Androidな「G'zOne IS11CA」を“ギチギチ”な航海機器に育てる勝手に連載!「海で使うIT」(2/4 ページ)

» 2011年08月30日 09時30分 公開
[長浜和也,ITmedia]

都会で自然を思い出すならG'z GEAR。実戦で使うならAndroidアプリ

 以上のように、アウトドアギアとして、十分耐えうるハードウェアに、G'zOne IS11CAは、カシオが用意したソフトウェア群「G'z GEAR」を導入している。従来のG'zOneシリーズと同様に、WayPointまでの方位と距離を表示する「EARTH COMPASS」やGPSロガーとして使える「TRIP MEMORY」のほか、日の出と日没、月の出月の入り、潮汐データ、気温、そして、GPSと連動して端末を向けた方向の天体を表示する。

 それぞれに、野外行動でも使える機能とデータが利用できるユーティリティだが、G'zOne IS11CAはAndroid対応となったことで、Androidマーケットからアプリケーションを入手して、航海利用に特化したアウトドアギアに進化させることが可能だ(もちろん、登山やキャンプ、バイクツーリング、釣り、そして、サーフィンなどのそれぞれの目的に特化したアウトドアギアに特化させることもできる)。

 ここでは、G'zOne IS11CAを“航海機器”として進化させるAndroidアプリケーションを集めた。ここで紹介したもの以外でも、内蔵LEDをライト代わりに使うアプリケーションや、アナログ時計のウィジットなど、汎用のアプリケーションも工夫次第で航海機器として利用できるし(船では時計も立派な航海計器だったりする)、TwitterなどのSNSを航海ログ代わりに使うことなど、インターネットサービスも工夫次第で航海の役に立つ。また、水路通報など、Webページで提供される情報も航海で必須の情報といえる。

 ここでは、そのような、汎用アプリケーションに加えて、“航海用”“帆走用”として開発されたAndroidアプリケーションを取り上げてみた。

ENC相当の電子海図を収録したGPSプロッタ「NAVIONICS」

真夏の晴れた正午に直射日光を当てながら「NAVIONICS」の画面を見る。最大輝度のG'zOne IS11CAなら、炎天下でも画面が十分確認できる

 Androidで使える電子海図と航海ソフトの「NAVIONICS」は、価格が1000円前後とAndroidマーケットとしては高額だが、それだけの価値は十分にある“使える”有料アプリケーションだ。Androidデバイスを所有する小型船舶の船長は必須。このアプリを使うためにAndroidデバイスを買ってもいいかもしれない、とまでいってしまおう。

 海図情報は端末側に収録するので、オンラインマップを利用するためにネットワーク接続環境を必要としない(レイヤーとしてGoogle Mapで提供する地図や航空写真を表示する場合や、Twitter、Facebookで航海記録を共有する場合はネットワークに接続する必要がある)のが、汎用のAndroid向けGPSプロッタアプリケーションと異なる。

 収録されている電子海図の精度は、海上保安庁海洋情報部が作成する「ENC」にほぼ相当し、伊豆諸島でも“沿岸航海”レベル、主要な港では“アプローチ”や“入港”レベルの精度を実現している。また、工事や改修などで変更が多い航海標識を反映するため、海図は常に最新の状態であることが求めらるが、NAVIONICSでは3〜4カ月ごとにあるアップデートで、海図情報を更新して最新の状態を保っている。これは、PC用の航海ソフト「New PEC」にない機能で、低価格のPC用電子海図として(日本を除く)全世界で多くのユーザーが使っている「C-MAP」でも年に一回のアップデートで更新コストが約8000円だ。

 備える機能などの詳細については、こちらの記事で解説しているので、そちらを参照にしていただきたい。

見やすい高機能航海“計器”「BC Racer」

多彩な表示機能を持つ「BC Racer」は、炎天下の直射日光でも表示された値が読み取れる

 船で使うAndroidアプリケーションとして個人的に猛烈なイチオシのNAVIONICSだが、自船の針路や速度、入力したWayPointまでの方位や距離といった航海に必要な情報の表示機能が弱い。速度は表示され、工夫次第で目標までの方位や距離も把握できるが(目標とするポイントをタップして表示されるバルーンを再度タップすると、メニューリストに「Distancs from GPS」が表れる。これを選ぶと、現在の位置から目標とするポイントまでの方位と距離が海図の上に表示される)、フォントのサイズが小さくて目視が難しい。

 この弱点をカバーするため、「BC Racer」を利用する。舶用デジタル機器ベンダーの「B & G」と間違えそうになるが、こちらは“Beer Can Racer”の略ということで、特に関係ない。330円と有料だが、同種のアプリケーションと比べて多機能で、ビール1缶を我慢するだけの価値はある。名前の通り、ヨットレースを想定したアプリで、スタートタイマーの機能を持っているが、一緒に用意された「NAV MODE」「RACE MODE」は、巡航でも十分活用できる。

 BC Racerの画面は、舶用計器でよくある「白バックにコントラストの高い黒の液晶」を模したデザインで、数値が大きくはっきりとして見やすい。NAV MODEでは、対地速度、針路(GPSによる対地針路と電子コンパスによる磁針路の切り替え表示が可能)、設定したWayPoint(200ポイントまで設定可能)までの距離と方位、そして、船の進むベクトル(速度成分と方位)を目標方位に投影したときの速度成分であるVMG(Velocity Made Good)と、それを基にした予定航行時間(ETE、Estimated Time Enroute)が表示される。VMGの表示は風向によって目標にまっすぐ進めない帆走中のヨットでは航行時間の見通しと針路の適切性を判断するのに役に立つ情報だ。

 RACE MODEは、ヨットレースで参考にする情報を表示する画面だが、そこでも巡航で活用できる航海情報が表示される。対地速度、針路(GPSと電子コンパスの切り替えはこちらでも可能)、WayPointまでの距離と方位、VMG、予想航行時間はNAV MODEと同じだが、それに加えて、事前に風向を手入力することで、船に対して風の吹く方位をTWA(Ture Wind Angle、真の風速表示。船の上で観測される、船の速度が合成された見かけの風向ではない)が表示できるほか、直近20秒間の平均の針路と現在の針路(直近2秒の平均針路)のずれを視覚的に把握するスケール(Lift Indicator)を画面上部に設けている。

 また、落水者が発生したときに、どこの画面モードからもその場所を記録する「MOB」機能も用意している。誤動作を防ぐため、メニュー→MOBと2回タップする必要があるが、落ち着いて操作すれば(それが難しいという意見もあるが)、落水者の位置を記録して、その場所を目指して船を進めることが可能だ。

 BC Racerもネットワークが接続できない環境で利用できるように設計されている。また、アプリの容量を抑えるためマップデータを内部で所有していない。そのため、WayPointの入力では、「マップをタップした場所を登録する」ことはできず、リストボックスに緯度と経度を手入力しなければならない。ただ、NAVIONICSを導入した端末なら、NAVIONICSでWayPoint海域をタップするとバルーンに表示される緯度と経度をBC Racerに入力することで、(それはそれで面倒だけど)対応可能だ。

実際の航海で表示させたBC RacerのNAV MODE。GPSの示す緯度経度に現在時刻、対地速度にGPSで取得した対地針路のほか、事前に緯度と経度と手入力したWayPointを選んでそこまでの距離と方位、そして、そちらに向かっているとした場合の速度(VMG)を求めて表示する(写真=左)。同じく、実際の航海で表示させたRACE MODE。左上の「STBD 057」は、手入力した風向の20度に対して、右舷57度から風を受けていることを示す。その上に表示されたウイングスケールは、1メモリ当たり5度で左右20度における針路のずれを直近20秒と直近2秒の航跡を比べて表示する(写真=右)

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