうかは、JRAのWebページなどにもはっきり書いていないが、とりあえず試してみた。競馬場で分からないことがある場合はインフォメーションセンターに行けば、だいたいは解決する。というわけで、インフォメーションセンターのお姉さんに「無線LANを使いたいんですけれど……」と聞いてみると、「どこでも使えるわけではないですが、iスポット付近なら使えると思います」といって、SSIDとパスワードを書いた紙をくれた。電波が届く範囲内にいれば、指定席の入場客専用というわけではなく、誰でも使えるようだ。
まずはスタンド2Fの43番柱付近(端のほうである)にあるiスポットに向かい、そのすぐ隣にある「メディアホール」の中で試した。大型のビジョンと音響設備を囲んでしっかりしたイスが用意されており、映画館のような雰囲気でゆったりと競馬が楽しめる施設だ。イス席は空いていないが、脇にあるテーブルにちょこっと置いて回線を確認した。
無線LANのアクセスポイントはすぐに見つかり、パスワードを入力すると直ちに使えるようになった。速度もサクサクで、「Radish Network Speed Testing」にアクセスして回線速度を測定してみると、下り9.702Mbps、上り6.327Mbps……「ウホッ」という感じである。
iスポット付近では快適に無線LANサービスを利用できることが分かった。ほかの場所ではどうだろうか。メディアホールに1番近い出口からスタンドに出てみる。シルバー席のある付近、ゴールからは230〜250メートルくらい離れている。そこでは下り3.819Mbpsとかなり速度が落ちた。
ちょっと通信速度が落ちてきたかなと思いつつ、そのままコースのラチ沿いに移動した。撮影でもコーナーを回ってくる馬群を狙う場合、この辺りに来ることもある。計測すると逆に下り6.9Mbpsと速くなっていた。これは意外にイケる。
そのままゴール前へ向かってラチ沿いに電波の変化を見つつ移動すると、ゴール前100メートルくらいの地点(内馬場への入口付近)で通信が怪しくなってきた。ちなみに中山競馬場はゴール前のラチが高くなっているので、ラチ沿いで撮影するならこの周辺が定番のスポットだ。日差しが強いと液晶ディスプレイの表示が見にくくなるが、輝度を高く(最高か1段階下くらい)すれば実用上問題ない。
ここでの計測結果は下り1.375Mbpsだったが、いつも安定して通信ができるかは微妙なところだ。そこで、WiMAXと3Gでのデータ通信も試してみた。WiMAXがちゃんと使えるかどうか不安もあったが、問題なくつながり、速度は3.159Mbpsと速い。ストリーミング映像も問題なく視聴できた。b-mobileは0.293Mbpsとデータのダウンロードは結構辛いが、投票だけなら十分だろう。
ちなみに、今回確保した場所はラチ沿いではなく、ゴール正面のスタンド2F近くの座席だ。さきほどの結果から無線LANサービスの利用は絶望的かと思われたが、意外に通信は安定していて、下り3.917Mbpsとかなりの速度だった。
前述したiスポットからはかなり離れた場所だが、3F〜4Fの指定席も無線LAN対応のため、スタンドに近い外の座席というのも意外に通信環境がよいのかもしれない。
正直、試してみるまでは競馬場での無線LANサービスに関しては、ほとんどアテにしていなかったのだが、意外にも十分実用で使える印象だ。WiMAXとの併用なら、さらに心強い。
なお、競馬場からの帰りは、筆者にとってあまりなじみのない街でVAIO Pをガイドブック代わりにして散策し、食事もしてきた。それについては次回リポートしたい。
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