第7回 テレビ・レコーダーで使うと“さらに”効果的──「450Mbps」の安定度を再確認「5GHz帯無線LANルータ」導入のススメ(2/2 ページ)

» 2011年12月07日 17時00分 公開
[坪山博貴,ITmedia]
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最大450MbpsのIEEE802.11nでどう変わる? AV機器での動画伝送能力をテスト

 では、WMMに対応する最大450MbpsのIEEE802.11n対応製品を用いると、動画伝送能力はどこまで向上するだろうか。

 ここでは、親機に最大450Mbpsに対応する「AtermWR9500N」、子機に(親機と同じ)「AtermWR9500N」および最大300Mbps対応の「WL300NE-AG」を組み合わせて動画伝送能力を検証する。WL300NE-AGでは、最大54MbpsでのIEEE802.11aでの測定も含め、最大54M/300M/450Mbpsの仕様でどう変化するか、比較も行った。

photophotophoto AtermWR9500Nを2台セットにした「AtermWR9500N イーサーネットコンバータセット」。1つをリビングルームに置いてAV機器用イーサネットコンバータ(子機)として最大450Mbpsの無線LAN環境で活用できる(写真=左) 比較に用いた最大300Mbpsのイーサネットコンバータ「WL300NE-AG」(写真=中央・左)。WL300NE-AGは計2台、対してAtermWR9500Nは計5台のネットワーク対応AV機器をまとめて“無線LAN化”できるのがポイントだ

 検証は実際利用環境を考慮し、親機と子機は2部屋ぶん離し、相応の壁や障害物のある場所に設置した。子機の電波強度表示は3段階表示中2〜1本を行ったり来たりする場所となり、親機はリビングルーム、子機は階上のプライベートルームで使う場合など、このレベルの無線LAN電波状況で利用するシーンは珍しいものではないものと思われる。目安となるリンク速度は、IEEE802.11aが36M〜48Mbps、最大300MbpsのIEEE802.11nで54M〜108Mbps、最大450MbpsのIEEE802.11nで81M〜130Mbpsである。

 動画再生環境には、DLNAサーバとして東芝「REGZAブルーレイ RD-BZ710」とアイ・オー・データ機器「RECBOX(LAN DISK AV HVL1-G500)」、DLNAクライアントとしてスカパー!HD対応DVR「TZ-WR320P」のお部屋ジャンプリンク機能と、バッファロー「Link Theater LT-H90」を用いた。もちろん、それぞれのDLNAサーバとクライアントの通信が無線LAN経由になるよう配線している。

検証ソース 平均ビットレート
BSデジタル放送/実写 約22Mbps
BSデジタル放送/アニメ 約19Mbps
地上デジタル放送/実写 約14Mbps
地上デジタル放送/アニメ 約12Mbps
スカパー!HD/実写 約8Mbps
スカパー!HD/アニメ 約6.5Mbps

 再生コンテンツはすべてTS録画した番組──最大25MbpsのBSデジタル放送、最大16Mbpsの地上デジタル放送、同じハイビジョン放送でも圧縮率の高いMPEG-4 AVC/H.264で最大8Mbpsほどとなるスカパー!HDの放送において、実写番組とアニメ番組の2パターンを準備した。放送波ごとに最大ビットレートが割り当てられているが、基本的に実写番組の方がビットレートが高いと規定。実写番組は紀行番組、スタジオ撮りのものなど、アニメは動きが比較的多いHDの番組をいくつか録画し、実際の録画容量をチェックし(RECBOXで確認が可能)、中でもビットレートの高かった番組を検証ソースとして採用した。容量と録画時間から逆算した平均ビットレートは右記のとおり(地上デジタル放送は、ワンセグ放送分を差し引いた計算)。

 評価は、一定時間の再生、再生開始時の挙動、30秒スキップを操作し、まったく問題ない場合は「◎」、開始時・スキップ操作時にもたつくこともあるが、実利用にほぼ問題ない場合は「○」、動きの大きなシーン(高ビットレート時)などで再生が途切れてしまう場合は「△」、映像・音声が断続的に途切れ、実用に耐えない場合は「×」とした。

 まずはDLNAサーバーにREGZAブルーレイ、DLNAクライアントにTZ-WR320Pを利用して1つの番組を無線LAN経由でストリーミング再生する。

 IEEE802.11aでは、BSデジタルの番組で実用に難ありだったが、地上波以下のビットレートであればとりあえず大丈夫だった。IEEE802.11aは理想的な通信状況でも実速度が25Mbps前後にとどまるため、今回のようにフルリンクしていない状態でNGとなる場合があり、大丈夫であってもそのマージンはあまりないということになる。地上波の番組は、実写番組においてまれにフッと再生の途切れが見られたため、結果は「◯」とした。

 最大300MbpsのIEEE802.11nに切り替えると、すべてが実用レベルに達した。ただ、高ビットレートなBSデジタルの実写番組はまれに再生が途切れたため「◯」とした。こちらは、2.4GHz帯より通信が安定する5GHz帯を用いているとはいえ、リンク速度の低下時に、わずかに通信速度が足りなかったためと思われる。そして、最大450MbpsのIEEE802.11nはいわゆる有線LAN接続時と変わらない印象となり、すべてのシーンで「◎」となった。


photo 1番組をストリーミング再生

 次は2番組同時にストリーミング再生を行う。前述の組み合わせに加え、DTCP-IPサーバにRECBOX、DTCP-IPクライアントにLT-H90の組み合わせを追加し、2つの番組を1つの無線LAN間で同時に再生した。ここでは、最大ビットレートになるBSデジタルの実写番組同士と、もっとも低いビットレートになるスカパー!HDのアニメ番組を軸に、ビットレートが近い番組同士を組み合わせた計7通りの組み合わせを検証した。

 まずIEEE802.11aは、2番組同時再生で実用に耐えられたのはスカパー!HDのアニメ場組のみだった。これは初回のテスト結果からしても妥当な結果だ。最大300MbpsのIEEE802.11nにしても、片方が高ビットレートのBSデジタル放送だと2番組の同時再生はなかなか難しく、総ビットレートのキャパシティが足りなかったことが伺える。実用の境目となる、BSデジタルのアニメ番組+地上波の実写番組の組み合わせでは、再生順序に応じてどちらかが必ず途切れ再生になってしまう現象を確認した。

photophoto ストリーミング再生に必要十分な通信速度が得られない場合、再生までに時間がかかったり、一時停止や早戻し/早送り再生作業で待たされる(画像=左)など、(AV機器そのもののパフォーマンスもあるが)操作レスポンスにかなり影響する。むごい時には再生自体が停止してしまう(画像=右)場合もある。民生AV機器では特にこのあたりの挙動がシビアだ

 これを最大450MbpsのIEEE802.11nにすると、もっとも高ビットレートとなるBSデジタルの実写番組同士でも、ごくまれに1秒以下の途切れがあった以外は、ほぼ問題なく再生できた。もちろんそれ以下の総ビットレートになる組み合わせではまったく問題はない。これは、今回のテスト環境ではどんなに遅くとも40Mbps以上の実速度が確保されていることを示すといえる。

 今回は、ネットワーク対応AV機器で主となる動画ストリーミング再生シーンにおいて、決して“電波状態が最良ではない”家庭を模した実利用環境で検証した。同じIEEE802.11nでも、最大300Mbpsと同450Mbpsのポテンシャルの違いがかなりはっきり表れたといえるだろう。

 もちろん、100Mbps以上で安定してリンクするような近距離・障害物なしの良環境であれば、最大300Mbpsモデルでも差は出ないとは思うが、AV機器とネットワーク連携機能を、それぞれ同じ部屋で利用するシーンはあまりないだろう。一般家庭であれば、今回のような電波状態になることは珍しくないはずなので、参考例にはなると思う。

photo 2番組同時にストリーミング再生

PCも、AV機器も、スマートフォンも──それなら「450Mbps」+「5GHz帯」対応モデル

photo  

 さて、前回行ったPCを用いた速度テストとてらし合わせても、最大450Mbps対応のIEEE802.11nはデメリットがない(強いて挙げるなら、数千円台のベーシック志向モデルより若干高価なくらいだ)。通信環境に関わらず、最大300Mbps対応モデルに対して通信速度が見劣ることはなく、接続互換性に関しても問題はない。極端な言い方をすれば、MIMOにおいてストリーム数を増やすのは帯域を広げるのと同じくらいシンプルな高速化手法であり、無線通信では珍しくない電波状態が良好な場合にのみ有効となる、ノイズ耐性を犠牲にする代わりに最大通信速度を向上させる手法とは異なるのだ。

 もちろん混合波の分離がより複雑になるため対ノイズ性もそれなりの影響はあると思うが、最大450MbpsのIEEE802.11nは、これまでの300Mbps対応モデル比で電波状態に左右されにくく、着実な高速化が望める。これは非常に大きなメリットだ。

 高速通信のためのPC用としてはもちろん、2012年以降の個人向け無線LANブロードバンドルータは、テレビやBlu-rayレコーダーを中心とする「AV機器」と、リモートアクセス機能などとともに「スマートフォン、タブレット」もしっかり活用できるか。これが重要だろう。

 「450Mbps」+「5GHz帯」対応。このポイントを押さえたブロードバンドルータ+イーサネットコンバータ製品であれば、無線LAN接続において今後数年間ストレスなく活用できるといえそうだ。





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