ShadeクリエイターのIKEDA氏が語る、ニコ動「振り込めない詐欺」の舞台裏 先生何やってんすか(3/3 ページ)

» 2010年12月02日 16時30分 公開
[広田稔,ITmedia]
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覚えたShadeのノウハウ、Webで放出します

ニコニコ動画に投稿した翌日にはマイリスが1万を突破した

── ニコ動についての話も聞かせてください。10月1日に映像を公開してすぐに「VOCALOID」カテゴリでランキング1位になるくらい人気が出ましたよね。それを見てどういう気持ちでした?

IKEDA 最初は何が起こってるのか全然分かりませんでした。「えっ」って感じで。びっくりしましたね。投稿する前は、再生回数が2万くらいいけばいいなーと思っていたんですが、コメントが追えないぐらいにいっぱい来ちゃって、もううれしいやらビックリやらで訳が分からないっていう。

── IKEDAさんは過去に作品をいろいろ出されてますが、すでにプロとして評価されていてもうれしいものなんですか?

IKEDA うーん、というかプロなんですかね、ぼくは?

── お金をもらえる作品を作っていれば、プロですよ。

「コメントがとにかくうれしかった」と語るIKEDA氏

IKEDA それについてはあまり自覚がないんですが……。でもコメントをもらえたのは本当にうれしかった。コメント数が1万とか言われても「もう全部読ませていただきます」と。モーションがおかしいとか、鼻が変という指摘もすごく勉強になりました。修正版を再投稿していますが、これは歌詞の間違いをコメントでつっこまれたからです。ありがたいですよね。

── ちなみに、ニコ動で「MikuMikuDance」が流行っているというのは、プロのクリエーターから見てどう思います?

IKEDA ものすごくがんばらなくても、自分の好きなものを作れるっていうのは、喜ばしいことです。昔は何かを3Dで表現したいと思ったときに、そこへたどり着くまでに越えなきゃいけないハードルはすごく多かった。例えば、初音ミクを踊らせてみたいけど、ソフトを買って、モデリングからやってという話になると、ほとんどの人は挫折してしまう。でも「MikuMikuDance」が出てきて、ダンスだけ作りたいという人が思う存分才能をアピールできるようになったのは、すごくいい時代だと思います。

ジプシーIKEDAのShade制作日記

── そもそもIKEDAさんはどうやってShadeの道に入ったんですか?

IKEDA 実は3D CGの専門的な勉強はしていなくて、ほとんど独学です。この仕事にかかわる前は全然違う仕事をしていたのですが、その会社がつぶれてしまって、ちょうど1カ月くらいヒマだった時期に、好きだった3D CGをShadeで勉強し始めたんです。でも逆にいえば、作り方さえ分かれば誰でも普通に3D CGが作れるようになると思うんです。

 そんな製作のノウハウをShadeオンラインの「ジプシーIKEDAのShade制作日記」で公開しています。初めて3D CGを作る人はこれを見て「木って簡単にできるんだ」とか「洞窟とか山はこんなふうに作るんだ」とモチベーションを上げてくれればうれしいですね。

── 小さな「自分でできる」の積み重ねが、大作を生む下地になる。

IKEDA ほかの高価な3Dソフトはもともと分業用に作られているので、光源1つとってもパラメータが多すぎて初心者には分かりにくい。それに20万円、30万円もするソフトを趣味で買うのもちょっと難しいですよね。

 その点、「Shade」は1万円台から始められますし、ある程度は全部1人でできるので面白いかもしれない。Shadeでぼくが得たノウハウは、先ほどのWebサイトで放出してますので、是非それを活用してほしいです。

 あとは漫画やイラストの下絵として活用している人もいます。例えば、銃を3D空間に配置して構図をそのまま線でなぞることで、見える角度が変わっても変な形にならないようにできる。キャラクターのポーズがおかしくなるときは、3D CGでベースを作ってそれを元に下絵を描いて、肉付けしていくという手段もあります。3D CGとして完成させるのでなければ、1万円台からのShadeはオススメですよ。

── それでは最後に、今後やっていきたいことを教えてください。

IKEDA 巡音ルカの「ダブルラリアット」の映像は時間があれば最後まで作りたいですね。あとは今回の「Corruption_Garden」もBlu-ray 3D化したものを制作中です。ご期待ください!

IKEDA氏が注目する「Shade 12」の新機能

 12月3日にShadeの最新バージョン「Shade 12」が発売される。Shadeの達人であるIKEDA氏に最新版の注目機能を教えてもらった。

  • サブサーフェーススキャッタリング(SSS)

「今までShadeで人物などを作ると、石で作ったようなきれいなつるつるの肌になってしまっていたのですが、Shade12で追加されたSSSを使うと、微妙に光が透過して肌がよりリアルに表現できるようになりますね。お菓子のグミのような表現を作るのに向いていると思います」

  • ボリュームレンダリング

「これは雲や煙を作る際に便利。オブジェクトの形を作って、設定を選ぶだけで雲が簡単に作れるようになってます」

  • 3D映像の作成

「赤青メガネのほか、NVIDIAの3D Visionに対応した3Dグラフィックスが簡単に作れます。今まではレンダリングをしてから3Dで見られる環境に持っていかないと奥行き感などが分からなかったのですが、Shade 12では作業中でもすぐに3Dで確認できるので、調整する手間が大幅に簡略化されますね」

オブジェクトの表面下まで光を透過するサブサーフェーススキャッタリング(画面=左)。ボリュームレンダリングでは、球体を適当に配置し、ソリッドテクチャに雲を設定するだけで簡単に雲を作り出せる(画面=中央)。作業中にリアルタイムで3Dを確認できるようになった。レンダリングの必要がないため、奥行き感の再調整などが手軽に行える(画面=右)


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