夏場に起きやすいHDD障害、その傾向と対策“節電”でHDDが危ない?(1/2 ページ)

» 2011年07月19日 15時00分 公開
[後藤治,ITmedia]

夏場に起きやすいHDD障害

 HDDサルベージサービス「データ復旧.com」を運営する日本データテクノロジーによれば、HDD復旧の依頼件数は、夏になると平時の約1.5倍と、目に見えて増加するという。休日明けに出社したら、これまで問題なく使えていたはずのPCが急に立ち上がらなくなった、という経験をしたことがある人は多いだろう。

 その要因の1つが、(ご想像の通り)気温上昇による「熱」の問題だ。データ復旧事業部で物理障害を担当する岩谷謙太氏は、「夏場に起きるHDDの物理障害で多いのはPCB(基板)上のチップ、ここが発熱で劣化するのが原因だと考えられています」と説明する。

 「元々HDDは熱に強くない構造をしています。最近のHDDはヘッドのチップ内部にある微少なヒーターの温度変化によって、ヘッドをディスクから数ナノの位置に下げ、データを読み取っているのですが、温度が高すぎると当然この動作は不安定になると考えられます。また、HDD自体が発熱源になっていますし、密閉されているので熱がこもりやすい。室温が30度くらいだとHDDに熱がこもる可能性があるので要注意です」。

 今年の夏は、節電への取り組みから室内のエアコンを28度に設定しているオフィスも多いが、当然ながらPCケース内部の温度はこれよりもさらに高くなる。何らかの対策を施さなければ、HDD故障する確率は例年よりも上がりそうだ。

 また、通常は空調管理の行き届いているサーバルームのマシンも、夏場の熱問題とは無縁ではない。よくあるのが、システム管理者に報告がないまま、休日中にビル全体で空調が止まり、サーバルーム内の温度が上昇してしまうケースだ。実際、節電対策が叫ばれるようになってから、こうした要因で故障したHDDが持ち込まれることが増えているという。

日本データテクノロジー データ復旧事業部の岩谷謙太氏

 岩谷氏は、熱によるHDD障害を防ぐためのポイントとして「ケース内のホコリを除去してエアフローを確保すること、効果の低くなった古いファンなどを取り換えて、きちんと熱対策をすること」と(しごくまっとうな)アドバイスをしてくれた。

 ちなみに、HDDを3.5インチベイに一段おきに配置する、もしくはベイが縦に積み重なる構造のPCケースではなく、水平方向に並ぶPCケースを利用する、という方法も熱対策の1つとして挙げられることはあるが、これはPCの使用状態によって一長一短らしい。

 例えば、ケース内部で吸気から排気までのエアフローが一直線に確保されていた場合、前者の方法では空のHDDベイが風の通り道となってHDDを冷やさずに抜けてしまうことがある。また、後者も熱対策という点では有効だが、衝撃に対して弱くなるというデメリットがあるという(HDDはディスク面に対して垂直方向の衝撃が加わると、ヘッドがプラッタに接触してスクラッチの要因になる。デスクトップPCは多くの場合、側面から衝撃を受けるため、ベイが水平方向に並ぶ構造だと、HDDが衝撃に弱くなるというわけだ)。

 オフィス内の温度が例年よりも高く設定されているときや長期休暇を取る前は、1度PCケースを開けて内部の掃除をしてみたほうがいいだろう。ちなみに、発熱が原因でHDDに障害が発生した場合でも復旧は可能とのことなので、困ったときはデータ復旧.comへ問い合わせてみよう。

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