Androidな「G'zOne IS11CA」を“ギチギチ”な航海機器に育てる勝手に連載!「海で使うIT」(3/4 ページ)

» 2011年08月30日 09時30分 公開
[長浜和也,ITmedia]

沿岸でレーダー代わりに使えるAISプロッタ「Marine Traffic」

インターネットで配信するAISデータをGoogle Mapsに表示する「Marine Traffics」

 Marine Trafficは、AISデータを表示できるAndroidアプリケーションだ。AISについては、こちらの記事で解説しているが、主に500総トン以上の内航船と300総トン以上の外航船(それとすべての外航旅客船)に搭載が義務付けられている装置で、それらの船から発信されたAISデータを受信すると、船の位置と速度、針路などを表示できる。電子海図や電子地図に表示すると、AISデータを発信している船の位置と動静がレーダーのように把握できる。

 本船が発信したAISデータは、海上保安庁の海上交通センターのような海洋関係陸上施設でも受信しており、さらに、その受信した情報をインターネットを利用して配信している。Marine Trafficは、インターネットに配信されたAIS情報をGoogle Mapに表示する(PCでは、Webサービスとして提供している)。Marine Trafficに表示される船のシンボルをタップすると、その船の船名と、速度、針路が表示される。さらにそこから、その船の詳細情報、写真なども参照できるほか、それまでの航路を表示することも可能だ。

AISで表示されたシンボルとタップすると、その船の船名と速度、針路が表示されるほか、詳細情報のメニューが用意されている(写真=左)。Vessel's Detailsを選ぶと、事前に入力されている船舶情報が表示され(写真=中央)、Show Trackを選ぶと、その船の航跡が表示できる(写真=右)

 ただし、陸上の施設が受信してインターネット上に提供しているAIS情報を利用するため、Marine Trafficを利用して自船の近くにいる本船の動静を把握するには、ネットワークにアクセスする必要がある。かつ、Marine Trafficで利用できるのは陸上で受信されたAISデータに限られるため、沿岸を航行する本船しか表示されず、さらに、本船がAISデータを発信してからMarine Trafficにデータが表示されるタイムラグがあるため、実際の位置と表示される位置にずれが生じる可能性があるなど、いろいろと制約がある。

 AISレシーバで受信したデータを使えるPCのAIS対応アプリと比べて、タイムラグがある分精度が落ち、衝突の警報を出したりすることはできないが、視界制限条件で、周囲にどの程度本船がいて、自分に向かっている船がいるのかいないのかの判断はつけられる。制限を理解したうえで利用するなら、ハンディサイズの簡易レーダーを搭載したような使い方も可能だ。

Smart Compass Pro

内蔵カメラを使って測位目標を標準に捉えることができる「Smart Compass Pro」(画面はフリーのSmart Compass)

 標準状態で、G'zOne IS11CAの待機画面は電子コンパスを利用したアプリケーションを表示する。歴代のG'zOneで提供されてきた電子コンパス表示アプリケーションだけあって、G'zOneの象徴ともいえる。ただ、GPSを内蔵するデバイスで電子コンパスは必要なのか、という声はある。街で遠い自然に思いをはせるならともかく、実際に登山やトレッキング、航海などで、GPSプロッタを利用するナビゲーションアプリケーションがあれば電子コンパスで自分が移動する方位を確認する必要はない。複数の目標の方位から自分の場所を求める「クロスベアリング」もGPSプロッタアプリケーションがあれば不要だ。

 しかし、船で使う電子コンパスでは、もう1つ重要な役割がある。それは、接近する船の方位変移を測定して衝突する可能性があるかを察知することだ。特に、Androidデバイス環境だけでは、衝突判定ができるほどの精度を実現したAIS対応アプリケーションがないことと、たとえ十分なAIS対応アプリケーションがあったとしても、AISの搭載義務のない小型内航船や漁船、遊漁船、そして、パワーボートやヨットなどに対しては、ハンディタイプのコンパスを使って、相手の船の方位を測定する必要がある。自分の船から見て接近する船の方位に変化がない場合、衝突する危険性があるので回避行動に移らなければならない。そういう意味で、GPS全盛の現代であっても、電子コンパスは船に必須の航海計器といえる(その一方で、アマチュア船乗りに人気のある“星座アプリ”は、GPS全盛時代において、航海用という意味では、まったく無用であったりする)。

 ただ、そのためには、目標とする船の方位をできるだけ正確に測定できることが求められる。舶用コンパスには、目標を狙うのに使う“照準線”が用意されているが、G'zOneシリーズでは、そのような使いかたを想定していないためか、標準で照準線を用意していない。こちらこちらで紹介したように自分で改造する必要があったが、G'zOne IS11CAなら、内蔵するカメラを目標に向けてコンパス方位を取れるAndroidアプリケーションを使えばいい。

 「Smart Compass Pro」は、内蔵カメラを利用できる電子コンパスのAndroidアプリだ。71円の有料版のほか無料版の「Smart Compass」もある。有料版のSmart Compass Proでは、GPS情報をSMSで発信できるほか、揺れの激しい小型船舶では、コンパスの感度を調整できる機能を利用できるのが大きな違いになる。実際に、風速10メートル程度、うねりややありの外洋で使ってみると、Smart Compassの感度や、Smart Compass Proの標準設定になっている「速い」では、コンパスカードの動きが速くて方位測定が難しい。Smart Compass Proの「標準」にするとちょうどいい、動きになった。

 G'zOne IS11CAのマニュアルには、電子コンパスを使う場合は本体を水平において使うようにと指示してある。しかし、Smart Compassで測位する目標を内蔵カメラで狙う場合、本体は立てて使うようになる。コンパス精度に大きな狂いが出るのか、本体を横にした状態でコンパスの針が北を向いた方向に、カメラを向けて本体を立てていったが、表示される方位の値はプラスマイナス5度程度のずれが生じる。ただ、本体を立てた状態でカメラで狙って方位が表示されると、その後は測定値にぶれは生じないので、衝突判定などで相手の方位変移を監視する利用なら問題はないと思われる。

 なお、Smart Compass Proは、傾斜計、騒音計、距離計などがセットになったSmart Toolsにも収録されている。こちらも、190円となるが、ほかの測定器も使うのであれば、こちらを購入するといい。

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