この統一的なユーザー体験とは、もちろんWindows on ARMにもいえる。x86系プロセッサとARMプロセッサにバイナリレベルでのアプリケーション互換がないことは分かると思う。では、なぜわざわざARMを使うのか。アンギウロ氏は「ARMのSoCはこの超小型サイズだ。Snapdragon MSM8660は2つのプロセッサコアによりそもそもパワフルなだけでなく、3G・新世代(4G)の通信機能も搭載しながらこのサイズを実現する。これにより、よりスリムで軽量なフォームファクタを構築できるためだ」と説明する。
そして話題は「Windows on ARM」に。すでにCES 2011のデモで一部が紹介されていたが、ここで改めてARM SoCを提供するベンダーがTexas Instruments(TI)、Qualcomm、NVIDIAの3社であることが明言された。またARMマシンのリファレンスモデルを提供するベンダー3社として、Wistron、Foxconn、Quanta Computerの名前が初めて紹介された。今後のソフトウェア検証に向け、アプリケーション開発者らはこれらベンダーから提供されるプラットフォームを利用することになる。写真=右はクアルコムのSnapdragon MSM8660で、この中に1.4GHz駆動のARMプロセッサコアを2基搭載するほか、3Gと4Gのモデム機能も内蔵する(4GについてはLTEかWiMAXかは明言していないが、Snapdragonの仕様に準拠するとみられる)。AARMプラットフォームの利用により、これまで以上に薄型軽量なマシンの開発が可能になるメリットがあると説明する
USB端子を介して簡単にハードウェアアクセスできる点もWindows on ARMならではの特徴となる。ファイルをドラッグ&ドロップでコピーしたり、USBメモリ内の動画ファイルを再生したりと、Windows同様の操作感が実現できる(写真=左)。また各種センサーAPIも標準実装される。複数のセンサーを組み合わせたFusion Sensorを使ってアプリケーションがユーザーの動きを自在に感知できるようになるという(写真=中央)。Windows on ARMならではのメリットその2であるプリンタ。既存のタブレットデバイスはプリンタドライバを実装しておらず、そのままでは印刷ができないことが多かった。Chrome OSなどでは「クラウドプリント」のような仕組みを用意して印刷機能を提供するが、これがスタンドアロン環境でも簡単にできるのもWindowsならではといえる(写真=右)
また、ハードウェアアクセラレーションの仕組みによりWindows on ARMでも十分な実行速度が得られるという。IE Test Driveのサイトにあるベンチマークテストを実行し、これが通常のデスクトップPCで実行したChromeやSafariなどのほかのブラウザよりも高速動作する様子が示された。同氏は「すべてのWindows 8アプリケーションはハードウェア支援を受けたWebアプリケーションとして動作する」と述べ、今後のWindows 8の目指す方向を示唆している。
NVIDIAが開発中の「Kal-El」プロセッサを使ったシステムの例。クァッドコアとARMでは最もパワフルな能力を提供し、よりスムーズにアプリケーションを動作させることが可能という。右側のパフォーマンスモニタを見ると、起動直後は高負荷だが、以後はハードウェアアクセラレーションの動画再生支援を受けてほとんどグラフが上昇していない(写真=左、中央)。IE Test Driveのサイトにあるベンチマークテストを実行。通常のデスクトップPCなどで実行したChromeやSafariなどの他のブラウザよりもWindows on ARMのIEのほうが高速に動作するという(写真=右)